この記事では、大学や事務所、工場などに併設する寄宿舎や寮が「用途上不可分」に該当するのかどうか。または「用途上可分」に該当するのか解説を行っています。
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目次
結論:原則として可分(=分割または分筆)
用途上不可分に該当するかどうかは、それぞれの建物が独立した機能を有しないこと、加えて、それぞれ独立した機能のみでは建物用途として機能が充足していない場合です。
例えば、工場であれば、工場棟(生産施設部分)や管理棟(事務施設部分)、機械・電気室、守衛室、駐車場のような関係は用途上不可分の関係といいます。それぞれ単体のみでは「工場」として生産機能を有しませんが、建物群となることで工場として機能を発揮します。
また、大学の用途においても同様のことが言えて、大学の用途には、図書館や講堂、食堂、それぞれの学部の棟など複数の建物に分けられていることが一般的ですが、これらはそれぞれ独立していても大学として用途が発揮できませんが、建築群となれば大学用途となります。
住宅でいえば、住宅と車庫、倉庫のような関係性となります。
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それでは、「寄宿舎」や「寮」などの住宅は工場や大学に附属する施設として扱えるのかですが、寄宿舎や寮がないと工場や大学として機能しないかという点で見ると、そのようなことはないと考えるのが一般的です。言い換えると「用途上可分」といえます。
特定行政庁によって判断は異なりますが、基本的な考え方としては、寄宿舎や寮は大学や工場の附属施設として「用途上不可分」とみなすことはできないです。
つまり、工場に寄宿舎を併設する場合や、大学に寄宿舎を併設する場合は可分となるため、敷地を別ける必要があります。
工場では休憩施設・研修施設を附属施設とみることが可能(用途上不可分)
寄宿舎や寮に近い施設として、休憩施設や研修施設、仮眠施設などがありますが、物流施設や工場などの場合には、こうした附属施設を敷地内に併設することが多いです。
これらの中には、法律に基づいて休憩・仮眠施設を設けなければならない場合もあり、そうした場合には附属施設とすることができます。
一方で、研修施設の場合には特定多数(社員限定)のためのものであれば事務所(管理棟)としてみなせば工場の附属施設といえますが、不特定多数を受け入れるような研修施設や見学施設の場合には、機能が独立していると判断することもできるため工場の附属施設としてはみなせない可能性があります。
(注)最終的な判断は各特定行政庁となります。
用途上不可分といえるかどうか怪しい場合には、管理棟(不可分の関係にある施設)と複合用途にしたり、工場と当該建物を渡り廊下でつなぐ(一棟)ことで複合用途にすることがで建築することができます。
(注)既存建築物が違法建築物ではないこと(既存適格や既存不適格である証明が必要)。
工業専用地域では寄宿舎は建築禁止
工業専用地域では、工業利便を確保するために住宅系の用途の建築が禁止されています。
用途地域上、寄宿舎や寮、共同住宅などは建築することができないため、用途上可分・不可分以前の問題として建築を行うことができないことに注意が必要です。
工業地域では、旅館業法が適用される施設は建築不可
寄宿舎や寮は住宅系用途の建築物ですが、一部で宿泊料を徴収して食事や宿泊を提供する場合には旅館業法が適用されます。
旅館業法が適用されることで、ホテルや旅館、簡易宿所として扱われることとなります。
工業地域では旅館業法が適用される施設は建築することができませんので、用途上不可分であっても建築することができないです。