この記事で使う統計情報は、国土交通省が2025年5月に実施した「自動二輪車等駐車場に関する地方公共団体アンケート」(回答162自治体)と、2024年3月末時点の自動二輪車駐車場・附置義務条例の整理です。アンケートでは、回答自治体の約77%が自動二輪車駐車場の需給状況を「不明」としています。
では、マンションを新築・増築するとき、バイク駐車場は全国一律で設置義務になるのでしょうか。2026年4月に「共同住宅」が政令の特定用途へ加わり、9月14日には国の関係省庁会議も開かれます。
全国一律の自動的な義務ではありません。国の駐車場法は地方公共団体が条例で義務を定められる仕組みで、対象地域、規模、台数、車種は地域の条例・指導要綱で変わります。共同住宅の政令追加は条例化できる範囲を明確に広げましたが、それだけで全マンションに台数義務が生じるわけではありません。
こんにちは、Yamakenです。マンション計画では、自動車、自動二輪車、原付、自転車の置場を同じ『駐車場』として考えると、担当条例も寸法も手続も混線します。国の法令、自治体の条例、開発指導、既存駐車場の転用という4つの経路を分けて整理します。
そもそも、なぜ駐車場法ができたのか
駐車場法が制定されたのは1957年(昭和32年)です。国土交通省の制度史によると、昭和30年代に入り、自動車の保有台数と交通量が増え、路上駐車が道路交通を妨げるようになりました。路上駐車を規制するだけでなく、道路の外にも駐車施設を整備する必要が生じたことが出発点です。
この法律は、都市における自動車の駐車のための施設の整備に関し必要な事項を定めることにより、道路交通の円滑化を図り、もつて公衆の利便に資するとともに、都市の機能の維持及び増進に寄与することを目的とする。
駐車場法第1条(e-Gov法令API Version 2取得:2026-09-11/法令基準日:2026-09-11)
制定時の柱は、駐車場整備地区の指定、路外駐車場の整備促進、大規模建築物への駐車施設の附置、構造・設備・管理水準の確保でした。ただし、国が全国一律の必要台数を直接決める制度にはしませんでした。1958年の施行通達も、まず地域の駐車需要を調査し、駐車場整備地区を指定した地方公共団体が附置義務条例を制定する流れを示しています。交通量や土地利用が都市ごとに違うため、国法を土台に自治体が具体条件を決める設計です。
当初は、占有面積が小さいとして自動二輪車と軽自動車が対象外でした。その後、1962年に軽自動車、1991年に駐車場整備計画や対象区域の拡充、2006年に自動二輪車が法律の対象へ加わり、同時に標準駐車場条例が自治体へ通知されました。2006年改正も全国一律の台数義務ではなく、自治体が条例で自動二輪車駐車場の附置を義務づけられるようにしたものです。その延長線上に、2026年の「共同住宅」の特定用途追加があります。
国法と自治体条例は、どうつながるのか
国法は、制度の目的、対象となる車両、地域や建築物の枠組み、構造・管理基準を置きます。そのうえで駐車場法20条1項は、一定の地域・建築物について、地方公共団体が附置義務を条例で定められる根拠を置いています。条文の主語は地方公共団体で、結論も「定めることができる」です。
地方公共団体は、駐車場整備地区内又は商業地域内若しくは近隣商業地域内において、延べ面積が二千平方メートル以上で条例で定める規模以上の建築物を新築し、延べ面積が当該規模以上の建築物について増築をし、又は建築物の延べ面積が当該規模以上となる増築をしようとする者に対し、条例で、その建築物又はその建築物の敷地内に自動車の駐車のための施設(以下「駐車施設」という。)を設けなければならない旨を定めることができる。
駐車場法第20条第1項(e-Gov法令API Version 2取得:2026-09-11/法令基準日:2026-09-11)
国が決めたのは、自治体が条例をつくれる範囲です。建築主に直接かかる具体的な義務は、自治体が条例を制定して初めて生じます。したがって最初に見るのは国法だけではなく、敷地の地方公共団体に現行の附置義務条例があるか、計画が対象地域・規模・用途に当たるかです。同じ共同住宅でも、市が違えば必要台数や緩和条件が変わります。
2026年4月、共同住宅が特定用途に入った意味
駐車場法施行令18条は、駐車需要を生じさせる程度が大きい『特定用途』を列挙します。2026年4月1日施行の改正で、末尾に共同住宅が加わりました。
法第二十条第一項の自動車の駐車需要を生じさせる程度の大きい用途で政令で定めるものは、劇場、映画館、演芸場、観覧場、放送用スタジオ、公会堂、集会場、展示場、結婚式場、斎場、旅館、ホテル、料理店、飲食店、待合、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、舞踏場、遊技場、ボーリング場、体育館、百貨店その他の店舗、事務所、病院、卸売市場、倉庫、工場及び共同住宅とする。
