擁壁の確認申請は高さ何mから?2m基準・盛土規制法との関係を解説

【2026年8月更新】現行の建築基準法と盛土規制法に合わせて、擁壁の確認申請が必要となる条件、確認申請が重複しないケース、設計時の確認事項を整理しました。

擁壁の手続で最初に確認するのは、単に「土圧を受ける高さが2mを超えるか」だけではありません。土圧を受ける高さ・区域・他法令の許可を順番に確認する必要があります。

土圧を受ける高さが2mを超える擁壁は、建築基準法施行令第138条第1項第5号の工作物です。都市計画区域等の対象区域では、原則として築造前に確認申請が必要です。

ただし、盛土規制法や都市計画法など、建築基準法第88条第4項に掲げる許可を受ける擁壁は、同じ擁壁について建築確認を重ねて受ける必要はありません。


擁壁の確認申請を判断する3ステップ

1高さを確認

擁壁が土圧を受ける高さが2mを超えるか。2mちょうどは「2mを超える」に含まれません。

2区域を確認

都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区、知事指定区域など、法第6条第1項第3号の区域か。

3他法令を確認

盛土規制法、都市計画法などの許可を受ける擁壁として、法第88条第4項の対象になるか。

土圧高2m以下

令第138条第1項第5号による工作物確認の対象外です。ただし、盛土規制法、開発許可、がけ条例、構造安全性の検討まで不要になるわけではありません。

土圧高2m超

区域要件に該当すれば、原則として工作物の確認申請が必要です。建築物を同時に建てるかどうかは、この判断条件ではありません。

他法令の許可対象

法第88条第4項に掲げる許可を受ける擁壁は、確認申請が重複しません。許可不要の擁壁まで一律に確認不要となる規定ではありません。

工作物全般の確認申請対象は、建築確認が必要な工作物一覧でも整理しています。

「建物を建てない土地なら確認不要」ではない

擁壁の確認申請は、建築基準法第88条第1項が法第6条を工作物に準用することで必要になります。擁壁など昇降機以外の工作物には、法第6条第1項第3号の区域に係る部分が準用されます。

したがって、建築物の計画がないことだけを理由に確認申請不要とは判断できません。擁壁単独の工事でも、高さと区域の条件を満たせば確認対象です。反対に、区域外では建築基準法の工作物確認が必要とならない場合がありますが、盛土規制法その他の手続は別に確認します。

擁壁の高さは「土圧を受ける高さ」

令第138条第1項第5号は「高さが2mを超える擁壁」と規定しています。本記事では、この高さを擁壁が土圧を受ける高さとして整理します。単純な断面では、前面地盤面から背面地盤面までの高低差となります。

現場打ちとプレキャストのRC擁壁について、土圧を受ける高さHを前面地盤面から背面地盤面までの高低差として示した断面図

図面に記載するポイント

・前面と背面の計画地盤高

・土圧を受ける高さH

・根入れ、基礎底、支持地盤

・擁壁上端までの壁体寸法

・段状擁壁や盛土の断面関係

前面に盛土や犬走りがある、壁体が段状である、擁壁上にブロック塀等があるなど複雑な断面では、壁体の見付け高さと土圧を受ける高さが一致しません。確認申請を避けるために見掛け上の地盤面だけを上げるのではなく、造成前後の地盤高と全断面を示し、土圧を受ける高さで判断します。

盛土規制法と確認申請の関係

宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)は、2023年5月26日に施行されています。宅地だけでなく、農地・森林等を含め、指定された規制区域内の一定規模以上の盛土、切土、土石の堆積を規制します。

ここで重要なのは、「確認申請が不要」と「手続が不要」は同じ意味ではないことです。盛土規制法の許可を受けなければならない擁壁は法第88条第4項により建築確認の規定が適用されませんが、盛土規制法の許可・中間検査・定期報告・完了検査など、該当する手続を行います。

法令・許可確認申請との関係
盛土規制法第12条第1項・第16条第1項・第30条第1項・第35条第1項許可を受けなければならない擁壁は、法第88条第4項により確認申請が重複しない
都市計画法第29条第1項・第2項・第35条の2第1項本文開発許可等を受けなければならない擁壁は、同様に確認申請が重複しない
特定都市河川浸水被害対策法第57条第1項・第62条第1項該当する許可を受けなければならない擁壁は、確認申請が重複しない
津波防災地域づくり法第73条第1項・第78条第1項該当する許可を受けなければならない擁壁は、確認申請が重複しない
建築基準法第88条第4項に掲げる許可。許可の要否は、工事規模と区域指定を別途確認します。

