延べ面積800㎡の店舗を計画している。以前と同じBEI 1.0以下で進めてよいのか。それとも、着工時期や確認申請の日付で新しい基準に変わるのか。2026年4月以降の中規模非住宅では、最初にここを確認しないと設備選定をやり直すことになります。
先に答えると、新築または増築・改築を行う非住宅部分が300㎡以上2,000㎡未満で、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する計画は、用途に応じてBEI 0.75、0.80または0.85以下が必要です。
BEIは一次エネルギー消費性能の指標で、数値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。省エネ適判は、所管行政庁または登録判定機関が行う省エネ性能の審査です。適用の基準日は着工日でも、建築確認の申請日でもなく、省エネ適判の申請日です。
主に、確認申請と省エネ適判を担当する建築士・設備設計者を対象に書いています。店舗・事務所・福祉施設・工場等を建てる建築主や、開発・建替え・取得・長期保有に関わる不動産事業者も、設計者へ伝える条件と将来の基準を確認できます。対象面積、用途別の数値、増改築・複合用途の扱い、申請前に確認しておくことを順に説明します。
この記事の要点
対象は、新築または増築・改築を行う非住宅部分が300㎡以上2,000㎡未満となる計画です。
新基準は2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する建築物へ適用されます。
BEIの上限は、工場等0.75、事務所等・ホテル等・百貨店等・学校等0.80、病院等・飲食店等・集会所等0.85です。
複数用途は各用途を一つずつ合否判定するのではなく、用途別の基準一次エネルギー消費量に係数を掛けた合計で建物全体を判定します。
確認申請の直前に設備だけで合わせるのではなく、基本設計で用途区分、外皮、設備容量、制御を同時に検討する方が手戻りを抑えられます。
300㎡以上2,000㎡未満で変わった基準
2025年4月1日から、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられました。今回の改正は、その適合義務の対象を増やす改正ではありません。すでに適合義務がある中規模非住宅について、合格に必要な一次エネルギー消費性能を引き上げた改正です。
根拠は、建築物省エネ法第10条です。同条は、建築主に対し、建築物の建築をするときは建築物エネルギー消費性能基準へ適合させるよう求めています。増築・改築では、その増築・改築部分が対象です。
建築主は、建築物の建築(エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。)をしようとするときは、当該建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。
建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律第10条第1項
具体的な水準は、建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令の別表で定められています。2026年4月1日の改正で、300㎡以上の非住宅部分にも、従来2,000㎡以上に適用されていた水準が広がりました。
| 新築・増改築部分の非住宅面積 | 用途 | 2026年4月以降の上限 | 従前の中規模水準 |
|---|---|---|---|
| 300㎡以上2,000㎡未満 | 工場等 | BEI 0.75 | BEI 1.00 |
| 同上 | 事務所等・ホテル等・百貨店等・学校等 | BEI 0.80 | BEI 1.00 |
| 同上 | 病院等・飲食店等・集会所等 | BEI 0.85 | BEI 1.00 |
| 2,000㎡以上 | 用途別 | 0.75・0.80・0.85 | 2024年4月から同水準 |
| 300㎡未満 | 非住宅 | BEI 1.00 | BEI 1.00 |
BEIは、設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値です。小さいほど省エネ性能が高くなります。BEI 0.80は、単純に『設備を20%小さくする』という意味ではありません。外皮、空調、換気、照明、給湯、昇降機、太陽光発電等の条件を入力し、計算結果として0.80以下にします。
中規模非住宅の新基準を3段階で判定
新築・増改築部分の非住宅面積
300㎡以上2,000㎡未満
省エネ適判申請が
2026年4月1日以降
工場0.75/事務所等0.80
病院・飲食店等0.85
着工日ではなく省エネ適判の申請日で判断
