この記事では、「コンパクトシティとネットワーク型コンパクトシティ」の違いについて簡潔に解説しています。この記事を読むことで従来のコンパクトシティ政策と現在のコンパクトシティは何が違うのか理解することができるはずです。
こんにちは!! YamakenBlogです。
YamakenBlogでは、過去の建築・都市計画行政職員&コンサルの経験を生かして、難解な建築法規や都市計画法規などに関して解説を行っています。気に入って頂けたらブックマーク登録していただけますと嬉しいです。
従来型のコンパクトシティとこれまでの経緯
日本にコンパクトシティという概念が登場したのは都市再生特別措置法(2002年法律)が制定された翌年です。
国の諮問機関である「社会資本整備審議会」が2003年に取りまとめた「国際化、情報化、高齢化、人口減少等 21 世紀の新しい潮流に対応した 都市再生のあり方はいかにあるべきか」という」答申によります。
この答申書の中で、はじめて”コンパクト”という言葉が登場しました。
具体的には、「クルマに過度に依存した拡散型都市構造を、コンパクトで緑とオープンスペースの豊かな集約・修復保存型都市構造へと転換することが必要」という文言が記載されています。
この後、2006年に「新しい時代の都市計画はいかにあるべきか(第一答申)」が取りまとめられ、まちづくり三法(都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店舗立地法)が改正されています。
この際の目玉事業として、中心市街地活性化法(平成10年法律,所管:経済産業省)に基づく、中心市街地への大規模投資(市街地再開発)が盛に行われるようになります。
当時は、地方都市において駅前のシャッター街化や老舗百貨店の倒産、郊外への大規模商業施設の立地が大きな社会問題として取り出されていた時代です。
この際の中心市街地活性化基本計画を策定することができるのが基礎自治体で一つのエリアのみ(現在は複数OK)だったこともあり、市町内の”一つの中心拠点”への都市機能および人口の誘導がコンパクトシティという誤解を招くキッカケになったと考えています。
また、市街地再開発では事業計画の予測を誤り過剰な床供給やマーケティングがうまくいかなかったこともあり、不採算となった事案がメディアに取り上げられました。
コンパクトシティを批判する人達が増えていた時期でもあります。現在でも地方都市での市街地再開発やコンパクトシティを猛烈に批判する人がいますが、おそらく2006年のまちづくり三法改正前後の中心市街地活性化法に基づく市街地への再投資に対する誤解が大きいと思います。
実は、2007年には「新しい時代の都市計画はいかにあるべきか(第二次答申)」において、現代のネットワーク型コンパクトシティに通ずる概念は登場していたのですが、あまり知られることなく経過します。
その後、2011年に東日本大震災が発生し、都市のエネルギー効率に対する見方や急速な人口減少の予測などもあって、2013年には”都市再構築”という言葉が登場するようになります。そして、2014年に改正都市再生特別措置法が施行され、立地適正化計画が登場することになります。
ネットワーク型コンパクトシティと従来型の違い
言葉どおりなのですが、ネットワークという部分がポイントです。ネットワークとは公共交通等により拠点間を結ぶ意味を指しています。
ネットワーク部分に関して、自家用車ではダメなの?という意見もありますが、エネルギーや利便性、将来のインフラコストを踏まえると現時点では、公共交通以外に最適な移動機関はないのが実態です。なお、公共交通が脆弱な地域では自家用有償旅客運送やタクシーなどが担うケースもある。
また、立地適正化計画では、自治体毎・都市毎に異なる都市構造や市町村合併などの過去の経緯等を踏まえて将来都市構造を定めることになっています。
従来のコンパクトシティは、一拠点に人やモノを集めようとする政策だと誤解されていましたので、そうではないことを明確化するため、大小異なる拠点を複数定めているのがネットワーク型コンパクトシティ(多極ネットワーク型コンパクトシティ)の特徴となります。
戦後、大規模ニュータウンをはじめ、郊外に拠点が移動したり構成されたりした都市が多いため、現実的に実現可能なコンパクトシティを形成しようとする考えです。
とはいえ、厳格な郊外の開発抑制は法律上厳しい制限を定めることが難しいこともあり、”緩やかな誘導”にとどまっている点に対して、制限を厳しくすべきという議論もあります。
ネットワーク型コンパクトシティを登場して今年で10年目を迎え、多くに都市で計画策定後、5年以上を経過するようになってきています。
ですので、そろそろ中間的な効果の公表があるはずです。立地適正化計画の実効性としての評価を受けて、どのように舵取りが変わるのか注目されるところです。このブログでも、今後、どのようにコンパクトシティが変化していくのか記事にしてまとめていきたいと考えています。
それではまた〜〜!
*行政区域内の全ての住民を利便性の高いエリアへ移転を強制するものではない。