能登半島地震で2000年以降の木造住宅は安全だった?大破・倒壊2.0%の読み方

能登半島地震の木造住宅の大破・倒壊率を1981年以前39.3%、1981年から2000年16.9%、2000年以降2.0%で比較した図
倒壊0.7%だけで安全を読まない。2000年以降は大破8棟と倒壊・崩壊4棟の合計2.0%です。

「2000年以降の木造住宅なら、能登半島地震でもほぼ倒壊しなかった」。国土交通省の最終報告を数字だけで読むと、そう言いたくなります。

ですが、数字を見ていて私が引っかかったのは、0.7%よりも、その隣にある大破1.3%です。倒壊しなかった8棟も、売買や改修の判断では「無事」とまとめられません。大破と倒壊・崩壊を合わせると12棟、608棟中2.0%です。

しかも、この2.0%は全国の木造住宅を無作為に調べた数字ではありません。被害が大きかった輪島市・珠洲市・穴水町の一部地域を調べた結果です。では、大破まで含めた数字から何が言えて、何までは言えないのでしょうか。中古住宅を買う方、不動産を扱う方、設計者の順に、判断材料を一段ずつ掘り下げます。


「大破・倒壊2.0%」を含めた被害の読み方

国土交通省の調査対象となった木造建築物は4,909棟です。建築年代別の集計は次のとおりでした。

建築年代調査棟数無被害軽微〜中破大破倒壊・崩壊大破・倒壊計
1981年以前3,408426(12.5%)1,644(48.2%)676(19.8%)662(19.4%)1,338(39.3%)
1981〜2000年893237(26.5%)505(56.6%)103(11.5%)48(5.4%)151(16.9%)
2000年以降608398(65.5%)198(32.6%)8(1.3%)4(0.7%)12(2.0%)

出典:国土交通省「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会 最終とりまとめ」(2025年12月)をもとに作成。「大破・倒壊計」は同資料の棟数から筆者が合算し、小数第2位を四捨五入しました。

年代が新しくなるほど、大破・倒壊の割合がはっきり下がっています。ここはぼかす必要がありません。現行基準の効果は十分に見えています。

ただし、倒壊しなければ安全だった、ではありません。
大破は、柱や耐力壁のひび割れなどにより構造耐力の著しい低下が認められる被害区分です。人命を守る「倒壊防止」の評価と、住み続けられるか、補修して売買できるかという評価は分けて考える必要があります。

一方で、調査地域は地震動、地盤変状、津波、火災の影響が均一ではありません。震度計の近距離でも観測された揺れに差があり、同じ町内だから同じ入力だったとは限らないのです。建築年代ごとの差は重要ですが、それだけを原因と決めつけることもできません。

2000年以降に倒壊した4棟の共通点

「4棟も倒れた」と見るか、「608棟中4棟だけ」と見るか。私は、件数よりも4棟の中身を見る方が大切だと思います。

  • 図面を確認できた2棟は、いずれも耐力壁の配置バランスが基準を満たしていませんでした。そのうち1棟は壁量も不足していました。
  • 図面のない1棟は、築約100年の住宅を2000年以降に移築した建物で、壁が非常に少ない状態でした。
  • 残る1棟は、調査資料だけでは倒壊原因を特定できていません。

ここから言えるのは、「2000年以降」という確認済証や登記上の年月だけでは足りない、ということです。新しい基準の時代に建てられていても、壁量、壁の配置、接合部が実際にどう設計・施工されたかで結果は変わります。移築や大規模な増改築があれば、建築年の見方も単純ではありません。

瓦屋根だったから倒壊した、とも断定できません。
2000年以降の倒壊4棟はいずれも瓦屋根でしたが、少なくとも3棟には壁の不足・偏りや移築という別の説明があります。瓦屋根群405棟の倒壊は4棟、非瓦屋根群203棟では0棟でしたが、この集計だけで屋根材の因果関係までは証明できません。

耐震等級別に見る能登半島地震の揺れ

同じK-NET穴水の観測記録を、壁配置を均整とした一般的な2階建て木造モデルへ入力した比較です。耐震等級だけを変えたとき、建物の変形がどう変わるのかを見てください。表示は揺れ方の傾向を比べるもので、実寸変形や個別住宅の安全判定ではありません。

K-NET穴水観測点の加速度時刻歴 2024年能登半島地震本震の観測加速度と再生位置を示します。
等級1基準耐力 ×1.00
待機中 1階2階
弱い側の最大変形 NS
屋根の端の最大移動
等級1との比較
壁配置の仮定
等級2基準耐力 ×1.25
待機中 1階2階
弱い側の最大変形 NS
屋根の端の最大移動
等級1との比較
壁配置の仮定
等級3基準耐力 ×1.50
待機中 1階2階
弱い側の最大変形 NS
屋根の端の最大移動
等級1との比較
壁配置の仮定