盛土規制法の概要や区域指定は、国土交通省の盛土規制法に関する法令・告示・技術的助言と、計画地の自治体が公開する規制区域図で確認します。

擁壁に必要な構造安全性

確認対象となる擁壁の技術的基準は、建築基準法施行令第142条と平成12年建設省告示第1449号第3などで確認します。鉄筋コンクリート造等の擁壁では、少なくとも次の点を設計条件に合わせて検討します。

  • 転倒:土圧等による転倒モーメントに対する安定
  • 滑動:底面の摩擦抵抗等による滑り出しへの抵抗
  • 支持力・沈下:支持地盤に生じる応力と地盤の許容支持力
  • 部材の破壊:壁体、底版、接合部等の応力と配筋
  • 排水:水抜穴、透水層、排水経路による水圧上昇の防止
  • 外力条件:上載荷重、地震時、地下水、背面土の性状、近接建築物等

計算上の安全率だけでなく、地盤調査結果、背面排水、施工時の床付け確認、埋戻し方法まで設計図書に反映することが重要です。自治体のがけ条例等に設計条件がある場合は、その条件も確認します。

国土交通大臣認定擁壁を使う場合

盛土規制法施行令第17条に基づく大臣認定擁壁は、認定された適用条件の範囲で使用します。認定品であっても、地耐力、土質、上載荷重、根入れ、排水、施工条件を自由に変更できるわけではありません。

最新の認定状況は、国土交通省の大臣認定擁壁一覧で確認できます。認定擁壁の考え方は、宅造認定品の解説も参考にしてください。

コンクリートブロック塀は、基礎があっても通常の擁壁ではありません。補強コンクリートブロック造の塀は、建築基準法施行令第62条の8による「塀」として、基礎・縦筋・横筋・定着等を構成するものです。基礎が存在することだけで、壁体と底版が土圧に抵抗する一体の擁壁になるわけではありません。既存宅地で見つけた場合は、CB塀を擁壁として使う問題点も確認してください。

40〜60cm程度のCB土留めでも、土圧は無視できない

「土を止める高さが低いから大丈夫」と考え、塀用CBを土留めに使う例があります。土の単位体積重量γ=18kN/㎥、主働土圧係数Ka=0.33、水平地盤として、擁壁延長1m当たりの土圧を単純化して計算すると次のようになります。

土を止める高さ土自重による水平力壁脚の転倒モーメント
上載荷重なし
上載荷重q=5kN/㎡を加えた転倒モーメント
0.40m0.48kN/m0.06kN・m/m0.20kN・m/m
0.50m0.74kN/m0.12kN・m/m0.33kN・m/m
0.60m1.07kN/m0.21kN・m/m0.51kN・m/m
P=1/2×γ×Ka×H²、M=P×H/3。上載荷重分はPq=Ka×q×H、Mq=Pq×H/2として算定した例。

高さが60cmになると、土自重だけでも壁1mごとに約1.07kNの水平力が継続して作用し、上載荷重があれば転倒モーメントはさらに増えます。適法なCB塀には横筋も必要ですが、その配筋は「塀」としての仕様であり、RC擁壁のように壁体から底版へ土圧による曲げ・せん断を伝達する配筋体系とは異なります。現場で横筋やその定着が確認できず、実質的に縦筋中心となっている例では、塀としての一体性にも疑問が残ります。独立基礎・布基礎等があっても、それだけで擁壁として成立するわけではなく、壁体、基礎、鉄筋の定着、充填状況まで土圧を受ける構造として確認する必要があります。

土圧2m未満での簡易判定式

確認申請の対象にならない2m以下の擁壁でも、土圧を受け止める構造物であることに変わりはありません。「申請不要だからCBでよい」とはならないため、現場打ち鉄筋コンクリート造の片持ち式擁壁を想定した常時の一次検討フォームを用意しました。

このフォームで確認できるのは、平坦な背面地盤・地下水なし・一様な上載荷重を前提とした転倒、滑動、沈下の簡易判定です。沈下については最大地盤反力度が入力した長期許容応力度以下かだけを確認し、圧密沈下量・不同沈下・支持層の連続性は判定しません。壁体・底版の曲げ破壊とせん断破壊、壁と底版の接合部、ハンチ部の局部破壊、鉄筋の定着・継手は判定していません。地下水、斜面、段載荷重、近接基礎、施工性も対象外です。欄外の地震時判定はkh=0.20による参考スクリーニングであり、地震時の部材設計を行うものではありません。表示が「OK」でも、そのまま施工図や確認申請に使用できる設計書にはなりません。

