「2050年には人口が減る色になっている。この土地は買わない方がいい?」
将来人口の地図を見たとき、いちばん迷うのがここだと思います。
先に答えると、将来人口250mメッシュは、土地や地域を比較する一次スクリーニングには使えます。しかし、1つのメッシュの色だけで土地の将来性や価格を決める資料ではありません。
見るべきなのは「何人減るか」だけではなく、周辺と比べて減り方がどう違うか、行政が居住や都市機能を誘導する区域か、駅・学校・医療・買物などの日常サービスが残りそうか、災害リスクを抱えていないか、実際の地価や取引がどう動いているかです。
この記事では、国土交通省が公表する令和2年国勢調査を基準とした250mメッシュ別将来推計人口を、QGISで読み解く手順と、土地選び・不動産調査・まちづくりの検討で誤読しないための判断軸を解説します。
この記事の要点
- 2020年を基準に、2025年から2070年まで5年ごとの人口が250mメッシュで試算されています。
- 2025年の値も実測ではなく試算値です。2020年の値も公表済み国勢調査メッシュと必ずしも一致しません。
- QGISでは人口数より、2020年を100とした増減率を作ると地域差を読みやすくなります。
- 人口メッシュは用途地域、居住誘導区域、災害リスク、交通、地価と重ねて初めて事業判断に近づきます。
- メッシュ境界は生活圏や町丁目の境界ではありません。1区画だけを切り出した断定は避けます。
将来人口250mメッシュで分かること
今回使うデータは、国土交通省国土政策局が令和2年国勢調査を基準に試算したものです。2020年と、2025年から2070年まで5年ごとの総人口、男女別人口、5歳階級別人口、年齢3区分などが収録されています。
推計方法はコーホート要因法です。出生、死亡、人口移動に仮定を置き、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」と「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」の推計値・仮定値を使っています。さらに、メッシュの合計が市区町村別の性・年齢階級別人口と一致するように調整されています。
つまり、これは「未来を言い当てた人口」ではありません。現在分かっている人口構成と一定の仮定を使い、地域差を比較できるように整えた試算です。この読み方がいちばん大切です。
| 確認したいこと | 主な属性 | 読み方 |
|---|---|---|
| 基準人口 | PTN_2020 | 令和2年国勢調査を基礎に調整された2020年人口 |
| 将来の総人口 | PTN_2030、PTN_2050など | 各年の男女計総人口(秘匿なし) |
| 年少人口 | PTA_20XX | 0〜14歳人口。学校・子育て需要を見る補助指標 |
| 生産年齢人口 | PTB_20XX | 15〜64歳人口。働き手・住宅需要を見る補助指標 |
| 高齢人口 | PTC_20XX | 65歳以上人口。医療・移動・生活支援需要を見る補助指標 |
| 行政区域 | SHICODE | 市区町村コード。2023年時点のコード |
Shape形式は項目数の制限から男女別属性を含みません。男女別まで分析する場合はGML等の収録項目を確認してください。総人口や年齢3区分を地図化するだけなら、Shape形式でも基本的な分析ができます。
QGISによる2020年から2050年の人口増減率の作成
まずは国土数値情報から対象都道府県のShape形式またはGeoJSON形式をダウンロードし、QGISへ読み込みます。全国データは大きいので、土地調査や自治体単位の分析なら都道府県別データの方が扱いやすいです。
- 国土数値情報の「250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」を開く。
- 対象都道府県と形式を選び、ダウンロードしたファイルを展開する。
- QGISの「レイヤ」→「レイヤを追加」からベクタレイヤを読み込む。
- 属性テーブルで
PTN_2020とPTN_2050があることを確認する。 - フィールド計算機で、2020年を100とする2050年人口指数を作る。
- レイヤプロパティの「シンボロジ」から「連続値による定義」を選び、人口指数を色分けする。
人口指数の式は次のようにします。2020年人口が0のメッシュは比較できないため、NULLにします。
CASE
WHEN "PTN_2020" > 0
THEN round(100.0 * "PTN_2050" / "PTN_2020", 1)
ELSE NULL
ENDたとえば人口指数が80なら、2020年を100としたとき2050年は80、つまり20%減の試算です。120なら20%増です。
色分けは「0〜50、50〜75、75〜100、100〜125、125以上」のように固定すると、別の市や別の年と比較しやすくなります。ただし、これは国が定めた評価区分ではなく、分析者が比較のために置く区分です。凡例には「分析上の区分」と書いておくと誤解がありません。
人口「数」と人口「指数」は別々に残します。
10人が20人になるメッシュは200ですが、地域全体の住宅需要を大きく変えるとは限りません。逆に1,000人が850人になるメッシュは85でも、生活サービスを支える人口規模は前者より大きいです。増減率だけ、人口数だけのどちらか一方に寄せないことがコツです。
QGISで見る東京都23区の将来人口
