近年、全国各地で水災害が激甚化・頻発化していますよね。さらに21世紀末には、2000年頃と比べて降雨量が全国平均で1.1倍、洪水発生頻度が2倍になる試算となっているらしいです。
想像していたよりも深刻っぽい。
ということで、国としては、災害リスクの可視化やリスクからの低減・回避を目指して、建築・開発行為等の規制強化や河川・下水道整備、避難施設の整備に向けた法改正を行うようです。
前々から新聞報道では耳にしていましたが、早くも今回の国会だとは思わなったので正直、驚いた自治体やコンサルの都市政策担当の方もいらっしゃるのかなと思います。
また、不動産業を営まれる方にとってもどのような改正が行われるのか気になるところかと思います。
そのような方向けに、不動産や都市政策に関連する改正点のポイントまとめてみました!
第1段として概要をさくっと書いていますので読み難いようでしたらすみません。(先に謝っておきます)
詳細は順次、別記事に書いていく予定ですので、この記事をブックマークして頂くと嬉しい限りです♪
あいさつが遅くなりました!やまけん(@yama_architect)といいます。
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目次
改正される法律
『特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律』のうち、都市政策や不動産取引上、重要なポイントを解説しようと国交省さんが公表している新旧対照条文を読みはじめたのですが、多岐にわたる改正となっているので、理解するのにめっちゃ大変でした(笑)
ひとまず、改正される主要な法律は次のとおりです。
なお、、、この法律の改正に合わせて、関連する施行令(政令)や施行規則(省令)が改正されますので、今回の法文だけ読んでも不明な部分がありますので、詳細を把握するにはもう少し時間がかかります。
- 特定都市河川浸水被害対策法
- 水防法
- 建築基準法
- 下水道法
- 河川法
- 都市計画法
- 防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律
- 都市緑地法
- 都市再生特別措置法
- 土砂災害防止法
この他にも関連する地方自治法や地方税法といった法律も改正される予定となっています。
詳しくは、国土交通省の公式ホームページに掲載されている新旧対照条文をご覧ください。
>>国土交通省公式ホームページ(https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo02_hh_000027.html)
改正の概要としては、次の4つに分類にされています。
- 流域治水の計画・体制の強化(特定都市河川法関係)
*流域水害対策計画の対象を拡大(河川・下水等の管理者や市町村が共同で流域治水に取り組む計画)、流域水害対策に係る協議会の創設 - 氾濫をできるだけ防ぐための対策(河川法、下水道法、特定都市河川法、都市計画法、都市緑地法)
*利水ダムの事前放流の拡大を図る協議会の創設、下水道の対策強化、樋門等の操作ルール策定の義務付け、貯留機能保全区域の創設、グリーンインフラの活用、自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備支援 - 被害を減少させるための対策(特定都市河川法、都市計画法、防災集団移転特措法、建築基準法)
*災害レッドゾーン(津波被害防止区域)を創設し、特定都市河川流域内の住宅及び要配慮者施設の安全性を確認(許可制)、防災集団移転促進事業エリアの拡充、都市安全確保拠点施設(都市施設)の追加、地区計画の改正 - 被害の軽減、早期復旧・復興のための対策(水防法、土砂災害防止法、河川法)
*ハザードマップ作成を中小河川に拡大、要配慮者利用施設の避難計画・訓練に対する市町村の助言・勧告の追加、国の権限代行の対象を拡大(災害で堆積した土砂・準用河川)
災害レッドゾーンに浸水被害防止区域が追加
新たに、災害レッドゾーンに『浸水被害防止区域』が追加されます。
浸水被害防止区域とは、特定都市河川浸水被害対策法第56条第1項に新たに規定されるもので、次のように規定されています。
浸水被害防止区域は、住民の生命を第一に考えて設定されるもので、特定都市河川法(平成15年法律)に基づき、特定都市河川流域(流域の市街化率が概ね5割を超えるような大都市の河川)に指定することができるものとされており、指定は、都道府県知事が行うとされています。
そのため、特定都市河川流域以外は現在のところ指定できる規定とはなっていません。
>>浸水被害防止区域についての概要はこちらの記事を参考にしてください。
