この記事では、「土地の払い下げ」とは何か、また、道や水路の主な手続きの流れを分かりやすく解説しています。
先に結論です。公図に赤道や水路があり、現地で使われていないように見えても、勝手に敷地へ取り込むことはできません。まず公共物として残す必要があるかを管理者が判断して用途廃止し、その後に価格決定・売買・所有権移転を行うのが払い下げです。用途廃止が認められても、必ず買えるとは限りません。
こんにちは。やまけんです。土地購入や建築計画で、敷地の中央に細い水路や公図上の道が残っていると困りますよね。「使われていないから買えるでしょう」と先へ進めたくなりますが、道路・水路・財産・建築の担当が分かれる案件です。順番を間違えると、測量をした後で用途廃止できないことが分かるケースがあります。
用途廃止と払い下げは別の手続き
行政財産は、庁舎、道路、水路など行政目的に使う財産です。公共用として必要な間は、原則として一般の土地と同じように売却できません。機能が失われ、将来も公共用に使う必要がないと判断されたときに用途を廃止し、売却できる普通財産へ移します。その普通財産を申請者が買い受ける手続きが、一般に「払い下げ」と呼ばれています。
つまり、用途廃止は公共物としての役割を終える判断、払い下げは所有権を移す契約です。用途廃止の承認だけで申請者の土地になるわけではなく、売買契約と登記が終わるまで所有者は変わりません。地方自治法第238条以下が公有財産の基本です。
対象は、道路法・河川法の適用を受けない里道や水路などの法定外公共物が典型です。実務の出発点は、平成12年(2000年)の地方分権改革以降、現に公共機能を持つ国土交通省所管の里道・水路は、原則として市町村へ譲与され、市町村が財産と機能を管理する、です。譲与手続は2005年3月31日まで行われました。
ただし、「公図に道や水路の形がある土地は、すべて市町村管理」という意味ではありません。道路法上の道路、河川法上の河川、農道・農業用水路、林道、港湾施設、国有林野などはそれぞれの制度と管理者で扱います。また、市町村へ譲与されなかった法定外公共物は、2005年4月1日以降、国が直接管理する国有財産として残るものがあります。公図の見た目ではなく、所有者・財産管理者・機能管理者の三つを資料で確定してください。
道の名前より、どの部署が何を管理しているかを調べる
「道路課へ聞けば全部分かる」とは限りません。同じ自治体の中でも、財産と施設の担当が分かれています。自治体の組織名は違いますが、相談先はおおむね次のように切り分けられます。
- 市町村道:道路管理課、道路河川課、土木事務所など。認定路線、道路区域、境界、占用、用途廃止を確認する
- 里道・公図上の道:道路管理部門または管財・財産管理部門。法定外公共物台帳、国からの譲与図書、境界確定資料を確認する
- 水路・青道:河川、水路、下水道、農政の各部門。排水機能と所有が別部署の場合もあるため、両方を確認する
- 農道・農業用水路:農政課、農林課、土地改良担当、土地改良区。市町村所有でも、日常管理を土地改良区等が担う場合がある
- 林道:林務課、農林課、森林整備担当。林道台帳と管理規程を確認する
- 「公衆用道路」と登記された土地:これは不動産登記上の地目で、公共団体の管理を証明する表示ではない。所有者、道路認定、道路区域、建築基準法上の道路種別を別々に確認する
たとえば横浜市では、法定外道路・水路の境界や管理について各区の土木事務所が窓口になります。一方で、市有財産としての処分、道路認定、水路機能、下水道施設は別の担当へつながることがあります。自治体運用の紹介はあくまで入口です。持参するのは、公図、登記事項証明書、位置図、現況写真、道路・水路台帳の写し。これがあれば「その道はうちではありません」で終わらず、次の所管へつないでもらいやすくなります。

払い下げできるかを分ける4つの判断
自治体ごとに要綱や様式は違いますが、共通して確認されるポイントは次のとおりです。
