在学中受験で建築士不足は解ける?2026年建築士法改正の射程

建築士試験の入口が卒業後から在学中へ、実務7年から受験2年と免許4年へ変わる関係図
在学中受験と、学歴要件なし経路の2年受験・4年免許を分けて示します。

2018年の建築士法改正で、大学卒業後すぐに一級建築士試験を受けられるようになりました。当時の記事で、私は「暫く経過を見てみないと何とも言えない」と書いています。

その後、受験者は約1割増えたと国土交通省が国会で説明しました。それでも、一級建築士の約4割が60歳以上です。そこで2026年7月31日に公布された改正建築士法(令和8年法律第74号)は、受験の時点を卒業後から在学中へ、学歴要件のない人が二級・木造建築士試験を受けるまでの実務経験を7年から2年へ前倒しします。

入口は確かに広がります。ただし、試験を早く受けられることと、建築士として仕事を続けられることは同じではありません。今回は改正内容を紹介するだけでなく、今回の緩和が建築士不足のどこに効き、どこには届かないのかを考えます。


卒業後受験から在学中受験へ

2026年8月28日時点の現行法では、指定科目を修めて「卒業した者」が一級建築士試験を受けられます。

学校教育法による大学若しくは高等専門学校、旧大学令による大学又は旧専門学校令による専門学校において、国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者(当該科目を修めて同法による専門職大学の前期課程を修了した者を含む。)

建築士法第14条第1号(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-28/法令基準日:2026-08-28)

改正法では、試験年度の末日までに卒業見込みで、指定建築科目の単位を修得している学生も受験可能になります。大学だけではなく、高校等から二級・木造建築士を目指す場合にも同様の入口が設けられます。

ここで注意したいのは、受験と免許登録の違いです。在学中に試験へ合格しても、その場で一級建築士として設計できるわけではありません。卒業と必要な実務経験を経て、免許登録を受ける段階が残ります。

現行法でも、二級建築士の資格を使って一級建築士の免許を受ける場合と、学歴要件なしで二級・木造建築士の免許を受ける場合には、次の実務経験が登録要件になっています。

二級建築士として設計その他の国土交通省令で定める実務の経験を四年以上有する者
建築実務の経験を七年以上有する者

建築士法第4条第2項第4号・第4項第4号(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-28/法令基準日:2026-08-28)

スマートフォンでは、表を横へ動かすと改正法施行後まで比較できます。

資格段階2026年8月28日時点改正法施行後
一級建築士受験指定科目を修めて大学等を卒業、二級建築士、国土交通大臣認定等現行要件に加え、年度末までの卒業見込みと必要単位の取得を満たす在学生も受験可能
免許登録試験合格に加え、大学卒は実務2年、3年制短大は3年、2年制短大・高専は4年、二級建築士は二級として4年等学校卒業ルートは原則維持。在学中合格者も卒業と所定の実務が必要。二級ルートは、高校の指定科目卒業後の通算実務6年以上又は通算実務8年以上で、そのうち二級として2年以上等へ柔軟化
二級・木造建築士受験指定科目を修めて大学・高校等を卒業。学歴要件なしは建築実務7年年度末までの卒業見込みと必要単位の取得を満たす在学生を追加。学歴要件なしは建築実務2年
免許登録試験合格に加え、大学・短大・高専は実務なし、高校は卒業後2年、学歴要件なしは建築実務7年等学校卒業ルートは原則維持。在学中合格者は卒業が必要。学歴要件なしは通算実務4年となり、受験まで2年と免許まで4年を分ける
建築士法第4条・第14条・第15条、国土交通省の現行制度表令和8年法律第74号の成立法・概要から主要経路を整理。「等」には大臣・知事認定や指定単位数に応じた経路があります。細目と施行日は今後の政省令等で確定します。

学歴なしの7年から2年・4年へ

指定科目の学歴がない人が二級・木造建築士を目指す場合、現行法では建築実務7年が受験資格です。

建築実務の経験を七年以上有する者

建築士法第15条第3号(e-Gov法令API Version 2取得:2026-08-28/法令基準日:2026-08-28)

改正後は、実務2年で受験でき、免許には通算4年の実務経験が必要になります。単純に7年が2年へ短縮されるのではなく、受験まで2年、免許まで4年に分け直す制度です。

二級建築士試験又は木造建築士試験を受けるために必要とされる実務の経験の期間について、現行の7年から2年に短縮する。

国土交通省「建築士法の一部を改正する法律 要綱」(令和8年法律第74号/2026年8月28日確認)

将来施行条文は2026年8月28日時点のe-Gov法令APIで現行本文として取得できないため、改正後の要件は国土交通省の成立法、要綱、新旧対照表で確認しています。今、受験を申し込む人は現行の試験案内で判断してください。

建築士不足のどこに効くのか

国土交通省資料では、所属する一級建築士のうち60歳以上の割合は、2008年の約12%から2021年には約43%へ上がっています。別の検討資料では、2024年も約4割とされています。人口千人当たりの所属建築士数は、2017年の1.11人から2047年に0.66人となる見込みです。

前回の2018年改正後、受験者数が約1割増えたことは、受験の時期を前倒しする効果が一定程度あったと見る材料です。今回も、学生が就職直後に試験勉強と仕事を同時に抱えるより、学校教育との連続性を保ったまま挑める点は大きいと思います。

一方、国会質疑では、改正によって建築士を何人増やすかという定量目標を示すのは困難だと国土交通省が答えています。日本建築学会からは、在学中受験で大学の学業がおろそかにならないよう教育機関の意見を聴くべきだとの要望も紹介されました。

改正が直接変えるもの改正だけでは変わらないもの
受験できる時期実務の質と指導体制
学歴要件なしの人の待機年数長時間労働・報酬・定着
二級から一級への一部経路地域ごとの業務需要と人材偏在
建築設備士の受験・登録時点資格取得後に担う責任
資格の入口と、働き続けられる環境は分けて考える必要があります。

つまり、この改正は「建築士不足を解決する法律」というより、資格取得までの時間的な詰まりを一つ減らす法律です。合格者が免許登録へ進み、設計や工事監理の仕事を続けられるかは、教育、実務経験の質、処遇、地域の受け皿まで見なければ判断できません。

施行時期と今後の観測指標

資格関係の改正は、2026年7月31日の公布日から3年以内に政令で定める日から施行されます。遅くとも2029年7月末頃までという法定期限ですが、2026年8月28日時点では具体的な施行日も、最初に対象となる試験年度も公表されていません。2026年度試験から直ちに在学中受験へ変わる、という意味ではありません。中央建築士審査会では試験内容のあり方も検討されます。

  • 政令で定まる施行日と、初めて対象になる試験年度
  • 最終学年・必要単位の確認方法
  • 在学中受験者の合格率と卒業後の免許登録率
  • 学歴要件なし経路の受験者・登録者数
  • 20代・30代の所属建築士数と地域偏在
  • 資格取得後の離職率や設計・工事監理業務への定着

受験者数だけ増えても、登録や就業へつながらなければ不足解消とはいえません。数年後に今回の改正を評価するときは、合格者数だけでなく、免許登録と実務への定着まで追う必要があります。

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まとめです。2026年7月31日に公布された改正法は、学生の在学中受験、学歴要件なしで二級・木造建築士を目指す人の2年受験・4年免許、二級から一級への一部経路の短縮、建築設備士の登録制度を盛り込みました。入口は広がりますが、施行日は今後の政令で決まり、資格者の定着まで自動的に解決するわけではありません。受験を考える方は、現行の試験案内と将来制度を分けて確認してください。


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ABOUT US
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YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆、エンジニア/