この浸水被害防止区域は、災害レッドゾーンとして位置付けられることにより、開発行為の技術基準(都市計画法第33条)が改正され、自己用建築を除く開発行為については、浸水被害防止区域を含む災害レッドゾーンを開発区域に含めることができなくなります。
洪水浸水想定区域(イエローゾーン)の対象が中小河川に拡大
これまでの水防法では、一級河川及びに二級河川のうち、洪水予報河川及び水位周知河川について、想定最大規模(1,000年確率)の「洪水浸水想定区域」の公表が義務付けられていましたが、この両河川に加えて、二級河川のうち、国土交通省令で定める基準に該当する中小河川も対象となります。
国土交通省令とは、『洪水による災害の発生を警戒すべきもの』として、省令(=水防法施行規則)に定められる予定ですが、現在のところ、具体的な基準は公表されていませんので不明です。
なお、洪水浸水想定区域の対象となることで、市町村はその区域指定を受けてハザードマップを公表することになりますから、そうなると、取引地が浸水エリアに該当している場合、重要事項説明の対象となりますので、都道府県による洪水浸水想定区域の指定に向けた動きを把握しておく必要があります。
>>参考記事(令和2年に洪水浸水想定区域は重説対象となりました)
なお、今回の法律改正に関するKPI(目標)については、浸水想定区域を指定する河川数を2020年度の2,092河川から2025年度に約17,000河川に増やそうと設定していますので、3・4年以内に多くの中小の二級河川で公表が進められると想定されます。
都市施設に新たに『一団地の都市安全確保拠点施設』が追加
都市計画法が改正され、新たな都市施設として、一団地の都市安全確保拠点施設が追加されます。
この都市安全確保拠点施設とは、災害時の避難先となる拠点となるもので、津波防災拠点に近いものがあります。
おそらくですが、国の法律案の資料を確認する限りは、社会資本整備総合交付金などの国の支援制度を活用することで、一団地の都市安全確保拠点施設の整備に対して補助金が交付されるものと思います。
>>詳細記事はこちら
>>都市計画施設についての参考記事
地区整備計画に定めることができる制限に”地盤面及び居室の高さの最低限度”が追加
地区(街区)単位の浸水対策として、地区計画に「建築物の敷地の地盤面の高さの最低限度」と「建築物の居室の床面の高さの最低限度」が定められるようになります。
つまり、浸水被害が想定される区域において、地盤面及び居室の最低限度を定めることにより、建築物や生命・財産の保護を図ることがまちづくりのルールとして設定することができるようになります。
地区計画ですのでおそらく条例化も可能(建築基準法第68条の2の地区計画条例に関する建築基準法施行令も改正される)となることが考えられます。
そうなると、建築確認申請において審査されることとなるため、法的拘束力を有することとから、まちづくりのルールとしての実行力が高まることが考えられます。
例えば、洪水の恐れがある区域の造成を行う事業者を公募する際に、都市計画提案を活用して地区計画に地盤面又は居室の高さの最低限度を定めることを条件とすれば、その造成地の災害リスクは低減若しくは回避することが可能となる。
特別緑地保全地区の指定要件が変更
特別緑地保全地区(都市計画法第8条第1項第12号)の指定要件が次の考え方が追加されました。
グリーンインフラを貯水機能として活用・保全するための方法として、特別緑地保全地区という都市計画を活用することが可能となったということだと思います。
雨水貯留浸透地帯(雨水を一時的に貯留し又は地下に浸透させることにより浸水による被害を防止する機能を有する土地の区域)
特別緑地保全地区に指定されれば、緑地の管理義務が生じるため将来的に保水機能を確保し続けることが可能となることから、新たにこうした地区を都市計画区域内に指定することで、都市全体の保水機能を確保(流域治水の一環)しようとする考えです。
補足:施行日
今回の法改正ですが、施行日については、特定都市河川法関連が公布後6ヶ月以内、水防法関連が公布後3ヶ月以内を予定しています。
第204回国会には2月2日に提出されていますので、通常であれば5月頃には公布される予定ですから、遅くても年内に施行(水防法関連の早期に取り組むものは、夏頃までに施行)されると考えられます。
ということで以上となります。参考となれば幸いです。
この記事については、随時更新して、内容を充実させていく予定です。
(ひとまず第一弾としてアップしました!)
特定都市河川流域のうち、洪水又は雨水出水が発生した場合には建築物が損壊し、又は浸水し、住民その他の者の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為及び一定の建築物(居室を有するもの)の建築又は用途変更を制限すべき土地の区域