この記事では、令和6年12月25日(水)に発表が行われた令和6年一級建築士試験の結果について、簡単かつ分かりやすく考察しています。
2023年度(令和5年度)の結果はこちら
最終合格率は8.8%
最終合格率は前回の令和5年度試験に比べてマイナス1.1%となりました。製図試験に限ってみてみると、前回は、33.2%で今回は26.6%となり、前回よりも低い合格率となっています。一方で、学科試験については、前回が16.2%に対して今回は23.3%でした。
つまり、相対評価を実施し最終合格者数を調整している一級建築士試験では令和6年度試験では学科が若干優しく、製図試験の評価が厳しかったといえます。
なお、最終合格率8.8%という数字。例年10%前後だったところを見ると若干、製図試験での評価が合否の分かれ道だったということになります。
表には記載していませんが、年々最終合格率が下がっています。令和3年度より前は10〜12%前後でしたが、前回に続き4年連続10%未満ということですので今後も10%未満の合格率を継続していくのか、来年度(令和7年度)の傾もが気になるところです。
製図試験のランク別割合ですが、前回と今回を比較すると次のようになります。
試験年度 | Ⅰ (%) | Ⅱ (%) | Ⅲ (%) | Ⅳ (%) | 最終合格率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
❶令和4年度 | 33.0 | 6.1 | 32.4 | 28.5 | 9.9 |
❷令和5年度 | 33.2 | 2.1 | 22.1 | 42.6 | 9.9 |
❸令和6年度 | 26.6 | 1.5 | 23.9 | 48.0 | 8.8 |
❸-❶ | -6.6 | -0.6 | +1.8 | +6.4 | -1.1 |
*ランクの区分(ランクⅠのみ合格)
ランクⅠ:知識及び技能を有するもの
ランクⅡ:知識及び技能が不足しているもの
ランクⅢ:知識及び技能が著しく不足しているもの
ランクⅣ:設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの
今回の結果で特徴的なのは、前回に比べてランクⅣが多いという点です。ランクⅣとは、「設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの」のことです。
試験結果のプレス資料については、次のように記載がありましたので、建築基準法に照らして建物としたときに法適合していないものが多くあったものと推察できます。
受験者の答案の解答状況
ランクⅢ及びランクⅣに該当するものが多く、具体的には以下のようなものを挙げることができる。
・設計条件に関する基礎的な不適合:「階段の不成立」、「要求室・施設等の特記事項の不適合」等
・法令への重大な不適合:「道路高さ制限」、「延焼のおそれのある部分(延焼ライン)の明示と防火設備の設置」等
※https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/1k-gokaku20241225.files/1k-seizu-gokakuhappyo-20241225r.pdf
新制度受験者の割合が上昇
2020年度試験から開始された新制度による受験者の割合と人数が増加しています。
新制度では、建築系大学卒であれば、2年の実務経験不要で受験(ただし、資格登録には2年以上の実務経験が必要)することができるため、会社員や公務員よりも勉強時間を確保可能な学生の割合が増加していると推定されるところです。
合格者の3割が新制度によるもので、新制度合格者の大半が20代という結果です。
年度 | 合格者 | 合格者割合 |
---|---|---|
令和2年度 | 672人 | 17.7% |
令和3年度 | 930人 | 24.7% |
令和4年度 | 1,003人 | 28.9% |
令和5年度 | 1,125人 | 33.1% |
令和6年度 | 1,105人 | 36.7% |
大学別合格ランキング
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