この記事では、宅建業法第35条の重要事項説明のうち、令和4年9月に追加された「重要土地等調査法」の特別注視区域を分かりやすく解説しています。
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目次
重要土地等調査法とは?
重要土地等調査法の正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」といいます。
正式名称を読むと、なんとなくどういった目的の法律家が分かりますよね…
目的を読むと、防衛施設と国境付近で国の安全保障を脅かす土地利用を制限するぞというもの。
第1条 この法律は、重要施設の周辺の区域内及び国境離島等の区域内にある土地等が重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを防止するため、基本方針の策定、注視区域及び特別注視区域の指定、注視区域内にある土地等の利用状況の調査、当該土地等の利用の規制、特別注視区域内にある土地等に係る契約の届出等の措置について定め、もって国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与することを目的とする。
重要土地等調査法第1条の目的
所管庁は内閣府となります。
防衛関係施設、海上保安庁施設、生活関連施設(原子力関係施設・自衛隊施設が隣接し自衛隊も使用する施設)の周辺(敷地周囲概ね1km)と国境離島や有人国境離島地域を構成する離島の機能を阻害する土地等の利用を防止するため、注視区域を指定し、さらに重要な区域を特別注視区域として指定します。
重要事項説明の対象となる宅建業法の条項とは?
重説の対象は「特別注視区域」となります。
宅建業法施行令第3条第1項第63号の規定により、重要土地等調査法第13条第1項と定められています。この重要土地等調査法第13条第1項は次のとおりです。
ちょっと長い文章なのですが、要約しますと、特別注視区域内で一定規模以上の土地・建物の売買契約を締結する場合には、その締結する前に内閣総理大臣に対して届出を行ってくださいねとするルールです。(*内閣府が所管する法律のため提出先が内閣総理大臣となります。)
(特別注視区域内における土地等に関する所有権等の移転等の届出)
第13条 特別注視区域内にある土地等(その面積(建物にあっては、床面積。第二号において同じ。)が200㎡を下回らない範囲内で政令で定める規模未満の土地等を除く。以下この項及び第3項において同じ。)に関する所有権又はその取得を目的とする権利(以下この項において「所有権等」という。)の移転又は設定をする契約(予約を含み、当該契約に係る土地等に関する所有権等の移転又は設定を受ける者が国、地方公共団体その他政令で定める者である契約その他当該契約による土地等に関する所有権等の移転又は設定後における当該土地等が特定重要施設の施設機能又は特定国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供されるおそれが少ないものとして政令で定める契約を除く。以下この条及び第26条第一号において「土地等売買等契約」という。)を締結する場合には、当事者は、次に掲げる事項を、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、内閣総理大臣に届け出なければならない。一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
重要土地等調査法第13条第1項
二 当該土地等売買等契約の対象となる土地等の所在及び面積
三 当該土地等売買等契約の目的となる土地等に関する所有権等の種別及び内容
四 当該土地等売買等契約による土地等に関する所有権等の移転又は設定後における当該土地等の利用目的
五 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
特別注視区域内にある土地・建築物の所有権又はその取得を目的とする権利の移転・設定をする契約(土地・建物売買等契約)を締結する場合には、売主・買主の双方が契約を締結した日から2週間以内に内閣府(郵送)に提出しなければならないとする規定です。
土地の面積は200㎡以上、建物は床面積200㎡以上と定められています。(施行令第4条)
つまり、重要事項説明では特別注視区域内の土地・建物の売買等を行う場合には、売主・買主の双方が契約締結する前に内閣府に届出する旨を説明する必要があります。
なお、一部の取引については、契約締結後2週間以内の届出となります。
では、ここから特別注視区域の届出方法について簡単に解説していきます。
特別注視区域の位置は?
この特別注視区域がどこに指定されているかですが、この法律の第12条第1項の規定により内閣総理大臣が指定を行います。
具体的な位置については、内閣府の公式ホームページに掲載されていますので参考にしてみてください。
>>>特別注視区域の位置(外部リンク)
*記事執筆時点では、北海道、青森県、東京都、島根県、長崎県の一部に指定されています。
特別注視区域内での届出対象となる土地・建物
特別注視区域内の土地・建物の対象は次のとおりです。
詳細は、重要土地等調査法第13条第1項、施行令第4条に規定されています。
- 土 地:200㎡以上
- 建築物:各階の床面積の合計が200㎡以上
特別注視区域内での届出対象となる取引・届出対象外の取引
売買、贈与、交換、形成権(予約完結権・買い戻し権)の譲渡と、これら契約の予約を含む契約が対象となります。ただし、相続、遺産分割、法人の合併、確定判決等については届出の対象とならないです。
また、所有権、予約完結権及び買い戻し権以外の地上権、永小作権、地役権、先取特権、不動産質権、抵当権、賃借権等の移転等については届出対象外の取引となります。
その他、特別注視区域内での届出に関して
その他の詳細は、内閣府のホームページにおいて、届出方法や届出様式が掲載されておりますので、参考にしてみてください。
補足:届出に対する国の権限
特別注視区域での事前届出では、氏名や住所の他、国籍、加えて利用目的などを記載します。この記載内容に対して内閣府は調査することが法律で定められています(法第13条第4項)。
具体的には、利用状況調査のために必要がある場合には、関係行政機関に対して、氏名、名称、住所、本籍、生年月日、連絡先、性別に関する情報提供を求めることができる他、土地利用者及びその関係者に対して報告・資料提出を求めることができるとされています。(法第7条、第8条)
なお、注視区域を含めて、重要施設の施設機能や国境離島等の機能を阻害する行為に該当する土地利用(又は明らかにおそれあり)と認められる場合は、利用者に対して勧告するとともに、勧告に対して措置を講じなかった場合には命令を行うことができます(法第9条)。
また、当該土地について国が適切な管理を行う必要があると認められる場合には、国が買取り等の措置に努めるとされているので、必要に応じて国が土地を収用することとなります。ですので、特別注視区域内の土地取引では注意が必要です。(法第23条)
補足:罰則
届出をしないで土地等売買契約を締結したときや、届出をしなかったとき、虚偽の届出を行った場合には、6ヶ月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(法第26条)
まとめ
重要事項説明の対象は、重要土地等調査法第13条第1項です。
ポイントは、特別注視区域であるかどうか(内閣府の公式サイトで検索することが可能)。土地・建物で面積200㎡以上(建物は床面積)であること。売買等の所有権の取得であるかどうか。契約締結前の事前届出(売主・買主双方による連名届出が可能)であることです。
懲役刑を含む罰則が設けられていますので細心の注意を払って取引を行う必要がありそうです。
それではまた〜〜!
>>>その他法令上の制限一覧表はこちら
重要土地等調査法第13条第1項