駐車場法施行令第18条(e-Gov法令API Version 2取得:2026-09-11/法令基準日:2026-09-11)
共同住宅が特定用途になったことで、地方公共団体は法20条の枠組みを使って、共同住宅を対象とする条例をより組み立てやすくなりました。ただし、政令は必要台数を直接決めていません。条例が未制定なら政令の列挙だけで義務は発生せず、条例があっても適用範囲と経過措置を読む必要があります。
なお、ここでいう自動車の範囲と、原動機付自転車・新基準原付の扱いは同一ではありません。自治体によっては自転車等駐車場の条例や開発指導で別に扱います。『バイク』という日常語だけで台数表を読まないことが大切です。
11都市でも、同じ条件ではない
国土交通省の2024年3月時点の整理では、駐車場法に基づく条例で自動二輪車の附置義務を定めていたのは11都市でした。塩竈、横浜、川崎、大阪、さいたま、川越、京都、神戸、福岡、那覇、千葉です。これは『全国で11都市しか対策していない』という意味ではありません。
| 整備・確認の経路 | 根拠 | 計画時に見ること |
|---|---|---|
| 駐車場法に基づく附置義務 | 駐車場法20条と自治体条例 | 対象地域、用途、床面積、台数算定、隔地・緩和、経過措置 |
| 法に基づかない条例・開発指導 | 自治体独自の条例、指導要綱 | 共同住宅の戸数、ワンルーム、開発規模、自転車・原付との区分 |
| 既存自動車駐車場の転用 | 自治体の認定・運用 | 余剰判定、車路、出入口、安全、転用後の自動車台数 |
| 公共用地・自転車駐車場での受入れ | 管理条例・運用 | 受入可能車種、排気量、時間、料金、寸法 |
11都市以外にも、駐車場法に基づかない条例や開発時の指導で二輪車置場を促す自治体があります。たとえば横浜市には駐車場条例に加えて共同住宅等を扱う建築基準条例があり、2026年の改正では適用除外や距離・需要に応じた仕組みも更新されました。都市名だけでなく、最新の条文と施行日まで確認しなければなりません。
需給不明77%が示す、供給の手前の問題
2025年5月に行われた地方公共団体アンケートは162自治体が回答しました。回答全体の7割強が自動二輪車需要を把握しておらず、需給状況について約77%が『不明』と回答しています。これは『77%の自治体で不足している』という数字ではありません。足りるか足りないかを判断する基礎データがない、という結果です。
二輪車関係団体は要望の9割が東京、神奈川、大阪、千葉、埼玉、愛知、兵庫、福岡、京都、広島の10都府県に集中すると説明しています。一方で自治体側の認識は地域差が大きい。全国平均の不足を一つの数字で断定するより、駅・繁華街・集合住宅など利用目的ごとに需要を測る必要があります。
国は2026年9月14日の第4回関係省庁連絡会議で、東京都特別区・政令市との意見交換結果や今後の進め方を議論する予定です。会議は非公開で、資料と議事概要は後日公表予定です。この記事の公開時点では、会議予定だけで条例や必要台数が変わった事実はありません。
結論―確認するのは法令名より、地域・用途・車種
マンションのバイク駐車場は、2026年4月の政令改正後も全国一律の自動義務ではありません。国法は条例化の根拠を置き、実際の義務は自治体が定めます。さらに、駐車場法以外の条例・開発指導や、自転車等駐車場のルールが重なる場合があります。
設計初期に確認したいのは次の5点です。
- 敷地の自治体にある駐車場条例、建築関係条例、開発指導要綱の最新版と施行日。
- 対象地域、新築・増築等の行為、共同住宅の戸数・床面積、用途が基準に当たるか。
- 自動二輪車、原付、新基準原付、自転車の定義と、それぞれの台数算定。
- 車路、出入口、駐車ますの寸法、安全設備、隔地・転用・需要に応じた緩和の要件。
- 自治体の駐車場・交通担当と建築指導担当への事前協議、確認申請での扱い。
確認検査機関へ相談する場合も、地域政策や条例運用の最終的な確認先は自治体です。平面計画が固まってから必要台数に気づくと、住戸、植栽、ゴミ置場、避難動線へ連鎖します。法令名を知るだけで終えず、敷地ごとの台数表と協議窓口まで落とし込むのが実務的です。
出典:国土交通省 第4回関係省庁連絡会議の開催案内、関係省庁連絡会議資料、駐車場法の改正等の経緯、駐車場法の考え方(全体像)、1958年「駐車場法の施行について」、自動二輪車等の駐車対策、e-Gov法令API Version 2(駐車場法・同施行令)、横浜市駐車場条例の概要。確認日2026年9月11日。















