リフォーム受注5兆円でも住宅は減少?2026年度第1四半期の内訳

住宅と非住宅の改修現場を背景に、右下からヘルメット姿の黒猫『やまけんちゃん』が覗く建築スケッチ
住宅と非住宅の改修・設備更新を描いた街並みに、ヘルメットと図面を持つ『やまけんちゃん』が登場する建築誌風イラストです。

2026年度第1四半期のリフォーム・リニューアル受注高は5兆427億円、前年同期比22.8%増でした。この数字だけなら、住宅リフォームも勢いよく伸びたように見えます。実際はどうなのでしょうか。

内訳は逆方向です。住宅は1兆807億円で7.6%減り、非住宅は3兆9,619億円で34.9%増えました。総額の約78.6%を非住宅が占めるため、全体の22.8%増は住宅市場の温度を表していません。

こんにちは、Yamakenです。『市場が5兆円を超えた』という見出しは分かりやすい一方で、住宅の建築主、管理組合、リフォーム会社が判断に使うには粗すぎます。国土交通省が2026年9月10日に公表した四半期調査を、住宅と非住宅、発注者、工事目的、そして統計の限界まで分けて読みます。


5兆427億円の内側は、住宅と非住宅で逆

受注高合計5兆427億円前年同期比 +22.8%
住宅1兆807億円前年同期比 -7.6%
非住宅3兆9,619億円前年同期比 +34.9%

合計に占める割合を公表値から計算すると、住宅は約21.4%、非住宅は約78.6%です。大きい方の非住宅が3割超伸びたため、住宅の減少を打ち消して総額が増えました。したがって『リフォーム市場が22.8%伸びた』を、そのまま戸建て・マンション改修の需要増と置き換えることはできません。

第1四半期住宅非住宅住宅と非住宅の見え方
2022年度9,100億円1兆8,927億円住宅は1兆円弱、非住宅は2兆円弱
2023年度1兆1,471億円2兆3,037億円ともに前年より増加
2024年度1兆1,966億円2兆6,214億円非住宅の比重が上昇
2025年度1兆1,698億円2兆9,371億円住宅は頭打ち、非住宅は増加
2026年度1兆807億円3兆9,619億円住宅は減少、非住宅は大幅増

5年の第1四半期だけを並べても、2026年度の特徴は非住宅の跳ね上がりです。ただし、これは同じ四半期同士の名目受注額の比較です。年間着地や実質工事量を示す表ではありません。

住宅の減少はどこで起きたか

住宅では、改装・改修工事が8,052億円で9.7%減、維持・修理工事が2,280億円で1.2%減でした。発注者別では個人が7,327億円で0.7%減にとどまる一方、管理組合は1,476億円で36.2%減です。用途・構造別でもコンクリート系構造の共同住宅が3,883億円で19.8%減でした。

個人発注はほぼ横ばい7,327億円、前年同期比0.7%減。住宅全体の7.6%減より下げ幅は小さく、戸建てを含む個人需要だけで住宅市場を説明することもできません。
管理組合の受注高は大きく減少1,476億円、36.2%減。大型修繕の受注時期で四半期値が振れやすいため、1期だけで中長期需要の消失とは判断できません。

工事目的の推定件数では、住宅の『劣化や壊れた部位の更新・修繕』が158万3,823件で6.8%減る一方、『省エネルギー対策』は10万9,399件で4.9%増えました。住宅全体が減ったから、すべての目的が同じ割合で減ったわけではありません。

非住宅を押し上げた民間企業と設備更新

非住宅は、増築工事が2,399億円で148.3%増、一部改築が748億円で38.8%増、改装・改修と維持・修理を合わせて3兆6,472億円で30.9%増でした。発注者別では民間企業等が3兆1,390億円で40.4%増、公共が7,105億円で15.9%増です。

業種別では、建築工事業が1兆1,007億円で12.1%増、電気・機械器具設置工事業が9,878億円で37.4%増でした。用途・構造別ではコンクリート系構造の事務所が6,273億円で60.4%増、鉄骨造の生産施設が5,518億円で17.5%増です。設備更新、事務所、生産施設など複数の列が増えています。

工事目的の推定件数でも、非住宅の『劣化や壊れた部位の更新・修繕』は96万6,560件で27.6%増、『省エネルギー対策』は10万5,736件で78.2%増でした。金額と件数の両方で増加が見えますが、後者は複数回答を含む推定件数です。1件の工事が複数の目的へ数えられる点には注意が必要です。

この統計で「工事量」まで言えない理由

この調査は、建設業許可業者5,000者を対象に、元請けとして受注した工事を集計したものです。大規模事業者は全数、それ以外は無作為抽出で、回答から市場全体を復元推計します。実際に回答した全社の単純合計でも、着工・完成した床面積でもありません。

この統計で言えること対象範囲における名目受注高の方向、住宅・非住宅や工事種類、発注者、目的別の推計構成。前年同期との比較。
この統計だけでは言えないこと物価を除いた実質工事量、利益率、受注残の消化時期、地域別需要、今後3四半期を含む年度着地。

表1系は企業が答えた受注件数・受注高から復元します。表2系は各月最初の2工事と全大規模工事の個票を、表1系の合計に合うよう比率を乗じて復元するため、表の系列間は完全一致しません。また金額は時価であり、資材費や人件費の上昇を除いた実質値ではありません。

私なら経営判断に使うとき、まず住宅・非住宅を分け、次に自社に近い発注者と工事種類を見ます。そのうえで、翌四半期以降、受注残、見積単価、粗利、地域の相談件数を重ねます。総額だけを営業計画へ置くより、ずっと誤読が減ります。

結論―総額より、自分の市場に近い列を見る

2026年度第1四半期の5兆427億円は、住宅リフォームが一様に活況という数字ではありません。住宅は7.6%減り、非住宅は34.9%増え、全体を押し上げました。住宅では管理組合と共同住宅の減少が目立ち、非住宅では民間企業、設備系、事務所・生産施設の増加が見えます。

ただし、四半期の名目受注額は市場の一断面です。『5兆円』『22.8%増』で止めず、自分が受注する建物、発注者、工事種類の列まで下りる。その読み方なら、強い数字と弱い数字が同時に出た今回の統計を、実務へ無理なくつなげられます。

出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(令和8年度第1四半期受注分)」、建築物リフォーム・リニューアル調査 公表資料。確認日2026年9月11日。割合は公表値からYamakenBlog算出。

古いビルに、次の価値を。既存ビルの線画と、国交省のインパクト改修モデル調査を紹介する表紙。
2026年度建設投資81.47兆円を価格・工事量・分野構成に分けて読む図
既存住宅販売量指数125.0が実数や前年比25%を意味しないことを示す図


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ABOUT US
cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆、エンジニア/