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【レッドゾーン内の住宅の構造】土砂災害特別警戒区域の建築構造制限を分かりやすい解説

この記事では、土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン内において、建築物を建築する方法特別警戒区域内での構造制限(施行令第80条の3)を解説しています。

基本的に特別警戒区域(レッドゾーン)と警戒区域(イエローゾーン)の両方ともに命の危険性が高いので住宅建築自体は望ましくはないですが、決して建築してはならないエリアではないです。

一定の構造のルールに対応すれば建築可能です。

こんにちは!やまけんといいます。

建築や都市計画、不動産に関して普段の業務に役立つ豆知識を発信しているブロガーです。この記事を読むことで、いわゆるレッドゾーンでの建築に係る制限などを理解できるようになると思います。

そもそも論の特別警戒区域と警戒区域の解説についてはこちらの記事が参考になります。




特別警戒区域内で建築する方法は?

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)で建築する方法は2とおりあります。

☑️1つ目は建築物の敷地がある程度広ければ可能な方法です。土地利用上の制約はありますが、この方法が最も簡単です。

とはいえ、レッドゾーンが一部でもかかっている敷地は警戒区域(イエローゾーン)内であることが多いため、大雨時にはいつでも避難できるように準備しておく必要があります。

☑️2つ目は、特別警戒区域内で建築する方法ですが、大幅な建築コスト増となります。

建て替え・再建築に関してはこちらの記事にまとめています。

1つ目は、土砂災害特別警戒区域内に建築物を配置しないこと。

よく勘違いしてしまう方もいますが、法律では、建築物の敷地ではなく、建築物に制限がかかります。つまり、建築物の敷地に土砂災害特別警戒区域が入っていたとしても、建築物にそのラインがかからなければOKということです。

建築物には、軒先や樋も含まれますので配置計画には気をつける必要があります。

土砂災害特別警戒区域に近接して建築する方法

2つ目は、建築基準法施行令第80条の3に基づき、土石が落下しても建築物が土石に耐えるうる国造外壁や待ち受け擁壁を設置する方法です。

この記事では、こちらの土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内での構造方法に特化して解説しています。

土砂災害特別警戒区域内で建築する方法

土砂災害特別警戒区域内での建築物の構造

では、ここから土砂災害特別警戒区域内の構造について解説していきます。

土砂災害特別警戒区域内における建築については、建築基準法施行令第80条の3に記載されております。なお、この構造規定の適用を受ける建築物は居室を有する建築物のみです。

このため非居室の建築物は土砂災害特別警戒区域であっても構造制限を受けることはないです。

その中では、基本的に土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内で建築物を建築する際には、外壁等は、土石等の衝撃に耐えうる構造にしなければなりません

[建築基準法施行令第80条の3(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)]
 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条第1項に規定する土砂災害特別警戒区域(以下この条及び第82条の5第八号において「特別警戒区域」という。)内における居室を有する建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分(当該特別警戒区域の指定において都道府県知事が同法第9条第2項及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行令第四条の規定に基づき定めた土石等の高さ又は土石流の高さ(以下この条及び第82条の5第八号において「土石等の高さ等」という。)以下の部分であつて、当該特別警戒区域に係る同法第2条に規定する土砂災害の発生原因となる自然現象(河道閉塞によるたん水を除く。以下この条及び第82条の5第八号において単に「自然現象」という。)により衝撃が作用すると想定される部分に限る。以下この条及び第82条の5第八号において「外壁等」という。)の構造は、自然現象の種類、当該特別警戒区域の指定において都道府県知事が同法第9条第2項及び同令第4条の規定に基づき定めた最大の力の大きさ又は力の大きさ(以下この条及び第82条の5第八号において「最大の力の大きさ等」という。)及び土石等の高さ等(当該外壁等の高さが土石等の高さ等未満であるときは、自然現象の種類、最大の力の大きさ等、土石等の高さ等及び当該外壁等の高さ)に応じて、当該自然現象により想定される衝撃が作用した場合においても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。ただし、土石等の高さ等以上の高さの門又は塀(当該構造方法を用いる外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限る。)が当該自然現象により当該外壁等に作用すると想定される衝撃を遮るように設けられている場合においては、この限りでない。

