確認申請の床面積は59.07㎡なのに、省エネ計算では59.08㎡になる。同じ図面を使っているのに、どうして数字がずれるのか。小さな差ですが、申請書の整合を確認する側では地味に気になるところです。
国土交通省は2026年8月、この端数処理をそろえる変更を公表しました。2026年10月版の住宅の技術情報・省エネ計算プログラムでは、主たる居室・その他の居室・非居室の床面積について、行政庁等における建築基準法上の床面積の端数の扱いに合わせます。
ただし、「省エネ計算の床面積が建築基準法の床面積とすべて一致する」変更ではありません。この違いを押さえないと、数字が同じにならないたびに修正を繰り返すことになります。
住宅省エネ計算だけに残っていた端数処理の差
これまでの住宅の省エネ計算では、床面積の小数点以下3桁目を四捨五入し、小数点以下2桁で入力する扱いでした。一方、確認申請の床面積は、昭和41年の建築指導課長通達を根拠に小数点以下3桁目を切り捨てる運用が基本です。ただし、国交省資料にも「各行政庁によって取り扱いが異なる場合あり」と明記されています。
| 59.078㎡を扱う筆者作成例 | 2026年9月までの住宅省エネ計算 | 2026年10月版への更新後 |
|---|---|---|
| 確認申請側 3桁目切り捨ての行政庁 | 59.07㎡ | 59.07㎡ |
| 省エネ計算側 | 59.08㎡ 3桁目を四捨五入 | 59.07㎡ 確認申請側の端数処理に合わせる |
対象は、住宅の外皮・一次エネルギー消費量計算で使う主たる居室、その他の居室、非居室の床面積です。国交省の技術情報更新に伴う計算上の変更であり、建築基準法上の床面積の定義そのものを改正する話ではありません。
2026年10月版への更新と年末までの経過措置
新しい端数処理は、2026年10月版の技術情報・計算プログラムの更新で反映される予定です。これは法律の施行日ではなく、計算に使う技術情報の版が変わる日です。移行期に計算をやり直す案件への配慮として、2026年12月末までに申請する場合は、従来の端数処理でも差し支えないとされています。
10月1日をまたぐ案件では、どの版のプログラム・計算方法を使ったかを残してください。
申請図書の数値だけ直し、計算書や入力根拠が旧方法のままになる方が困ります。経過措置を使うなら、その旨を設計図書の注記や計算記録で説明できる状態にしておくのが実務的です。
また、国交省のQ&Aは、確認申請の床面積について行政庁ごとに取り扱いが異なる場合があることにも触れています。提出先の運用が一般的な切り捨てと違う場合は、その確認申請側の取り扱いを前提に省エネ計算をそろえる、という読み方になります。
変更後も一致しない二つの床面積
ここが見落としやすい点です。端数処理をそろえても、省エネ計算には建築基準法の床面積とは異なる考え方があります。
- 吹抜け等に仮想床を設けて外皮や居室面積を扱う場合
- 主たる居室・その他の居室・非居室の区分と、確認申請の用途別床面積の分け方が一致しない場合
- 面積を部分ごとに丸めたのか、丸めずに合計してから処理したのかが異なる場合
- 増改築などで、省エネ適合性判定の対象範囲と確認申請上の建築物全体が異なる場合
つまり、今回そろうのは「同じ数値を最後にどう丸めるか」です。何を床として数えるか、どこまでを計算対象にするかまで同じになるわけではありません。
部分ごとの切り捨てで生じる合計値の差
国のBIM図面審査ガイドラインにある例が分かりやすいです。100.0092㎡の床を3区画に分け、各区画を先に100.00㎡へ切り捨てて足すと合計は300.00㎡です。ところが、丸める前の3区画を合計してから3桁目を切り捨てると300.02㎡になります。
このため同ガイドラインは、求積図では丸める前の値で部分面積を合計し、最後に端数処理する考え方を示しています。各面積表の合計と申請書の面積に丸め方による差が出る場合は、申請図書に説明を残すことも求めています。
一方、新潟市の確認申請注意事項では、床面積は小数点以下3桁目を切り捨てる一方、建蔽率・容積率などの比率は端数を切り上げる扱いが明記されています。「確認申請は全部切り捨て」と覚えるのも危険です。値の種類ごとに根拠を分けてください。
申請図書に残すべき計算履歴
審査側が確認したいのは、最終的な小数第2位だけではありません。元の求積値、合計する順序、端数処理、使用したプログラム版が追えることです。
今回の変更で、説明しなくてよい差は減ります。ただ、省エネ計算と確認申請は目的も対象範囲も異なる制度です。数字が違えば即ミス、同じなら整合している、とは言えません。まず「定義の差」なのか「対象範囲の差」なのか「丸め方の差」なのかを切り分ける。ここまでできれば、審査機関とのやり取りもかなり短くなるはずです。
一次資料:国土交通省「床面積の端数処理の変更について」(2026年8月5日)/改正建築物省エネ法オンライン講座Q&A・質問38(2026年8月6日版)/BIM図面審査ガイドライン別紙2(第2版)/新潟市・確認申請等に関する注意事項
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それでは以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。













