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2025年4月の木造軸組構造基準(告示)が正式に公布

この記事では、2025年4月1日に施行される予定の木造耐震基準(2025年4月基準)について簡単・簡潔に解説を行っています。

この2025年4月からはじまる木造構造の新しいルールですが、2024年5月31日に国から正式に告示が公布されました。

新しい木造構造基準で変わるルールの概要は次のとおりです。

法令項目概要
施行令第43条柱の小径・荷重の実態に応じた柱の小径への算定への見直し
施行令第45条筋交・木材・鉄筋以外の材料やK型・多段筋かいなど、筋かいの対象を拡大
※国土交通大臣認定の取得が必要
施行令第46条壁量計算の見直し・荷重実態に応じた必要壁量の算定へ見直し
・準耐力壁の追加
・高耐力壁の追加
・ルート1計算により壁量計算不要
※小規模木造建築物(延べ面積300㎡以下)の木造構造基準の改正




これまでの経過

今回、2024年5月31日に正式に公布された告示(国土交通省告示第445号、第447号)によって、2025年4月1日の着工から適用される基準が明確化されましたが、ここまで来るのに紆余曲折ありました。

当初計画では多雪区域・多雪区域以外でもあっても積雪荷重を考慮する予定でした。

ですが、最終版では積雪荷重を考慮しない(住宅性能表示では従来どおり多雪区域を考慮)となっています。このブログでは国が基準案を示した段階で記事にまとめておりましたので過去経緯をご覧になりたい方はこちらの記事をご覧ください。

施行令第43条:柱の小径の見直し

告示:【H12告示第1349号】構造耐力上主要な部分である横架材の相互間の垂直距離に対する木造の柱の小径の割合等を定める件

柱の小径計算は、従来の横架材間の垂直距離に対して定められた表の割合(1/22〜1/33)で定められています(2025年3月31日まで)。

例えば、横架材間の距離が2,640㎜で、金属屋根、2階建ての1階部分の柱の小径は2,640㎜×1/30=88㎜以上となります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

新基準では、柱の小径の設計方法を次の3種類から選択することとなります。

  1. 算定式と有効細長比より柱の小径を求める方法
  2. 樹種等を選択し、算定式と有効細長比より柱の小径を求める方法
  3. 柱の小径別に柱の負担可能面積を求める方法

まずは❶で検討し、❶の検討で算出された小径よりも小さくした場合には❷及び❸で検討を行うような流れです。

また、計算が簡単にできるよう表計算ツールが公開されています。
なお、耐力壁が取り付く柱の場合には柱の小径確認は不要(告示第1349号第1ただし書)となる予定です。

ということで少し検討してみました。

設計条件はこちら。
・平屋
・延べ面積:100㎡
・階高:3m(横架材間の距離:2,640㎜)
・屋根:瓦(3寸勾配,軒出0.91m)
・外壁:窯業系サイディング
・太陽光発電設備:有
・多雪区域:有(1m)

旧基準新基準新基準
(住宅性能評価)
柱の小径d(㎜)888989
※公益財団法人日本住宅・木材技術センター 公表の表計算ツールを使用

・2階建てのうち1階部分の柱
・延べ面積:1階50㎡、2階50㎡
・階高:1階(3m,横架材間の距離:2,640㎜)、2階(2.8m,横架材間の距離:2,560㎜)
・屋根:瓦(3寸勾配,軒出0.91m)
・外壁:窯業系サイディング
・太陽光発電設備:有
・多雪区域:有(1m)

旧基準新基準新基準
(住宅性能評価)
2階 柱の小径d(㎜)868686
1階 柱の小径d(㎜)95107107
※公益財団法人日本住宅・木材技術センター 公表の表計算ツールを使用

上記の計算結果をご覧いただくと、2階建て計画の場合、1階部分の柱の小径が従来よりも大きくなることが分かります。従来は105㎜で計画していた設計者の方は120㎜の柱とする必要がありそうです。

施行令第46条:壁量計算の見直し

告示:木造の建築物の軸組の構造方法及び設置の基準を定める件(昭和56年建設省告示第1100号)

壁量計算(耐力壁の量と配置バランス)についての算定方法が変更となります。

具体的には、小径の計算同様に「建築物の荷重の実態に応じた算定式」を用いて計算するようになります。また、今回の改正から存在壁量として、準耐力壁(腰壁・垂れ壁)を加えることが可能となりました。
(注)令第46条の適用は、階数が2以上または延べ面積が50㎡超が対象。

さらに、壁倍率について現行は5倍が上限ですが、7倍が最大となります。
(注)バランス計算及び偏心率の計算及び仕口検証では、高耐力壁による仕口破断が先行しないように実態の倍率を用いて計算する必要があります。

こちらも同様に表計算ツールを用いて検証を行ってみました。条件は先ほどの柱の小径計算と同様です。

平屋の場合

旧基準新基準新基準
(住宅性能評価)
床面積に乗ずる数値
(㎝/㎡)
1525等級2 45
等級3 54
※公益財団法人日本住宅・木材技術センター 公表の表計算ツールを使用

旧基準に比べると新基準は1.7倍となっています。

2階建ての場合

旧基準新基準新基準
(住宅性能評価)
1階の床面積に乗ずる数値
(㎝/㎡)
3348等級2 74
等級3 89
2階の床面積に乗ずる数値
(㎝/㎡)
2132等級2 54
等級3 65
※公益財団法人日本住宅・木材技術センター 公表の表計算ツールを使用

旧基準に比べると新基準では1階部分で1.5倍となっています。

補足:長期優良住宅の耐震等級3(暫定措置)は廃止

2022年10月から長期優良住宅の認定基準の暫定装置として等級2以上から「耐震等級(倒壊等防止)3」に引き上げられましたが、これが2025年4月1日から従来の等級2に戻ります。

この暫定措置は先行して省エネ性能をZEH水準に引き上げたことに伴い、耐震性能に関して、新基準(新評価方法)の施行日前まで用いられることが決まっていたルールでした。

新しい評価基準がどのようになるのか不透明な部分があったので、最もグレードが高い「耐震等級3」が指定されていました。

2025年4月1日からの長期優良住宅の認定基準は「耐震等級2」以上となり戻ります。

補足:計算ツールについて

表計算及び早見表が日本住宅・木材技術センターホームページで公表されています。

表計算ツールはExcel(簡易版と住宅性能評価を検証できる多機能版)、早見表はPDFデータです。

表計算ツール・早見表

日本住宅・木材技術センターホームページ
▶︎https://www.howtec.or.jp/publics/index/411/
国土交通省
▶︎https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000166.html

 






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ABOUT US
cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士、省エネ適合性判定員など 【実績・現在】国と地方自治の元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は起業し、都市づくりに関わるコンサルタントや建築設計、執筆、大学院にて勉強・研究中。元サイト名は山好き建築士で”Yamaken”でした。