2026年4月、建築確認でBIM図面審査が始まりました。
名前だけを見ると、BIMモデルそのものを審査し、確認申請が自動化される仕組みにも見えます。ところが、国のガイドラインを読むと、審査に使うPDF、形状を見るIFC、設計者が提出する誓約書は、それぞれ別の役割を持っています。この違いを曖昧にしたまま進めると、補正のときにPDFとモデルのどちらを直したのか分からなくなります。
BIMを使ったから審査が自動になるわけでも、今までと何も変わらないわけでもありません。何が省略され、設計者側には何が残るのか。制度の仕組みから見ていきます。
PDF・IFC・誓約書は何を受け持つのか
| 提出物 | 制度上の役割 |
|---|---|
| PDF図書 | 法令上「明示すべき事項」を載せ、審査者が建築基準関係規定への適合を審査する |
| IFCデータ | 審査者が3D形状を把握・理解するために閲覧する。IFCだけにある情報で法適合を判断しない |
| 誓約書・申告書 | 図書を適切な方法で作成したことを設計者が誓約し、入出力基準に応じた整合性確認の一部省略を支える |
国土交通省のBIM図面審査ガイドライン(初版)は、審査者がPDF形式の図書を用いて審査し、IFCを形状の把握・理解に利用すると明記しています。図書に明示されていない情報、つまりIFCだけに含まれる情報に基づく判断は行いません。
三の二 建築物等情報モデル(プログラムにより建築物その他の工作物又はその部分の外部及び内部の形状を示す三次元の情報を当該建築物その他の工作物又はその部分の名称、面積その他の情報と関連付けて記録した設計に係る電磁的記録をいう。)に記録された情報の内容を出力することにより作成した図書を申請書の一部として提出する方法による確認の申請(以下「建築物等情報モデル図書申請」という。)を行う場合にあつては、当該図書が適切な方法により作成されていることを誓約する書面(以下「誓約書」という。)
建築基準法施行規則第1条の3第1項第1号三の二(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-24/法令基準日:2026-08-24)
施行規則は、建築物等情報モデルから図書を作る申請方法を定義し、誓約書を添付書類に加えました。ここで誓約するのは、建築物が法令に適合しているという結論そのものではなく、提出する図書を適切な方法で作成したことです。
省略できるのは法適合審査ではなく、一部の整合性確認
整合性確認とは、平面図と立面図、面積表と各階平面図など、複数箇所に記載された形状・位置・数値・文字情報が食い違っていないかを確かめる審査です。BIM図面審査では、入出力基準により整合性が確保される項目を、設計者の申告に基づいて一部省略できます。
| 確認すること | BIM図面審査での扱い |
|---|---|
| PDFに必要事項が明示されているか | 従来どおり確認 |
| 建築基準関係規定に適合するか | 従来どおり審査 |
| 申告対象の図面間で形状・位置・数値等が整合するか | 入出力基準と申告書に応じて一部省略可能 |
| IFCだけに含まれる情報 | 法適合判断の根拠にしない |
| 申告対象外の図書、2D加筆、別ソフトで作った図書 | 従来どおり整合性を確認 |
審査者と設計者が個別に話し合って、省略範囲を自由に広げることは認められていません。省略できる対象は入出力基準と申告書で決まります。BIMを使ったという事実だけでは省略の根拠になりません。
PDFとIFCは同じBIMデータから同時に出す
- BIMデータを作成する
- 同じ状態からPDFとIFCを出力する
- 誓約書・申告書で対象範囲を示す
- PDFを審査し、IFCを形状把握に使う
原則は、PDFとIFCを同一のBIMデータから同時に書き出すことです。PDFを出した後にモデルだけ直し、別の状態からIFCを出せば、形状理解の参考として使えません。受付時にIFCへ不備があれば、再提出を協議するか、BIM図面審査ではなく通常の電子申請として扱うことになります。
補正でも同じです。指摘に応じて平面図を直したときは、その変更が立面図、断面図、面積、建具、IFCへどう及ぶかを確認します。BIMの利点は一つの変更を関連図書へ反映できることですが、2D加筆や外部計算書まで自動で整うとは限りません。
設計者の誓約は「ソフトが保証した」という意味ではない
誓約書・申告書は、ソフトウェア会社が法適合を保証する書類ではありません。代表となる設計者が、入出力基準を満たすソフトウェアを使い、基準に沿ってデータを作り、PDFとIFCを書き出し、申告した事項が整合していると申告します。
- オブジェクトの属性が空欄または誤入力なら、表や図面にも誤りが出ます。
- 2Dで上書きした寸法・文字は、モデルや別図面と自動連携しないことがあります。
- 意匠・構造・設備を別モデル・別ソフトで作る場合は、申告できる範囲を先に分ける必要があります。
- 計算書やBIM由来でないPDFは、従来どおり内容と整合性を確認します。
そのため、BIM担当者だけに出力を任せるのではなく、設計者が「どの情報をモデルへ持たせ、どこを2D加筆し、何を申告対象にしたか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
全ての審査機関へ同じ方法で出せるわけではない
BIM図面審査は任意の申請方法です。申請先が対応しているか、利用する電子申請受付システムと確認申請用CDE、事前相談の要否、構造適合性判定・省エネ適合性判定とのデータ受渡しを、案件の初期に確認します。対応機関はBIM審査ポータルサイトで案内されています。
2026年8月24日時点では、全国のBIM図面審査件数や、通常申請に比べ何日短縮したかを示す統一的な実績集計は確認できません。国の資料が示す「期間短縮」は期待される効果であり、どの案件でも短くなるという実績値ではありません。初期はテンプレート整備、属性入力、IFC変換、申告範囲の確認に時間がかかる案件もあります。
2029年のBIMデータ審査とは分けて考える
| 段階 | 審査の中心 |
|---|---|
| 現在のBIM図面審査 | PDF図書を審査し、IFCで形状理解を助ける |
| 2029年春予定のBIMデータ審査 | IFCデータ自体を審査対象にする次の段階。詳細は今後の制度整備による |
今の制度を、将来予定されているBIMデータ審査と混同しないことが大切です。現在は「BIMモデルを提出すれば図面が要らない」制度ではなく、「BIMから作った図面を、整合性確認の一部省略と3D参照を使って審査する」制度です。
実務で最初に決めたいこと
- 申請先・適判機関・省エネ判定機関がBIM図面審査に対応するか
- どのBIMソフト、テンプレート、IFC変換設定を使うか
- 意匠・構造・設備のうち、どこまで同じモデルで管理するか
- 2D加筆、外部計算書、別ソフト図書をどこへ残すか
- 補正時にPDF・IFC・申告書の版をどう揃えるか
制度の効果は、3Dモデルを提出したこと自体ではなく、設計中から同じ情報を使い続け、申請時だけの図面修正を減らせるかで決まります。審査者の確認を減らす代わりに、設計者側の情報管理が曖昧でよいという制度ではありません。
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本記事は2026年8月24日時点の建築基準法施行規則、国土交通省BIM図面審査ガイドライン(初版)、ICBA公表情報を基に作成しています。