今回の基準引上げで間違えやすいのが日付です。2025年4月の全面適合義務化では着工日が大きな基準になりましたが、今回の中規模非住宅の引上げは、国土交通省資料が『2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する建築物』を対象と明記しています。
| 日付 | 新基準の判定に使うか | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| 省エネ適判の申請日 | 使う | 2026年4月1日以降なら引上げ後の基準 |
| 建築確認の申請日 | 直接の基準日ではない | 確認申請と適判の工程は連動するが、日付を混同しない |
| 確認済証の交付日 | 直接の基準日ではない | 適合性判定通知書を確認審査へ提出する工程を管理 |
| 工事着手日 | 今回の引上げの直接の基準日ではない | 2025年全面義務化の経過措置と混同しない |
施行日前に申請した計画でも、申請後に用途・外皮・設備を大きく変更し、計画変更や再申請が必要になる場合があります。そのとき旧基準で進められるかは、変更内容と手続の扱いを申請先の登録建築物エネルギー消費性能判定機関または所管行政庁へ確認します。ここは『確認検査機関が自由に旧基準を認める』という話ではありません。どの基準が適用され、どの手続が必要になるかという問題です。
新築・増改築・複合用途の扱い
面積は、完成後の建物全体だけを見て決めるわけではありません。新築は非住宅部分の床面積、増築・改築は増築・改築を行う部分の面積で該当する水準を選びます。国土交通省の設計者向けガイドも、2025年4月以降の増改築は増改築部分の規模に応じた水準を使うとしています。
| 計画例 | 考え方 | この記事の基準との関係 |
|---|---|---|
| 新築の事務所1,200㎡ | 非住宅部分1,200㎡ | 中規模。BEI 0.80以下 |
| 既存工場3,000㎡へ500㎡を増築 | 増築部分500㎡で水準を選ぶ | 中規模の工場等。BEI 0.75以下 |
| 既存店舗1,500㎡の設備改修のみ | 新築・増築・改築に当たるかを先に確認 | 単なる修繕・模様替えを面積だけで中規模増改築と扱わない |
| 共同住宅700㎡+店舗350㎡の新築 | 非住宅部分は店舗350㎡ | 店舗部分が中規模非住宅。住宅部分は住宅基準を別に確認 |
| 事務所200㎡+飲食店200㎡の新築 | 非住宅部分の合計は400㎡ | 中規模。複数用途の合算式で判定 |
ここでいう『改築』は、日常語のリフォームと同じではありません。建築基準法上の改築に当たるか、大規模の修繕・大規模の模様替えなのか、単なる設備更新なのかで手続が変わります。工事名称ではなく、既存部分をどこまで除却し、同様の建築物を建てるのかを工事内容から判断します。
また、常時外気に開放された部分、空調設備を設ける必要がない用途、仮設建築物等には別の適用除外があります。新基準の数値を見る前に、省エネ基準適合義務や省エネ適判そのものの対象かを確認してください。対象となる建築物は、関連記事「省エネ適合性判定が必要・不要となる建築物のまとめ」で説明しています。
複数用途は用途ごとの単独合否ではない
1階が飲食店、2階が事務所という建物では、飲食店0.85、事務所0.80を別々に判定するように見えます。しかし省令の判定は、各用途の設計一次エネルギー消費量の合計と、各用途の基準一次エネルギー消費量に用途別係数を掛けた値の合計を比べます。一方の用途が基準を少し上回っても、建物全体の合算で直ちに不適合とは限りません。
複数用途の簡単な計算イメージ
事務所の基準一次エネルギー消費量を100、飲食店を60と仮定します。
許容する設計一次エネルギー消費量の合計 = 100×0.80 + 60×0.85 = 131
両用途の設計一次エネルギー消費量の合計が131以下なら、合算式には適合します。
※100と60は式の読み方を示す仮定値です。実案件はWEBプログラム等の計算値で判定します。
ただし、合算できるからといって、ある用途の設備計画を後回しにしてよいわけではありません。用途ごとに空調、換気、照明、給湯の比重が違うため、どの設備がBEIを押し上げているかは用途別に確認します。飲食店なら換気・給湯、物販店舗なら空調・照明、事務所なら空調・照明と内部発熱が主要な検討対象になりやすいです。
基本設計から省エネ適判までの進め方
新基準は、確認申請の直前に設備表の数字を入れ替えるだけで安定して通せる水準ではありません。もちろん計画条件によりますが、300〜2,000㎡の建物は意匠・構造・設備の担当が分かれやすく、設備容量や天井内スペースが固まってから外皮を変えると、別の図書へ手戻りが波及します。
- 新築・増築・改築の別と対象面積を確定
確認申請の面積表と省エネ計算の対象範囲を一致させます。住宅・非住宅の複合建築物は部分を分けます。 - 省エネ計算上の用途区分を確定