土圧2m未満の現場打ちRC擁壁|常時の簡易判定

擁壁延長1m当たりで計算します。寸法はm、荷重・重量はkN単位です。

L型擁壁と逆L型擁壁の入力寸法。土圧高H、つま先長さ、壁厚、かかと長さ、底版厚、前面土かぶりDf、壁体を貫通する水抜管を表示
図の色と記号が、下の寸法入力欄に対応しています。青線は壁体を貫通する水抜管です。
図を確認し、敷地条件に合う形式を選択してください。
盛土規制法施行令別表第2・第3の数値をkN単位に換算した初期値です。
単位と入力値の目安を確認する
  • 寸法(m):1m=1,000mm。測量図・断面図から入力します。
  • 上載荷重q(kN/㎡):1kN/㎡は約102kgf/㎡。10kN/㎡を標準的な初期値としていますが、車両・建築物・資材置場等は別途設定します。
  • 土の単位体積重量γ(kN/㎥):1t/㎥は約9.81kN/㎥。土質選択により15.7〜17.7kN/㎥を自動入力します。
  • 土圧係数Ka:単位なし。数値が大きいほど水平土圧が大きくなります。土質選択により0.35〜0.50を自動入力します。
  • 底面摩擦係数μ:単位なし。基礎地盤との組合せで設定し、土質選択により0.30〜0.50を自動入力します。
  • 長期許容応力度(kN/㎡):kPaと同じ数値です。地盤調査・載荷試験等の値を入力し、推測だけで確定しないでください。
地盤の長期許容応力度の参考表(施行令第93条)
地盤長期許容応力度(kN/㎡)
岩盤1,000
固結した砂500
土丹盤/密実な礫層300
密実な砂質地盤200
堅い粘土質地盤/堅いローム層100
砂質地盤(地震時に液状化のおそれがないもの)/ローム層50
粘土質地盤20

令第93条ただし書の参考値です。地盤種別を現地確認できる場合の値であり、埋戻し土・盛土・軟弱層を名称だけで当てはめません。原則は地盤調査を行い、平成13年国土交通省告示第1113号等に基づいて設定します。設定方法は、国土交通省の構造関係規定の解説資料も参考になります。

鉄筋のかぶり厚さ|建築基準法と擁壁基準の違い
根拠・部位最小かぶり厚さ
令第79条:耐力壁以外の壁・床20mm
令第79条:耐力壁・柱・梁30mm
令第79条:直接土に接する壁・柱・床・梁、布基礎立上り40mm
令第79条:基礎(布基礎立上りを除く)60mm
宅地造成・擁壁の行政基準で一般的な扱い竪壁40mm、底版60mm

工作物確認の対象となる擁壁には、建築基準法施行令第142条第2項により同令第79条が準用されます。また、盛土規制法により設置する擁壁にも、同法施行令第11条により第79条が準用されます。一方、これらの法令上の対象にならない小規模な任意設置擁壁まで同じ条文が直接適用されるとは限りません。その場合も耐久性・施工誤差を考慮し、宅地造成・擁壁の行政基準で一般的な竪壁40mm・底版60mmなど、計画に適用する基準を確認します(東京都「盛土規制法に係る手引」等)。本フォームの配筋参考試算も壁40mm・底版60mmを使用しています。

地盤調査等の値を入力
地震時参考判定のKae算定に使用

寸法を変えても滑動だけが不足する場合、底版幅を大きくすれば必ず解決するとは限りません。支持地盤、摩擦係数、根入れ、滑り止め、施工可能な形状を含めて設計者が検討します。また、構造の成立後に壁体・底版の曲げとせん断、壁脚・底版付根およびハンチ部の局部応力を計算し、主筋・配力筋・用心筋、定着・継手、かぶり厚さを決定します。フォームの参考ピッチだけで施工してはいけません。

ハンチの役割:壁体と底版の付根にハンチを設けると、付根部分の有効な断面を大きくし、曲げ・せん断による応力集中を緩和できるため、局部的な破壊の防止に寄与します。ただし、ハンチがあれば自動的に安全になるわけではありません。ハンチの寸法、勾配、主筋の配置・定着、施工性を含めて照査し、構造計算上どこまでを有効断面として扱えるかを確認します。