ここからは手順だけで終わらせず、東京都のGeoJSONを使って23区を実際に地図化します。国土数値情報から東京都分を取得し、市区町村コードが13101〜13123の8,493メッシュを抽出しました。QGIS-LTR 3.34.12で読み込み、座標参照系は元データどおりJGD2011(EPSG:6668)、色分けは2020年を100とした2050年人口指数です。
指数の分母が小さいメッシュは、わずかな人数差で色が極端になります。そこで、この図では2020年人口が10人以上のメッシュだけを人口指数で着色し、10人未満は灰色にしました。10人という線引きと色区分は、国の評価基準ではなく、私が今回の比較用に置いた分析条件です。

QGISの生の書き出しだけでも、都心部に濃い緑が集まり、東部や外周部に橙色が目立つことは分かります。ただし、区境も地名もないままでは、土地調査の会話に使いにくい。そこで区境、区名、凡例、23区合計を加えたのが次の分析図です。

23区計5.4%増の内側にある中央区124.7と江戸川区97.3
23区に属するメッシュを合計すると、2020年の973万3,276人に対し、2050年は1,026万520人。人口指数は105.4です。東京都心は将来も人口が増える——平均だけを見れば、そう読めます。
ところが区別では、中央区124.7、港区120.0、千代田区119.7に対し、葛飾区99.5、江戸川区97.3です。同じ23区内でも、2050年の人口が2020年を上回る区と下回る区に分かれます。さらに250mメッシュを見ると、人口増加率の高い区にも橙色の場所があり、区全体が横ばいの区にも濃い緑の場所があります。「東京だから増える」「この区だから安心」という大づかみな判断を、メッシュ地図は崩してくれます。

| 区 | 2020年人口 | 2050年人口 | 人口指数 | 2050年65歳以上割合 |
|---|---|---|---|---|
| 23区計 | 9,733,276 | 10,260,520 | 105.4 | 27.7% |
| 中央区 | 169,179 | 210,897 | 124.7 | 25.6% |
| 港区 | 260,486 | 312,556 | 120.0 | 24.3% |
| 千代田区 | 66,680 | 79,828 | 119.7 | 23.8% |
| 台東区 | 211,444 | 244,549 | 115.7 | 28.6% |
| 文京区 | 240,069 | 271,626 | 113.1 | 26.0% |
| 足立区 | 695,043 | 711,213 | 102.3 | 31.9% |
| 北区 | 355,213 | 358,782 | 101.0 | 28.0% |
| 練馬区 | 752,608 | 755,009 | 100.3 | 26.2% |
| 葛飾区 | 453,093 | 451,040 | 99.5 | 31.0% |
| 江戸川区 | 697,932 | 679,003 | 97.3 | 28.9% |
この区別値は、各250mメッシュの市区町村コードを使って人口を合計した記事上の集計です。国土数値情報では、市区町村境界をまたぐメッシュの帰属は原則としてメッシュ中心点で判定されます。したがって、東京都や各区が公表する区別人口推計と完全に一致するものではありません。比較条件をそろえて地域差を見るための集計、と捉えてください。
人口増加と高齢化の同時進行
もう一つ見落としやすいのが年齢構成です。23区計の人口は5.4%増える試算ですが、2050年の65歳以上割合は27.7%です。中央区は人口指数124.7でも65歳以上割合25.6%、港区も指数120.0で24.3%。一方、足立区は人口指数102.3でも31.9%、葛飾区は人口指数99.5で31.0%です。
人口総数の維持と、地域の年齢構成は同じ話ではありません。住宅の間取り、坂道や段差、医療・介護へのアクセス、バス路線、買物環境を考えるなら、総人口の色だけでなく、PTC_2050から65歳以上割合も作って重ねる必要があります。人口が増える場所でも、高齢者向けサービスの需要は増え得ます。
この地図で分かること・分からないこと
都心部と鉄道沿線らしき場所に増加メッシュが連なるようには見えます。ただし、この一枚だけで「鉄道があるから人口が増える」と因果関係までは断定できません。駅距離、用途地域、住宅供給、再開発、地形、災害リスクを重ね、別の説明が成り立たないかを確かめる必要があります。
- 区の平均と対象地周辺が同じ色か——区別グラフと250mメッシュを往復する。
- 増減率の分母は十分か——2020年人口と2050年人口を同時に確認する。
- 人口増加と高齢化を混同していないか——年齢3区分も計算する。
- 住宅地として使える場所か——用途地域、居住誘導区域、道路、災害リスクへ進む。
地図を眺めて終わるのではなく、平均から外れるメッシュを見つけ、なぜ違うのかを別レイヤで確かめる。QGISを土地調査に使う価値は、この「次の問い」を具体的な場所として拾える点にあります。
土地選びで重ねたい5つのレイヤ
人口が維持されるメッシュだから、その土地を買ってよい。ここまで一気に結論を進めてはいけません。人口メッシュは、次の資料へ進む入口として使います。
1.用途地域と居住誘導区域
用途地域は建てられる用途や規模を決め、居住誘導区域は都市が将来どこへ居住を誘導するのかを示します。人口が維持されるメッシュでも、市街化調整区域や工業専用地域なら住宅利用の前提が変わります。