建築基準法の用途名をそのまま当てはめず、室用途・標準室使用条件まで計算担当者と共有します。 - 基準となるBEIと申請予定日を工程表へ記載
0.75・0.80・0.85のどれか、省エネ適判をいつ申請するかを、建築主・設計・施工予定者の共通条件にします。 - 外皮と設備容量を同時に検討
断熱・日射遮蔽で熱負荷を下げ、過大な空調能力や換気量を避けます。設備の高効率化だけで合わせないようにします。 - 照明・換気・給湯・制御を用途別に詰める
人感・明るさ制御、送風機効率、給湯効率、配管保温など、用途ごとに効果の大きい項目から確認します。 - 図書間の数値を照合して適判申請
意匠図、設備図、機器表、計算入力、確認申請面積表の用途・面積・能力・台数が一致しているかを提出前に確認します。
設計を始める前に建築主へ確認すること
テナント用途と厨房・給湯・営業時間の想定、将来の用途変更余地、予算上限、設備更新の考え方です。『店舗予定』だけでは、飲食・物販・サービスで計算条件が大きく違います。
土地・建物の契約前なら、省エネ計算費だけでなく、基準適合に必要な外皮・設備費、受変電や機械室のスペース、適判期間を事業収支と工程へ入れます。
設備を高効率品へ替える前に確認すること
BEIが少し届かないとき、すぐ高価な高効率機器へ置き換えると、建築主には『省エネ基準は設備グレードを上げるだけの制度』に見えてしまいます。しかし国土交通省の設計者向けガイドは、熱負荷の軽減、設備容量の適正化、高効率化、省エネ制御の4方向を挙げています。
| 確認順 | 設計上の問い | 図書・担当 |
|---|---|---|
| 1 熱負荷 | 断熱、窓、日射遮蔽で冷暖房負荷を下げられないか | 外皮仕様・意匠設計・設備設計 |
| 2 容量 | 実際の人員・照明・外気量に対し空調や換気が過大でないか | 負荷計算・設備設計 |
| 3 効率 | 空調、給湯、照明を高効率機器へ変更した効果はどこに出るか | 機器表・メーカー資料 |
| 4 制御 | 不在・明るさ・CO2濃度等に応じた制御を計算へ反映できるか | 制御図・設備仕様 |
| 5 運用 | 計算条件と実際の営業時間・使い方が乖離しないか | 建築主・テナントとの確認 |
この順番には理由があります。外皮で負荷を下げれば、空調機の容量を小さくできることがあります。容量が適正なら、イニシャルコストと部分負荷時の無駄を同時に抑えられる場合があります。設備機器の型番だけで帳尻を合わせるより、建物として素直です。
一方で、外皮強化が常に最安とは限りません。用途、気候地域、窓面積、営業時間、内部発熱で効果は変わります。ここは法令本文から決まる話ではなく、計算結果と工事費を比べる設計判断です。省エネ計算担当者へ複数案のBEI差を出してもらい、建築主と費用・運用を比較します。
内容に応じて相談先を選ぶ
省エネ基準や計算方法に迷ったときは、国土交通省が公式ページで案内している省エネサポートセンターを利用できます。個別計画の省エネ適判手続や計画変更の扱いは、申請予定の登録建築物エネルギー消費性能判定機関または所管行政庁へ確認します。
| 迷っている内容 | 相談先 | 問い合わせ前に用意するもの |
|---|---|---|
| 制度、省エネ基準、計算方法、WEBプログラム | 省エネサポートセンター | 質問内容、用途、規模、使用した計算方法と該当画面 |
| 省エネ適判の申請手続、計画変更、複合用途・増改築の扱い | 申請予定の登録省エネ判定機関または所管行政庁 | 計画概要、面積表、用途構成、変更前後の図書 |
| 確認申請との工程、必要図書、適合性判定通知書の提出時期 | 指定確認検査機関または建築主事 | 確認申請工程、図書一覧、省エネ適判の予定 |
相談するときは、どの用途区分、面積、設備入力で迷っているのかを図面と計算結果で示した方が回答を得やすくなります。また、相談窓口の技術的な回答と、省エネ適判を行う機関の申請上の判断は同じものではありません。提出案件の扱いは申請先へ確認してください。
自治体独自の環境条例、建築物環境計画書、再生可能エネルギー設備の説明制度などが重なる地域もあります。それらは国のBEI基準とは別制度です。所管行政庁の建築物省エネ法窓口に加え、自治体の環境部局の制度も計画地ごとに確認します。
2030年度までにどこまで引き上げられるか
2026年4月の中規模非住宅基準は、国が示す2030年度の目標水準ではありません。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、住宅・建築物の省エネ基準を段階的に引き上げる方針を次のように示しています。
省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを遅くとも2030年度までに実施する。