計算根拠は、盛土規制法施行令第9条および別表第2・第3です。同条は擁壁の破壊・転倒・滑動・沈下を構造計算で確認し、転倒モーメントと滑り出す力をそれぞれ抵抗側の3分の2以下とすることを定めています。

排水条件は同令第12条を基に、壁面3㎡以内ごとに内径7.5cm以上の耐水材料による水抜穴を1個以上設け、水抜穴の周囲その他必要な場所に砂利等の透水層を設けることをチェック項目にしています。実施設計では、孔数だけでなく背面排水から安全な排水先まで図示します。

設計者が最初に確認するチェックリスト

  • □ 都市計画区域等と盛土規制法の規制区域を重ねて確認した
  • □ 既存・計画地盤高を測量し、最も不利な断面を作成した
  • □ 擁壁の高さ、土圧を受ける高さ、根入れを区別して記載した
  • □ 開発許可・盛土規制法許可の有無と、法第88条第4項の適用を確認した
  • □ 地盤条件、地下水、背面土、上載荷重、近接建築物を構造条件へ反映した
  • □ 水抜穴だけでなく、透水層から排水先まで計画した
  • □ 既製擁壁は認定書・製品仕様書の適用範囲と照合した
  • □ 工事中の床付け、配筋、コンクリート、埋戻しを記録する計画を立てた

確認申請に用意する主な図書

工作物の確認申請図書は建築基準法施行規則第3条を基礎に、申請先が定める様式・部数を確認します。擁壁では次の図書が中心です。

図書実務上明示したい内容
付近見取図・配置図敷地、道路、境界、擁壁位置、建築物・他の工作物との関係
平面図・縦横断面図既存・計画地盤高、擁壁高さ、根入れ、基礎底、背面土、段差、排水
構造詳細図・配筋図部材寸法、配筋、定着・継手、かぶり、材料強度、施工目地
地盤説明書・調査資料支持層、許容支持力、地下水、土質定数と採用根拠
構造計算書土圧・地震力・上載荷重、転倒・滑動・支持力・部材断面の検討
認定書等大臣認定擁壁を用いる場合の認定書、製品図、適用条件との照合

既存擁壁がある土地を購入・設計するとき

既存擁壁は、見た目だけで安全性や適法性を判断できません。確認済証、検査済証、開発許可、盛土規制法・旧宅造法の許可、造成図面、構造計算書、認定製品名を調査します。

  • ひび割れ、はらみ、傾斜、継ぎ足し、不同沈下がないか
  • 水抜穴が塞がっていないか、常時湧水がないか
  • 擁壁上部にCB塀、盛土、建築物、駐車荷重などが追加されていないか
  • 擁壁下端が隣地に越境していないか、維持管理できるか
  • 確認・許可時の計画と現在の地盤形状が一致しているか

擁壁が不明なまま建築計画を進めると、建築物の配置制限、基礎補強、擁壁の造り替えが後から必要になることがあります。がけに近接する建築物は、がけ条例の基本も合わせて確認してください。

よくある質問

高さ2mちょうどなら確認申請は必要?

令第138条第1項第5号は「2mを超える」と規定しているため、土圧を受ける高さが2mちょうどなら同号の確認対象ではありません。ただし、実際の土圧高が2mを超えないことを測量・断面図で確認し、他法令の手続と構造安全性は別に検討します。

建築確認が不要なら、構造計算もしなくてよい?

そうではありません。確認申請は第三者による手続の要否であり、擁壁の安全性とは別です。2m以下でも、地盤・高さ・上載荷重・周辺への影響に応じた設計が必要です。

盛土規制法の許可を受ければ、建築基準法を見なくてよい?

確認申請は重複しませんが、建築物の敷地安全を定める法第19条、がけ条例、建築物と擁壁の位置関係などは引き続き検討します。

まとめ

  • 土圧を受ける高さが2mを超える擁壁は、令第138条第1項第5号の工作物
  • 確認申請の要否は、高さ・区域・他法令の許可を順に確認
  • 建築物を同時に建てないことだけで確認不要にはならない
  • 法第88条第4項の許可対象擁壁は、建築確認が重複しない
  • 2m以下や確認不要でも、構造安全性と他法令の検討は必要
  • 設計では地盤、土圧、上載荷重、排水、施工記録まで一体で計画

参考:建築基準法(e-Gov法令検索)建築基準法施行令(e-Gov法令検索)盛土規制法に関する法令・告示・技術的助言(国土交通省)宅地擁壁(国土交通省)


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cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆、エンジニア/