建築基準法施行令第80条の3

外壁をRC造にするというのは木造住宅の場合、非現実的です。

そのため、法律では「待ち受け壁」もOKとしています。

では、この「待ち受け壁」について少し深掘りして解説します。

なお、警戒区域(イエローゾーン)内での建築規制はありませんが、各自治体で設けている「がけ条例」で制限(崖から距離を取ったり、擁壁の設置など)を設けている場合が大半ですので、この施行令第80条の3が適用されなくても注意して設計(がけから離すなど)しましょう。*大抵の自治体は、高さが2mを超え、かつ最大角度が30度を超えるものを崖と定義しています。

構造基準の詳細と待ち受け(擁)壁の構造について

では、土砂災害特別警戒区域内における建築基準について確認します。国土交通大臣が定める構造方法は告示(H13国交告383号)に定められています。

告示は第1から第5まで規定されていて、次のように構成されています。

  • 第1:用語の意義
  • 第2:自然現象が”急傾斜地の崩壊”である場合の構造
  • 第3:自然現象が”土石流”である場合の構造
  • 第4:自然現象が”地滑り”である場合の構造
  • 第5:”門又は塀”により上記3つの力に耐えうる構造とする場合の準用

法律で定義される自然現象は、大きく3つに括られています。この情報はいずれも、土砂災害特別警戒区域の指定情報(都道府県の公式ホームページなどで公表されている)を見ると、この区別が分かるようになっています。その上で、どの程度の力が想定されるかによって、構造設計の考え方は異なるので注意が必要です。

  • 急傾斜地の崩壊土石等の移動による最大の力の大きさ、移動する土石等の高さ、土石等の堆積による最大の力の大きさ
  • 土石流最大の力の大きさ、地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさのうち最大
  • 地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等の堆積による力の大きさ、地塊の滑りに伴って生じた土石等の高さ

この3つがあることを覚えくと便利です。

では、施行令第80条の3のただし書き(待ち受け壁)ですが、この告示のうち、第5に記載されております。

なお、ここで、誤解の無いように、、、はじめに待ち受け擁壁といいましたが、正式な用語は「門又は塀」となりますの。また、今回は、”急傾斜地の崩壊””土石流””地滑り”のうち、より多く指定されている急傾斜地の崩壊に関する部分を紹介してみます。

門又は塀(待ち受け擁壁)の構造基準

▶︎(門又は塀とする場合)
令第80条の3ただし書に規定する土石等の高さ等以上の高さの門又は塀の構造方法は、最大の力の大きさ又は力の大きさ及び土石等の高さ等に応じ、それぞれ次の構造方法とすること。と定められています。

急傾斜地の崩壊の場合、第5第一号に記載されております。ちょっと難しいですが、第2第一号イ又は第二号とすることと規定されています。

自然現象が急傾斜地の崩壊である場合には、第2第一号イ又は第二号に定める構造方法とすること。この場合において、第2第一号イ((1)(ii)を除く。)及び第2号中「外壁等」とあり、及び「外壁」とあるのは、「門又は塀」とし、第2第一号イ(2)(vi)中「屋内側」とあるのは、「急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される面の裏面」とする

H13国交告383号第5一号

第2第一号イは「仕様規定」、第2第二号は「性能規定となっており、仕様規定は告示通りの構造以上にしなさいとするものです。

一方で、性能規定は構造計算となり、固定荷重+積載荷重+(積雪荷重0.35)+(土石等の衝撃力&土圧力それぞれ計算)を計算することなります

今回は、簡単な「仕様規定」について紹介します。

門又は塀の構造基準(仕様規定の計算方法)

土砂災害特別警戒区域内での待ち受け擁壁の構造方法

土石等の移動による最大の力の大きさが100KN /㎡を超える場合や、土石等の高さが2mを超える場合は、仕様規定を使うことが出来ないこととされており、「性能規定」としなければならないとされています。