- 現在の公共機能:通行、排水、農業用水、維持管理通路などの機能が残っていないか
- 将来の公共利用:道路拡幅、雨水排水、災害対応などで将来も必要ではないか
- 第三者への影響:隣接地・対側地・上流下流の利用や権利を害さないか
- 代替機能と境界:付け替えが必要か、境界が確定しているか、売却後も維持管理上支障がないか
横浜市の水路改廃手続では、現地確認のうえ、水路敷として管理する必要がないと判断された潰れ水路について払下げ等が可能とされています。まず事前調査依頼書を出し、土木事務所との現地調査を経て可否の回答を受けます。最初から売買申請ではない点が重要です。
一方、横浜市道の払下げは、市道の認定・廃止・区域変更の基準や道路変更手続要綱に基づきます。水路と道路で窓口・基準が異なります。名古屋市の公表資料でも、市へ譲与された法定外公共物のうち、水路機能が廃止された市有地について、隣接所有者等から申出があれば用途廃止と売払いを進める運用が示されています。
なお、道路法上の道路でなくても、建築基準法第42条の道路に該当していることがあります。財産上の用途廃止だけで、建築基準法上の道路指定が自動的になくなるわけではありません。位置指定道路や条例上の道路の廃止・変更は、建築側の手続きを別に確認します。廃止後に既存敷地の接道が失われる計画は認められません。
手続きは測量前の事前相談から始める
実務では次の順番で進めると、不要な測量や同意取得を減らせます。
- 公図、登記事項証明書、地積測量図、道路・水路台帳、現況写真を集める
- 道路管理、水路管理、財産管理、建築指導の各窓口を確認し、用途廃止の見込みを事前相談する
- 管理者が求める範囲で境界確定・測量・現況平面図を作成する
- 隣接者、対側地、自治会、水利関係者など、自治体が指定する利害関係者の同意を取得する
- 用途廃止申請、承認、普通財産への整理を行う
- 評価・価格決定後に払下げ申請、売買契約、代金納付、所有権移転登記を行う
- 建築確認の敷地へ算入するのは、取得と必要な道路・水路手続が完了した後にする
誰に相談する? 境界確定・測量・表題登記は土地家屋調査士、所有権移転や権利関係は司法書士、建築基準法上の道路・敷地設定は建築士が中心です。用途廃止を決めるのは管理者であり、専門家へ依頼しても承認が保証されるわけではありません。
建築・不動産調査で見落としやすい境界
不動産売買では、「払下げ可能」と「払下げ済み」を区別してください。可能性の説明だけで敷地面積や接道条件へ算入すると、契約後に計画が成立しないおそれがあります。少なくとも、管理者、事前調査の回答、必要な同意者、概算面積、価格決定方法、予定期間、建築基準法上の道路処理を資料化します。
水路機能を別位置へ移すなら、単純な用途廃止ではなく付け替えや所管換が必要になる場合があります。道・水路の付け替え、取得後の敷地設定は建築確認申請上の敷地、水路を挟む接道は水路・高低差がある場合の接道も合わせて確認してください。
この種の土地で厄介なのは、地図上は一本の細長い筆でも、財産管理、通行・排水という機能管理、建築基準法上の道路判断が別々に動くことです。情報が部署ごとに分かれているため、相談者側が順番を組み立てないと、同じ説明を何度もすることになります。私は、測量を発注する前に「誰の土地か」「何の機能が残るか」「建築敷地に取り込めるか」の三列で調査結果を整理するのがよいと考えています。これだけで、用途廃止できない土地へ先に費用を掛けるリスクをかなり減らせます。
ということで、現地で使われていないことは調査の入口にすぎません。公共機能を廃止できるか、売却できる財産か、取得後に建築敷地として使えるかを分けて確認するのが、遠回りに見えていちばん安全です。
一次資料:財務省「法定外公共物に係る国有財産の取扱い」/国土交通省「赤道・青道の管理」/横浜市「法定外道路・水路の管理」/国有財産法/関連条文ナビ












