【No.4 二級建築士の業務範囲拡大】2022年建築基準法・建築物省エネ法等の改正内容を分かりやすく解説

この記事は、こちらの記事(令和4年建築基準法改正の最新情報(令和4年4月22日時点)*法令未確認)の詳細版です。

令和4年4月22日に閣議決定された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」をもとに、現時点でわかっている法律改正の範囲で主要な部分を抽出している記事となります。

令和4年6月中旬の会期末までに修正等があるかもしれませんが、その場合には可能な限り修正する予定です。

なお、政令については、法律の成立後に各種会議での検討、パブリックコメント等を通じて示されるため現時点では不明となっています。

法律の施行は公布後3年以内(一部、3ヶ月、1年、2年以内)施行と決まっていますので、平成30年の建築基準法改正のときを考慮するとスケジュール的にいっぱいいっぱいのような・・・今後、説明会も1年以上前から実施しないいけないでしょうし、お国の方は大変ですね。

ではでは解説します。なお、現時点では改正案であることに留意ください。




二級建築士の業務拡大(高さ13m以下→16m以下*3階以下)

従来高さが13m又は軒高が9mを超える建築物については、一級建築士でなければ設計及び工事監理を行うことができない規定となっていました。

この規定が改正され、「高さ13m・軒高さ9m」が「高さが16m超又は4階(地階を除く)以上」に改正されます。

つまり、木造3階の建築物での高さ又は軒高さが従来の基準以上であれば一級建築士でなければならなかったものが、二級建築士でも高さ16m以下の木造3階建て以下の建築物の設計・監理が可能となります。

また、非木造建築物についても、延べ面積が300㎡以下・階数3以下であれば、高さが16m以下の建築物の設計・監理が可能となります。

二級建築士の業務範囲として、高さ13m以下が高さ16m以下に変更(3mアップ)、軒高9m以下の制限が撤廃される(ただし、階数は3以下)ので、実質的には制度緩和と言っていいと思います。

こうした変更が行われる背景としては、やはり脱炭素が関係しています。国が改正法の閣議決定にあたり社会資本整備審議会で取りまとめた答申書によると、次にように現状・課題が書かれています。

今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次答申)及び建築基準制度のあり方(第四次答申)について~社会資本整備審議会 答申~ ※抜粋

省エネ性能の確保の観点から、断熱材や省エネ設備の設置スペース確保のために階高を高くした建築物のニーズが高まっているが、3階建ての木造戸建住宅であっても高さ13m又は軒高9mを超える場合は高度な構造計算及び構造計算適合性判定の追加的な手続きが必要となり、これが省エネ性能を高めた建築物の負担が大きくなる一因となっている。また、高さ 13m 又は軒高9m 超の建築物は、高度な構造計算が必要であることから、一級建築士でなければ設計又は工事監理をしてはならないこととされている。この点、階数が3以下及び高さ16m以下の建築物については、簡易な構造計算によって構造安全性を検証できることが技術的検討により明らかとなっている。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000912.html

考え方として、木造建築物について、階数が3以下で高さ16m以下であれば、簡易な構造計算(ルート1:許容応力度計算)により構造安全性の検証が可能なことから、従来のルート2以上の計算を行う必要はないとする見解です。

従来、高さ13m超・軒高9m超の建築物はルート2以上の計算+構造計算適合性判定によって時間とコストを要していたので、言い過ぎかもしれませんが、設計士・建築主双方にとって相当な負担であったはず。

*建築士法改正案における建築士の業務範囲(二級建築士以下は実質的に対象建築物の範囲が拡大)

建築士法第3条第1項改正案
木造の建築物又は建築物の部分で、高さが16mを超えるもの又は地階を除く階数が4以上であるもの
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れんが造、コンクリートブロック造又は無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が300㎡を超えるもの、高さが16mを超 えるもの又は地階を除く階数が4以上であるもの

建築士法第3条第1項第二号・第三号

補足:建築基準法第20条も改正

建築基準法第20条(構造)についても改正が行われています。

なお、建築基準法第20条の改正に伴い、木造建築物については、ルート1以上の構造計算が必要となる規模に関しても変更が行われ、その基準として、延べ面積が300㎡超・地上3階以上となる予定です。

従来ですと、例えば、階数2・高さ13m以下で延べ面積が500㎡以下であれば、構造計算不要で仕様規定のみでよかったものがルート1の下限が300㎡以下となる予定です。

全体的に見れば構造計算が必要となる建築物の数が多少増加するのかなと思います。

施行予定日

建築士法の改正及び建築基準法第20条の改正については、法律の公布後3年を超えない範囲で政令で定める日とされていますから、現在の予定で進めば、2025年6月頃までには施行されることとなります。


という事で以上となります。参考になりましたら幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など