ここでは、ある市の土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の情報から、「急傾斜地の崩壊」における移動と堆積の力を以下の設定例の値にしてみます。

なお、土砂災害特別警戒区域の情報はインターネットで「土砂災害特別警戒区域 ○○市町村」と検索すれば簡単に情報を入手することが出来ます。

また、新たに土地を購入される場合には、重要事項説明の項目となっていますので、仲介する不動産業者に確認するのも方法の一つです。

急傾斜地の崩壊に伴い移動する土石等の高さ :1m
急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動による最大の力の大きさ:60KN /㎡
急傾斜地の崩壊に伴い堆積する土石等の高さ :2m
急傾斜地の崩壊に伴う土石等の堆積による最大の力の大きさ:10KN /㎡

*設計の前提条件

告示第2第一号イ(仕様規定)を告示第5の規定により読み替えると次のようになります。

イ 門又は塀、当該門又は塀に接着する控壁及び基礎を設ける構造とし、当該門又は塀、控壁及び基礎をそれぞれ次に掲げる構造方法とするもの

門又は塀の構造方法(待ち受け擁壁)

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。

→RC構造とする必要があります。

(ii) 開口部(開口面積が100㎠以内で、その周囲に径12㎜以上の補強筋を配置した給気口又は排気口を除く。)を設けないこと。ただし、急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される建築物の部分が存する階に居室を有しない場合又は当該力が作用すると想定される外壁の屋内側に居室を有せず、かつ、居室以外の室と居室との間に壁(第一号イ(1)(i)及び(iii)から(v)までの規定に適合し、かつ、開口部を有しないものに限る。)が設けられている場合にあっては、この限りでない。

→原則として、門又は塀に開口部を設けてはいけないルールです。開口部があると、その開口部が弱点となって壁等を破壊する恐れがあるからです。

(iii) 厚さは、15㎝以上とすること。

門又は塀のRC壁厚さは15㎝以上とする必要があります。

(iv) 長さ1m当たりの縦筋の断面積の和は、次の表1の数値以上とすること。

→表1の内容は省略しますが、上記例の場合で算出すると、11.2*60又は11.9*10のうちいずれか大きい値 =672㎟/m以上

(v) 補強筋として径9㎜以上の鉄筋を30㎝以下の間隔で横に配置すること。

→補強筋の仕様となります。鉄筋径は9㎜以上、300㎜以下の間隔で配置する必要があります。

控壁の構造方法

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。

→RC構造とする必要があります。

(ii) 開口部(開口面積が100㎠以内で、その周囲に径12㎜以上の補強筋を配置した給気口又は排気口を除く。)を設けないこと。

→開口部を設けてはいけないルールです。ただし、開口面積100c㎡以下で周囲に補強筋を配置する必要があります。

(iii) 厚さは、15㎝以上とすること。

→RC構造の厚さは150㎜以上となります。

(iv)門又は塀と接する端部及び隅角部に縦筋を配置し、その縦筋の断面積の和を次の表2の数値以上とすること。

→表2は省略しますが、上記設定例の場合
3.4*60/(控壁の長さ:ここでは2m)又は7.1*10/(控壁の長さ:ここでは2m)のうちいずれか大きい値=102㎟以上

(v) (iv)に定めるもののほか、補強筋として径9㎜以上の鉄筋を30㎝以下の間隔で縦横に配置すること。

控え壁も同様に補強筋を配置する必要があります。

(vi) 門又は塀急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される面の裏面に当該門又は塀に対し垂直に設けるものとし、高さは門又は塀の高さ以上とすること。