第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)
国土交通省の建築主・設計者向け資料には、そのとき目指すBEIも掲載されています。2026年の法定基準と並べると、今回の引上げが中間段階であることが分かります。
| 規模・用途 | 2026年4月施行の法定基準 | 遅くとも2030年度までに目指す水準 |
|---|---|---|
| 大・中規模/工場等 | BEI 0.75 | BEI 0.60 |
| 大・中規模/事務所等・学校等 | BEI 0.80 | BEI 0.60 |
| 大・中規模/ホテル等・百貨店等 | BEI 0.80 | BEI 0.70 |
| 大・中規模/病院等・飲食店等・集会所等 | BEI 0.85 | BEI 0.70 |
| 小規模非住宅/300㎡未満 | BEI 1.00 | BEI 0.80 |
2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す
国土交通省編集協力「中規模非住宅建築物の省エネ基準が引上げられます!」
ここでいう『ZEB水準』は、建物の年間エネルギー収支をゼロにするZEBそのものを、すべての建物へ義務付ける意味ではありません。国資料が目標として示すBEI 0.60・0.70は、再生可能エネルギーによる削減を除いた一次エネルギー消費性能です。太陽光発電を載せて数値を合わせる前に、外皮、設備容量、機器効率、制御で建物側の消費量を下げる水準と読む必要があります。
決定済みの基準と、今後決まる事項を分ける
2026年4月1日施行のBEI 0.75・0.80・0.85は、省令に定められた現行の法定基準です。対象となる中規模非住宅は、この数値で省エネ適判を受けます。
一方、BEI 0.60・0.70・0.80は、国資料に示された2030年度までの目標水準です。2026年8月17日時点の国土交通省『建築物省エネ法 最新の法令』には、次段階の施行日や経過措置を定める改正省令は掲載されていません。申請日、着工日、計画変更の扱いは、今後公布される改正内容で確認する必要があります。
設計実務では、現行基準に適合するかという審査上の判断と、将来の基準強化を見込んでどこまで性能を上げるかという事業判断を分けます。特に長期保有する建物や、基本設計から申請まで数年かかる計画は、BEI 0.60・0.70を代替案として計算し、初期費用、光熱費、設備更新、将来改修の可能性を建築主へ示しておくと判断しやすくなります。
まとめ:面積・申請日・用途を先に固定
中規模非住宅の新基準で最初に決めるのは、高効率機器の型番ではありません。新築・増改築部分の非住宅面積、省エネ適判の申請日、計算上の用途区分です。この3点で基準水準を確定してから、外皮、設備容量、効率、制御を検討します。
300㎡以上2,000㎡未満だから一律BEI 0.80、という理解も誤りです。工場等は0.75、病院等・飲食店等・集会所等は0.85で、複数用途は合算式です。数値だけ覚えるより、何の面積を測り、いつ申請し、どの用途係数を使うかを図面と工程表へ残してください。
国資料が示す2030年度までの目標は、用途に応じてBEI 0.60・0.70、小規模非住宅は0.80です。ただし、2026年8月時点では、次の施行日や経過措置まで決まった法定基準ではありません。現行基準への適合と、将来を見据えた性能選択を分けて建築主へ説明してください。
一次資料
- e-Gov:建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律
- e-Gov:建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令(2026年4月1日施行版)
- 国土交通省:基準省令の一部改正省令の公布について(2024年10月16日事務連絡)
- 国土交通省:中規模非住宅建築物の省エネ設計かんたんガイド
- 国土交通省編集協力:建築主向け・中規模非住宅建築物の省エネ基準が引上げられます!
- 資源エネルギー庁:第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)
- 国土交通省:建築物省エネ法 最新の法令
- 国土交通省:建築物省エネ法第10条・省エネ基準適合義務の対象拡大
- 国土交通省:建築物省エネ法・お問い合わせ窓口
- 改正建築物省エネ法オンライン講座:Q&A・相談窓口
- 省エネサポートセンター:公式ページ
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この記事は2026年8月17日時点の法令・国土交通省資料を確認して作成しています。個別計画では用途、工事内容、申請時期、自治体制度により必要な手続が変わるため、設計図書を示して申請先へ確認してください。











