【田園住居地域とは?】田園住居地域内で建築できる建物用途をわかりやすく解説

この記事では、都市計画用途地域のうち「田園住居地域」について簡単に解説しています。この記事を読むことで、田園住居地域内で建築可能な建物用途を理解することができるはずです。

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背景と目的

都市農業振興基本法に基づく「都市農業基本計画」が平成28年5月に策定されたところからはじまります。都市部における農業振興について定めた計画となります。所管は農林水産業。

この都市農業基本計画において、”都市農地は都市にあるべきもの” とされたことが大きな要因です。都市内の農地については、その保全がコンパクトシティの推進、地球温暖化対策、災害から都市を守るグリーンインフラの役割が期待されていることも背景にあります。

※人口減少が進んでいるなかにおいても、市街化区域内の農地が宅地に転用され続けていることで市街地の人口密度が低下し将来の行政コストが増大することが懸念されています。

これまでの都市政策は、地方都市を中心に将来にもわたり人口が大幅に増加することを見越して市街化区域を設定していたこともあり、未利用地が多く残っている現状があります。

これらの土地が宅地に転用されることがないよう、又は宅地に転用されても人口密度の低下を招くことがないよう新たに整備されたのがこの田園住居地域です。

類似制度である生産緑地制度居住調整地域も含めて、今後の都市政策を担う重要なツールです。

補足:田園住居地域の指定状況

記事執筆時点(令和4年都市計画現況調査)で田園住居地域を指定しているのは北海道本別町のみとなります。*令和5年版都市計画現況調査

本別町は非線引き都市計画区域で第一種中高層住居専用地域33haを田園住居地域に変更を行なっています。変更理由は次のとおりです。

農地と低層住宅等が混在している弥生町地区において、農業の利便の増進を図りつつ都市農地と調和した良好な住環境と営農環境を保護するため、用途地域を変更する。
なお本別町都市計画マスタープランにおいて文教拠点である本地区は、農産物の生産、加工、消費を一貫して学ぶことのできる「食育と地産地消の学びの場」として位置づける方針である。

変更理由書(北海道本別町)

実務的な視点からお話すると、田畑が点在しておりこのまま放置しておけば宅地化される恐れがある場合に住民の理解のもと行う流れが基本の流れです。ですが、田園住居地域は一種低層のように用途制限が厳しいため地域によっては住民反発が考えられるため開発圧力の低い小都市での実施が現実的かなと考えられます。

または一種低層の住宅団地で空き家・空き地の増加にあわせて今後は宅地を田畑に転換して農との共存を行うケースなども考えられますが現在の社会情勢からすると暫くは先のように思います。

田園住居地域内の用途制限

用途制限の厳しい分類に入ります。

13種類ある用途地域の中ですと、第一種低層住居、第二種低層住居の次に制限が厳しい(住環境保護と営農者のための地域)地域となります。

制限の概要
一号第一種低層住居専用地域内で建築することができる建築物は建築することが可能
※(い)項第一号から第九号
二号農産物の生産、集荷、処理、貯蔵に供する建築物(ただし、農産物の乾燥・処理によて著しい騒音を発生させるもの:H30国交告236で指定するものを除く)
三号農業の生産資材の貯蔵に供するもの
四号地域で生産された農作物の販売を主たる目的とする店舗や飲食店で床面積が500㎡以内(当該用途部分は2階以下)のもの 
*政令第130の9の4に規定
五号店舗や飲食店で床面積が150㎡以内(当該用途部分は2階以下)のもの
*政令第130条の5の2(第二種低層住居専用地域に同じ)
六号附属施設(政令で定める者を除く)
*政令第130条の5
田園住居地域内において建築することができる用途(建築基準法別表第2(ち)項)

はじめに第一号についてです。第一号に掲げる(い)項というのは、「第一種低層住居専用地域」となります。第一種低層住居専用地域は住宅建築の立地を促進し良好な住環境を限りなく確保した地域となっているため原則として住宅優先の用途地域です。

次に第二号ですが、第二号は、田園住居地域内で生産される農産物の「生産・集荷・処理・貯蔵」に供するものを建築することが可能となっています。※騒音等著しいものを除く。

次に第三号ですが、農業の生産資材の貯蔵に供するものが可能となっています。つまり、生産資材ですので肥料等の倉庫ということです。

次に第四号ですが、この第四号が特徴的で、店舗・飲食店等でも地域で生産された農産物を販売したり農産物をつかった料理を提供するレストランなどは、床面積が500㎡以内であれば建築することが可能となっています。

次に第五号ですが、第五号は、第二種低層住居専用地域内での用途規制と同じです。最後に第六号は、附属施設です。

田園住居地域をより知るための補足記事






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など