こんにちは。やまけん(@yama_architect)です。
このブログでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています。
先日の熱海市での土砂災害をニュースやTwitterで目にした方が多いかと思います。
衝撃の光景ですよね・・・お亡くなりになった方のご冥福をお祈りします。
イエローゾーンでも危険
わたしのブログでは、過去に土砂災害の危険性についても書いていました。がしかしですよ、、、今回のことを受けて訂正しないといけないです。
というのも今回、被害が大きかったエリアの大半が土砂災害警戒区域(イエローゾーン)だったのです。
イエローゾーンは土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)と異なり、「土石等の移動により生じる力(KN)」は示されません。つまるところ、建築基準法に基づいた対応を行う必要はない区域となります。
分かりやすくいうと、イエローゾーンは大雨の際に”土砂災害に警戒してください”程度の効果のみです。繰り返しになりますが、レッドゾーンのように建築基準法に基づく構造耐力上の制限はないのです。(なお、今回の災害では、仮にレッドゾーンであってもRCの耐力壁で防げなかったようにも思えます。)
>>参考記事(土砂災害警戒区域(土砂災害防止法)内での建築制限を解説。)
結論的には「イエローゾーンでもレッドゾーン並みに土砂災害に警戒する必要がある」ということです。
それでは、今回被害を受けた地域に指定されていた制限について、わたしがリサーチした範囲で解説していきますので、建築士や宅建士の皆様、これから住宅を建築しようと考えている方の参考になれば幸いです。
土砂災害警戒区域と被害地域
こちらの地図は、被害があった地域について国土地理院が土砂堆積の状況を範囲で示したものと静岡県が指定している土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の範囲を示したものです。
被害があった地域の周囲には、イエロゾーンが設けられていたことが分かるかと思います。*この他にも制限が設けられていますが、分かりやすくするため、イエローのみ示しています。
次に街中の土砂の堆積情報を示した図面とイエローゾーン(一部のみ)の対比です。
今回、土石流が発生した地域と土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の範囲が重複していますよね。
イエローゾーンに指定されているので、住民の方々はその危険性を平成24年当時には知らされていたと考えられますが、いつのどのタイミングで避難すればいいのかは自治体が発信する情報頼りにならざるを得ない状況だったかと考えられます。
被害地域を含む範囲に指定されていた制限
今回、被害を受けた地域をリサーチしてみると、イエローゾーン以外にも次の制限が設けられていることが分かりました。
*今回の被害を重複する部分が多い逢初川地区の土砂災害警戒区域(土石流)は平成24年3月に指定されています。
なお、イエローゾーンの設定にあわせてレッドゾーン(土石流・急傾斜地の崩壊)についても部分的に指定されていましたが、限定的な範囲でしたので、多くの住宅で土石の移動等により生じる力に耐えられる構造にはなっていなかったと想定されます。
制限名 | 指定年月日等 |
---|---|
宅地造成工事規制区域 | 1966年6月8日指定、建設省 |
伊豆山地区土砂災害警戒区域(地すべり) | 2017年3月31日指定、静岡県 |
寺山沢地区土砂災害警戒区域(土石流) | 2012年3月30日指定、静岡県 |
逢初川地区土砂災害警戒区域(土石流) | 2012年3月20日指定、静岡県 |
砂防指定地(逢初川) | 1999年2月16日指定、 建設省 |
開発行為が原因?
開発行為とは、都市計画法に基づく宅地造成等の許可のことで宅地利用を前提に行う土地の区画形質の変更のことをいいます。
今回の被害地域は、非線引都市計画区域でしたので、仮に開発許可を取得しているとすれば、宅地面積が3,000㎡以上であったはずです。許可を得ていないとすれば3,000㎡未満であることが考えられます。
なお、被害を受けた地域は宅地造成工事規制区域のため、宅地造成等規制法に基づき工事の技術的基準が適用されます。その場合、技術基準に基づき宅地の安定計算等を行うので宅地の安全性は担保されるはずです。ですので、許可を受けている造成工事であったのであれば原因究明が急がれるところだと思います。
異なる場合(開発行為ではない場合)には、宅地利用ではないケース(建築基準法に基づく建築物の建築や工作物の設置が無い)かと思われます。例えば、駐車場やソーラーパネルなど。いずれにしても、静岡県が原因を調査すると言っていますので、遅かれ早かれ要因は突き止められるはずです。
まとめ
今回の災害のようにイエローゾーンでも条件が重なれば大規模な災害となることが明らかになったので、レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)のみに限らず、イエローゾーンでも降雨時の避難行動を優先するか、比較的災害リスクが低い地域への移住が最良の選択かと思われます。
また、災害情報は行政頼りになっている方が多いと思いますが、自身で災害リスクを確認することがとても大切ですので、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ということで以上となります。また、土砂災害の原因等が分かれば記事にしたいと思います。