結論:防火区画貫通部は、認定番号が書いてあるだけでは足りません。壁・床、貫通する管やケーブル、開口寸法、処理材、施工方向が認定・告示の条件と一致し、隠蔽前写真で施工結果を追えるところまで確認します。
こんにちは!やまけんです。設備図に「区画貫通処理:認定品」と書き、認定番号の一覧を添えたので法適合の説明は終わり、と思っていないでしょうか。
防火区画は、火災を一定の範囲にとどめるための壁や床です。そこへ設備を通すと穴ができます。この穴をどの管・ケーブルと処理材で、どのようにふさいだかが区画貫通部の性能を左右します。
しかも完成後に天井やシャフトで隠れる部分が多く、完了検査の時点で認定番号だけを照合しても、認定どおり施工されたか分からないことがあります。設計、施工、監理を一続きにして考える必要があります。
区画に開けた穴を、適合する組合せでふさぐ
最初に三つの適合方法を選ぶ
給水管、配電管その他の管が防火区画等を貫通するとき、令第129条の2の4第1項第7号は、管の構造について三つの方法を示しています。どれを採用しているかが分からないまま、認定番号だけを集めるのは順序が逆です。
七 給水管、配電管その他の管が、第百十二条第二十項の準耐火構造の防火区画、第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁(ハにおいて「防火区画等」という。)を貫通する場合においては、これらの管の構造は、次のイからハまでのいずれかに適合するものとすること。 ただし、一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で建築物の他の部分と区画されたパイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中にある部分については、この限りでない。
建築基準法施行令第129条の2の4第1項第7号(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-22/法令基準日:2026-08-22)
イ 給水管、配電管その他の管の貫通する部分及び当該貫通する部分からそれぞれ両側に一メートル以内の距離にある部分を不燃材料で造ること。
ロ 給水管、配電管その他の管の外径が、当該管の用途、材質その他の事項に応じて国土交通大臣が定める数値未満であること。
ハ 防火区画等を貫通する管に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後二十分間(第百十二条第一項若しくは第四項から第六項まで、同条第七項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)、同条第十項(同条第八項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場合又は同条第九項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十八項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁若しくは防火床にあつては一時間、第百十四条第一項の界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五分間)防火区画等の加熱側の反対側に火炎を出す原因となる亀裂その他の損傷を生じないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものであること。
「認定品」だけが答えではなく、イ・ロ・ハのいずれか一つで適合を示します
選択した方法によって必要資料が変わります。イなら管材の不燃性と1m範囲、ロなら告示が定める管種・寸法・壁床構造、ハなら認定書と施工要領書の適用条件を確認します。
認定番号が同じでも使えないことがある
大臣認定は、番号だけに性能が付いているのではありません。試験・評価を受けた構造方法の組合せに対して認定されています。少なくとも次の項目を現場条件と照合します。
- 貫通する壁・床の種別、厚さ、耐火性能
- 管、電線管、ケーブルの材質・外径・本数
- 開口寸法、管相互の間隔、壁端・床端からの離隔
- スリーブ、充填材、耐火材、支持材の製品と使用量
- 壁貫通・床貫通の別、片側施工・両側施工の別
- 施工できる向き、支持間隔、分岐・継手の位置
確認申請で大臣認定書の写しを省略できる運用がありますが、これは審査側が認定データベースを参照できるための書類簡素化です。設計者・施工者が認定条件を確認しなくてよい、という制度ではありません。
実際の不適合は「番号の有無」では防げなかった
2016年に国土交通省が公表した排水管更新工事の事例では、共同住宅2物件で、防火区画を貫通する配管が法令の仕様と異なる状態で施工され、違反が確認されました。さらに同様のおそれがある31物件について、特定行政庁へ調査が依頼されています。