なお、将来人口メッシュそのものは、建築できるかどうかを決める区域指定ではありません。建築・開発の可否は、都市計画図、立地適正化計画、建築基準法上の道路、自治体条例などを別に確認します。
2.駅・バス・医療・買物・学校
同じ人口減少率でも、駅や基幹バス、病院、スーパー、学校への距離によって暮らしやすさは違います。施設が「今ある」ことだけでなく、自治体の公共施設再編計画や地域公共交通計画も確認します。
3.洪水・津波・土砂災害などの災害リスク
人口が維持される中心部でも、浸水想定区域と重なることはあります。人口の集積と土地の安全性は別の軸です。ハザード情報は国のデータだけで終わらせず、自治体の最新ハザードマップ、防災指針、避難計画まで確認します。
4.地価公示・都道府県地価調査・実際の取引
人口と地価には関係がありますが、同じ動きをするとは限りません。再開発、駅前整備、供給不足、観光需要、産業立地など、人口以外の要因でも地価は動きます。不動産情報ライブラリで地価公示・地価調査・取引価格を確認し、人口推計との方向が一致するか、ずれているなら何が要因かを考えます。
5.現地と自治体計画
最後は現地です。空き家や空き地の増え方、道路、擁壁、商店の営業状況、歩行環境はメッシュの色から分かりません。都市計画マスタープラン、立地適正化計画、防災指針、公共施設等総合管理計画などを読み、行政がどこへ投資を続けるのかも照合します。
間違えやすい5つの境界
- 250mは生活圏ではありません。
格子状の集計単位なので、道路や河川、町丁目、学区で分かれるとは限りません。隣接する複数メッシュを一まとまりで見ます。 - 2025年は実績値ではありません。
このデータでは2020年が基準で、2025年以降は試算です。2025年国勢調査の実績と混同しないよう、図の注記に「R6国政局推計」と入れます。 - 2020年値も公表国勢調査メッシュと必ずしも一致しません。
性・年齢不詳の按分や、市区町村別人口に合わせる調整が行われているためです。国勢調査の公表値と混ぜる場合は、目的と処理の違いを明記します。 - 2055年以降は不確実性がさらに大きくなります。
社人研の地域別推計が2050年までのため、2055〜2070年は2050年推計の仮定値を延長して試算されています。遠い将来ほど、点の予測ではなく方向を見る資料として扱います。 - 人口減少と地価下落を因果関係として断定しません。
両者に相関が見えても、交通、災害、用途規制、産業、住宅供給など別の要因があります。人口は価格を説明する一要素です。
また、各250mメッシュが属する市区町村は、原則としてメッシュの中心点で判定されています。市境にかかるメッシュを市区町村別に集計するときは、面積按分された区域データではないことにも注意が必要です。
不動産事業者・設計者が使うときの確認順
市内全体で人口が維持・減少する帯を確認
対象地を含む複数メッシュの人口数と増減率を確認
用途地域、道路、居住誘導区域、自治体計画を確認
災害、生活サービス、地価・取引、現地を照合
仲介や仕入れなら、推計値を「将来も値上がりする」「人口が減るから売れない」と説明するのではなく、どのデータの、どの年次を、どの比較範囲で見たのかを資料化します。設計やまちづくりなら、総人口だけでなく年少人口・生産年齢人口・高齢人口を分け、計画する用途と結びつけます。
たとえば子育て施設なら0〜14歳人口、医療・移動支援なら65歳以上・75歳以上人口、賃貸住宅なら年齢構成に加えて世帯・雇用・供給状況が必要です。総人口だけを万能な需要指標にしないことです。
論点ごとの相談先
- 建築・開発の可否:自治体の建築指導・開発許可・都市計画担当、建築士
- 区域や都市政策の意味:自治体の都市計画・立地適正化計画担当
- 地価・担保・収益性:不動産鑑定士、金融機関、地域市場に詳しい宅建業者
- GISの加工・集計:GIS技術者、都市計画コンサルタント、統計解析に詳しい担当者
QGISで地図を作れることと、その土地を買う判断ができることは別です。地図は答えではなく、見落としていた問いを見つける道具です。人口減少が大きいのに地価が維持されている、人口が増えるのに居住誘導区域外である——こうした「ずれ」が見つかったところから、調査は面白くなります。
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一次資料・操作資料
- 国土交通省「メッシュ別将来人口推計」
- 令和2年国勢調査を基準としたメッシュ別将来推計人口の試算方法
- 国土数値情報「250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)」
- 不動産情報ライブラリ XKT013 将来推計人口250mメッシュAPI
- QGIS公式ドキュメント「フィールド計算機」
不動産情報ライブラリなら、ブラウザ上で将来推計人口250mメッシュを確認できます。広域をざっと見るだけならこちらで十分です。複数年の増減率を計算したい、自治体区域で集計したい、他のGISレイヤと重ねたい場合にQGISへ進むと無駄がありません。
QGISは無償で利用できます。まずは対象地の周辺だけを表示し、2020年人口、2050年人口、人口指数の3つを並べてみてください。色がきれいな地図を作ることより、何を比較し、どこから先は別資料で確認するのかを決める方が、土地調査ではずっと役に立ちます。