力が作用する方向に対して垂直に設置し、待ち受け擁壁は想定土砂高さ(都道府県知事の告示により指定)以上とする必要があります。

(vii) 控壁が門又は塀に接着する部分間の中心距離は、4m以下とすること。

控壁の間隔は4m以下に設置する必要があります。

基礎の構造方法

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。

→RC構造とする必要があります。

(ii) 開口部(令第22条に規定する換気孔で、その周囲に径12㎟以上の補強筋を配置したものを除く。)を設けないこと。

→基礎に開口部を設けることは想定できないですが、開口部を設けるときは、通気孔に限定されます。

(iii) 立上り部分の厚さは20㎝以上と、底盤の厚さは30㎝以上とすること。

→基礎の立上り(地盤からの高さ)の厚さは20㎝以上
→底盤の厚みは30㎝以上

(iv) 根入れの深さは、60㎝以上とすること。

→根入れ(地盤から地中部分)は60㎝以上

(v) 立上り部分の補強筋として径12㎜以上の鉄筋を20㎝以下の間隔で配置すること。

→立上りの補強筋の規定です。

(vi) 底盤の補強筋として径12㎜以上の鉄筋を縦横に15㎝以下の間隔で配置すること。

→底盤の補強筋の規定です。

(vii) 布基礎とする場合にあっては、底盤の幅を60㎝以上とし、底盤に補強筋として径12㎜以上の鉄筋を配置すること。この場合において、底盤の長さ1m当たりの鉄筋の断面積の和は、次の表3の数値以上とすること。

→布基礎(凸)とする場合、底盤の幅は60㎝以上
→補強筋は12㎜以上
→表3は省略しますが、上記設定例の場合・・・
5.2*60又は8.4*10のうちいずれか大きい値=312㎟/m以上

留意点・滑動と転倒

お気づきの方もいるかもしれませんが、滑動・転倒に対する検討は規定されていません。

門又は塀の基礎をベタ基礎として建築物の基礎と一体化とするならば、建築物の自重により、滑動や転倒の検討は不要と考えられそうですが、門又は塀を布基礎(凸)とする場合には、最悪の事態を想定して滑動・転倒までは設計者として把握しておくべきかなと思います。(これは私個人の見解ですので、取り扱いにはご注意ください)

追記(北海道厚真町の土砂災害を受けて)

厚真町の土砂災害は大変なことになってますね。
お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りします。

調べてみると、厚真町吉野地区の一部は土砂災害特別警戒区域に指定されておりました。報道で見た印象ですと、大規模崩壊の凄さが目の当たりになったいう感じですね・・・

降雨や自然崩壊ではなく、地震という大きな外部圧力が加わったことによる斜面崩落なので、想定を図るかに超えていたのだろうなと思います。

間違いなく、崖下は危険です。

また、崖上も崖下と同じように危険ですので、自身が暮らす地域のハザードマップを確認して、安全な地域なのか確認することをオススメします。

追記(能登半島地震)

能登半島地震においても金沢市内のレッドゾーン内で土石の崩壊が発生しています。

このケースでは、現在は開発行為制度といって大規模造成を行う前には必ず宅地の安全性の審査を行っています。昭和39年と造成開始が早く制度制定前だったので、宅地の安全性の審査が行われる前に造成された土地のため特に地震による崩壊が発生したと考えれます。

補足・個人的な考え

土砂災害特別警戒区域内で建築することは物理的に可能ですが、建築士や都市計画を専門とするわたしの考えとしては、特別警戒区域内の建築は社会全体の損失につながる恐れがあるので望ましいとは思えないことがあります。

  • 理由①:常に災害の危険性がつきまとう(財産と財産が保護されない)
  • 理由②:大雨が降る度に不安になる(ストレスが溜まる)
  • 理由③:資産価値はほぼ無い(誰も購入しません)

個人の財産の事なので、外野であるひとりの建築士が言える事ではありませんが、毎年、土砂災害で多くの方がお亡くなりになっていますので、様々な諸条件を排除してでも住まなければならない理由がない限りは、勇気ある移転も必要ではないかと思います。

ちょっときついこと言うと、”あなたの先祖伝来の土地はあなたにしか価値はない。”

なお、土砂災害特別警戒区域からの移転については、政府系金融期間である住宅金融支援機構において『地すべり等住宅関連融資』が用意されているので検討してみてはどうでしょうか。

非居室用途に転用

居室用途であれば法上の制限はありません。非居室とは、倉庫や車庫などです。居室や非居室の違いについてはこちらの記事をご覧ください。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など