この事例から全ての原因を一般化はできません。ただ、防火区画貫通部は改修でも新しい穴が開き、見えなくなり、建物をまたいで同じ施工が繰り返されます。そのため、「認定品を使う」という指示だけでは、品質保証の弱い工事になりやすいのです。
2025年告示509号で耐火二層管の仕様が追加
2025年7月4日、令和7年国土交通省告示第509号が公布・施行され、耐火二層管を用いる告示仕様が見直されました。国土交通省の技術的助言は、適合確認で管の外径だけを見るのではなく、外管の肉厚・外径、内管の肉厚と外径、貫通する防火区画等の構造方法を確認するよう示しています。
耐火二層管という製品名だけで告示適合になるわけではありません。管と壁・床の組合せを確認する点は、大臣認定を使う場合と共通しています。
隙間の埋め戻しは別に確認
令第112条第20項は、給水管等と準耐火構造の防火区画との隙間を、モルタルその他の不燃材料で埋めるよう定めています。告示仕様や大臣認定の製品を使っていても、管と区画の周囲に空隙が残ればよいわけではありません。
20 給水管、配電管その他の管が第一項、第四項から第六項まで若しくは第十八項の規定による一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第七項若しくは第十項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第十一項本文若しくは第十六項本文の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は同項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、袖壁その他これらに類するもの(以下この条において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画との隙間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。
建築基準法施行令第112条第20項(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-22/法令基準日:2026-08-22)
国住指第143号は、耐火二層管と防火区画等との隙間をモルタル等の不燃材料で埋め戻すこと、ロックウール等の落下が懸念される場合は不燃材の蓋などで落下防止を行うことを示しています。また、せっこうボード上へ直接モルタルを施工するなど、材料の組合せによって壁・床の強度を下げないよう注意を求めています。
どの記録なら性能を後から追えるか
| 段階 | 確認内容 | 残す資料 |
|---|---|---|
| 設計 | 区画の種別、貫通位置、イ・ロ・ハの適合方法 | 防火区画図、設備図、貫通部リスト、認定条件照合表 |
| 施工前 | 製品、管径、壁床構造、開口・離隔、施工者 | 施工要領書、材料承認、納入仕様書、施工図 |
| 隠蔽前 | 充填量、隙間、支持、表示、施工方向 | 全景・近景・認定表示を含む写真、検査記録 |
| 完了検査 | 図面と施工記録の対応、未処理・変更箇所 | 貫通部番号付き写真台帳、変更図、是正記録 |
施工写真は、耐火材だけを大きく撮るのではなく、どの階・区画・設備系統の貫通部か分かる全景と、管径・製品表示・充填状態が分かる近景を組にします。設計変更や現場で管種が変わった場合は、認定番号をそのまま流用せず、変更後の条件で再照合します。
既存建築物の改修での調べ方
- 確認申請図・完了検査図・防火区画図から、区画線と貫通位置を特定する
- 天井点検口やシャフトから現況を確認し、未処理、脱落、後施工の配管を記録する
- 認定表示や製品形状から推測だけで決めず、竣工図・施工台帳・メーカー資料を照合する
- 認定条件を確認できない箇所は、現行の告示仕様または認定構造で是正できるか設計する
- 所管特定行政庁、確認申請先、消防設備との関係を整理して工事範囲を決める
あとから配管を一本追加しただけでも、防火区画には新しい穴が開きます。建築工事だけでなく、テナント改修、空調更新、通信配線の追加でも同じです。防火区画図と貫通部台帳を建物管理へ引き継ぎ、追加工事のたびに更新する仕組みまで作っておくと、将来の調査がかなり楽になります。
まとめ
防火区画貫通部は、認定番号の有無ではなく、採用した法適合の方法と実際の施工が一致しているかで判断します。不燃材料1m、告示仕様、大臣認定のどれを使うかを明示し、壁・床、管、処理材、施工方向、隙間処理を確認してください。
設計図に貫通部番号を付け、隠蔽前写真と認定条件照合表を同じ番号で保存する。この地味な作業が、完了検査だけでなく、改修・定期報告・将来の不具合調査で効いてきます。
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一次資料:e-Gov 建築基準法施行令/国住指第143号(告示509号・技術的助言)/国土交通省・防火区画貫通処理の解説/国土交通省・区画貫通部の不適合施工














