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「一団地の都市安全確保拠点施設」とは?(令和3年に新たに登場する都市施設)

この記事では、特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案(第204回国会提出法案)のうち、都市計画法に関する改正として都市施設に位置付けられる予定の「一団地の都市安全確保拠点施設」を解説します。

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています。

それでは、現時点(記事更新日時点)で分かっている範囲で解説していきます。
なお、特定都市河川法改正の全体概要はこちらをご覧ください。
>>【不動産業の方は必見】特定都市河川法等の改正法案が閣議決定され、第204回国会に提出。




一団地の都市安全確保拠点施設とは?

出典:気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員会(国土交通省)

一団地の都市安全確保拠点施設とは、洪水・津波・高潮が発生した場合に避難が可能な施設で、かつ、保険医療や生活関連物資の配布といったサービスを提供するための公益的施設または公共施設をいいます。

都市計画法改正後は、都市計画法第11条第1項第10号に規定されることとなります。

溢水(いっすい)、湛水(たんすい)、津波、高潮その他の自然現象による災害が発生した場合における居住者・来訪者・滞在者の安全を確保するための拠点となる一団地の特定公益的施設及び公益施設をいう。
※都市計画法第11条第1項第10号

特定公益的施設
避難場所の提供、生活関連物資の配布、保険医療サービスの提供その他の災害が発生した場合における居住者・来訪者・滞在者の安全を確保するための必要な機能を有する集会施設、購買施設、医療施設その他の施設をいう。

イメージ的は、同項第11号(改正後は、12号)の一団地の津波防災拠点市街地形成施設に近いものがあると思いますが、河川洪水や高潮に対する備えとして位置付けることができる施設としては、都市計画法上はじめての試みのはずです。

そもそも、都市計画基準において、市街化区域を設定する際に溢水等の恐れがある地域は含めないのが前提なんですけどね・・・でも、そうした危険な地域を含めてしまったのは、高度経済成長期の都市の急拡大に対応できていなかったのが要因かなと思います。
それか、ハード整備により災害に強い都市基盤が出来ると思っていたの方が要因としてあるかもです。

今後、具体的にどのようなケースにおいて位置付けることができるかなどは、都市計画運用指針等で解説されていくはずなので、情報が分かったらこの記事に追記する予定です。

では、どのような都市計画を定めることができるのか解説します。

定めることができる都市計画の内容

一団地の都市安全確保拠点施設については、次の事項を定めることができます。
洪水等に対する備えについては、①の特定公益的施設及び公共施設の規模において定めることができると思います。

  1. 特定公益的施設及び公共施設の位置及び規模
  2. 建築物の高さの最高限度・最低限度
  3. 建築物の容積率の最高限度・最低限度
  4. 建築物の容積率の最高限度

おそらくですが、河川洪水であれば、水防法に規定される洪水浸水想定区域(1,000年確率に対する想定最規模降雨)において、浸水深以上より上に居室や電気設備などを設けるような規模等の設定を行うようになるものと考えられます。

設定する考え方としては、避難を前提としなければならないエリアにおいて、住民等の安全を確保するために仕方なく設置するイメージのような気がします。

基本的に国は、災害リスクからの回避・低減を考えていますから、まずは避難を前提としないで、河川や雨水貯留浸透施設、グリーンインフラ等のハード整備によりリスクを低減させ、かつ、どうしようもない地域については、そこからの移住等を促進(災害リスクの回避)させるものと思います。

ですので、地域の防災拠点となるような施設については、ある程度被害が予測されるエリアへの設定が考えられます。

合わせて改正される都市計画基準にも同様な考え方示される予定です。

改正後の都市計画基準

都市計画基準とは、都市計画を定める場合に基準としなければならない考え方を示したもので細かく規定されています。その中では、新たに都市計画法第13条第1項第12号に次の考え方が加えられます。

  • 溢水(*洪水)、湛水(*雨水出水)、津波、高潮その他の自然現象による災害の発生の恐れが著しく、かつ、当該災害が発生した場合に居住者等の安全を確保する必要性が高いと認められる区域(当該区域に隣接し、または近接する区域を含む)について定めること。
  • 溢水、湛水、津波、高潮その他の自然現象による災害が発生した場合において、居住者等の安全を確保する必要性が高いと認められる区域における一団地の都市安全確保拠点施設の機能が一体的に発揮されるよう、必要な位置に適切な規模で配置すること。

*都市計画法第13条第1項第12号(一部抜粋)

まとめ・補足(施行日など)

災害時の避難先となる拠点(一団地の都市安全確保拠点施設)の簡単な概要をまとめました。

ポイントは、災害が発生した場合に居住者等の安全を確保する必要性が高いと認められる区域に定めることができるとされている点です。基本的には避難を前提としなければならないエリアにおいて定めることができる都市計画施設かと思います。

市街化区域内において災害の恐れがある地域で避難を前提としなければならない地域では、この拠点施設を都市計画税等を活用して整備することができるようになりますから、災害リスクが高いエリアでの活用が望まれるのかなと思います。

また、施行日は、公布後6ヶ月以内を予定しています。
通常ですと、ゴールデンウィーク明けに可決され、公布されますから、そこから政令等の調整作業を行って、台風シーズン頃にはある程度の概要が分かるようになるのではないでしょうか。

今後、都市計画運用指針や補助制度等で詳細が分かるようになりましたら、この記事を更新します。
それでは、この記事が全国の都市計画担当者の業務に役立てば幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など