観測記録 防災科学技術研究所K-NET穴水ISK005で観測した2024年1月1日16時10分の地表加速度です。南北NSと東西EWは別々の水平成分で、方向を切り替えると最大変形も変わります。100Hzの原記録を計算へ入力し、画面では主要動47.6秒を12秒に縮めて再生しています。

計算モデル 2階建てを各階に質量が集まる2質点せん断モデルとし、地震動を次の運動方程式へ入力しています。

Mは各階質量(1階20,000kg、2階15,000kg)、Cは減衰、f(u)は木造の非線形な復元力、ag(t)は観測加速度です。階高3.0m、初期2モードの減衰5%、0.01秒刻みで応答を計算。1/120rad時の基準耐力を1階0.20(m1+m2)g、2階0.27m2gとし、耐震等級1・2・3は復元力を1.00・1.25・1.50倍にしています。条件は小檜山雅之(日本建築学会構造系論文集605号、2006年)の2階建て木造モデルを基礎にした近似です。

「1/15超(大変形域)」の意味 「復元しない」「倒壊した」という判定ではなく、法令上の合否線でもありません。計算自体は1/15を超えても続けていますが、この簡易モデルには接合部の破断、耐力低下、P-Δ効果などがないため、復元の可否や倒壊を判断せず、精密な分母表示を打ち切っています。再生終了時の住宅図は、再生区間の最終時刻です。「最大変形を比較」を押すと、各等級の最大変形を右側へ方向をそろえて表示します。いずれも地震後の残留姿勢を示すものではありません。

「均整(端部変形+5%)」の意味 完全な無偏心ではなく、一般住宅にもある小さな壁配置の偏りを仮定し、各階の中央の変形に5%を加えた弱い側の端部変形を表示しています。実住宅の偏心率や四分割法を計算した結果ではありません。

等級間の比較 屋根端部の最大移動は、等級1を100%として相対値と低減率も表示しています。「最大変形を比較」の住宅図は、比較しやすいよう屋根の移動方向を右側へそろえます。各等級で最大となった時刻は同じとは限らないため、同一時刻の変形量を横並びにした値ではありません。

耐震等級と耐震改修を評価する際の小さな母数

性能表示を受けた住宅では、耐震等級2が12棟、耐震等級3が19棟あり、どちらも大破・倒壊はありませんでした。長期優良住宅19棟も同じです。最終報告は、耐震等級を高くすることの有効性が確認されたと整理しています。

ただし、母数はそれぞれ12棟、19棟、19棟です。これらの属性が重複している可能性もあるため、単純に50棟と足してはいけません。能登で良い結果だったことは大切な材料ですが、「耐震等級3なら、どの地盤・どの施工状態でも無被害」とまでは読めないでしょう。

旧耐震基準の住宅を補助制度で耐震改修した38棟では、無被害13棟、小破〜中破22棟、大破3棟、倒壊0棟でした。こちらも無作為比較ではなく小さな標本ですが、古い住宅を「古いから仕方ない」で終わらせず、改修する意味を支える結果です。

中古住宅で確認すべき建築年・図面・現況

法令上の基準時点を整理すると、1981年6月と2000年6月は重要な区切りです。ただし、不動産実務で確認したいのは年だけではありません。

  • 確認済証・検査済証:いつ、どの計画で確認と完了検査を受けたか
  • 構造図・壁量計算・仕様書:壁量、四分割法による配置、接合部の仕様が確認できるか
  • 現況:増改築、耐力壁の撤去、大きな開口、基礎や接合部の劣化がないか
  • 敷地条件:液状化、斜面、擁壁、地盤変状など建物以外のリスクがないか

宅建業者の方は、建築年を広告上の安心材料だけにしないことです。一般の方は、インスペクションで見える劣化と、耐震診断で検討する構造安全性を同じものだと思わないこと。建築士は、図面が残らない住宅ほど現況調査と調査限界の説明が重要になります。

能登最終報告から得られる結論

能登半島地震の結果は、2000年以降の木造住宅について、現行基準が倒壊防止に有効だったことをかなり強く示しています。そこは安心材料です。ただ、私なら0.7%だけを切り取って「ほぼ安全」とは説明しません。

まず見るべきは大破・倒壊2.0%です。そのうえで倒壊4棟を図面と現況まで追うと、基準への適合内容や建物履歴がなお重要だったことが分かります。「倒れなかった」と「そのまま住み続けられた」を一つの数字で扱うのは、少し雑かなと思います。

1981〜2000年の住宅は、大破・倒壊が16.9%でした。2000年以降の2.0%と比べると、こちらは見過ごしにくい差です。中古住宅の売買では、築年のラベルで止まらず、次に図面、現況、改修履歴へ進む。結局、この順番が大切です。

一次資料:国土交通省・能登半島地震における建築物構造被害の原因分析最終とりまとめ(PDF)。調査範囲・標本数・原因分析の限界を含めて確認しています。


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それでは以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。


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cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆、エンジニア/