【原動機とは?】原動機の使用に関する建築基準法制限の分かりやすい解説

今回は、『原動機』の使用にあたり建築基準法において制限を受ける内容についての解説です。

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
Yamakenブログでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を日々、発信しています。

原動機の使用制限というのがいまいち理解できないというのが建築士や不動産を生業とされている方の疑問ではないでしょうか。正直なところ、私もこの原動機の制限については『つまり何なのか』分からなくて、建築行政を担当していた頃は、日々勉強していました。

今はこうしてブログを通じて建築や都市計画に関する豆知識を発信できるまでに至っています。
原動機について、どういった考えのもと制限されているのか自分でも改めて理解できるように書いています。

私同様に悩まれている方の手助けとなれば幸いです。

それでは早速、法律等でどのように規定されているか、そこから見ていきましょう!




法・政令における規定

はじめに法文からです。

『原動機』という文言が記載されているのは、建築基準法別表第2になります。

各々の用途地域において制限されている建築物の用途が規定されている部分ですね。

表 法別表第2において『原動機』について規定されている部分(抜粋)

条項用途・床面積等原動機の出力制限(出力の合計)
(へ)項第二号(第二種住居地域)原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの
(と)項第二号(準住居地域)原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの(自動車修理工場の場合は150㎡)
(と)項第三号(準住居地域)・主に工場での製造等に関する制限
塗料の吹付や金属の切削、印刷、空気圧縮機を使用する作業など
※詳細は、法別表第2(と)項第三号、令第130条の8の3を参照
作業内容により各々規定(0.75kw〜10kw)
(ぬ)項第二号(商業地域)原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が150㎡を超えるもの(自動車修理工場の場合は300㎡。日刊新聞の印刷所を除く)
(ぬ)項第三号(商業地域)・主に工場での製造等に関する制限
塗料の吹付や製綿、生コンの製造、金属を圧延する作業など
※詳細は、法別表第2(ぬ)項第三号を参照
作業内容により各々規定(0.75kw〜4kw)
(る)項第一号(準工業地域)・主に工場での製造等に関する制限
金属厚板等のはつり作業、金属を圧延する作業など
※詳細は、法別表第2(る)項第一号を参照
作業内容により各々規定(4kw)

注)法律の抜粋であり、用途地域制限の全てを記載したものではないのでご注意ください。

次に政令における記載の内容です。

建築基準法における政令での規定

政令においては、第一種低層住居専用地域内の建築制限をご覧になってもらうと分かりますが、原動機の使用に関しては、出力制限として0.75kwという規定があります。

この記事で書くと煩雑になるので、制限内容の詳細は省略しますが、一般的には工場以外の用途であるパン屋、菓子屋などにおいて原動機を使用する場合に制限されております。

ここまで内容を確認してお分かりだと思いますが、どこにも『原動機』についての定義が規定されていません。

そうなんです。法令では、原動機の意味が分からないんです。

じゃあ、『原動機』とは何か! ですが、、、

原動機とは

辞書によりますと、原動機とは一般的に『モーター』のこと。

モーターを使用する機器といえば、家庭の中で例えるとミキサーや洗濯機などを想像するといいのかもしれません。

また、原動機の出力を調べる方法として、機器の仕様書などに『モーター出力 ○◯kw』と書いてあります。

法律では、モーターを使用する機器等全ての合計が出力制限になります。

ちなみに、作業に直接関係のない『空調設備や冷蔵庫等など』は原動機の対象とならない(※1)する考えもありますので、製造過程や室内の設備等でモーターを使用する道具等については、全て調査した上で、特定行政庁と協議することが無難です。
(※1):「建築確認のための基準総則集団規定の適用事例(編集 日本建築行政会議)」

モーター出力が生じる建築物の用途例として、コインランドリーがあります。

コインランドリーは、サービス業を営む店舗として、第一種低層住居や第一種中高層でも建築することができますが、良好な住環境保護を目的とした当該地域では、床面積の制限の他にこの原動機の出力が制限(0.75kw)されます。

また、菓子屋などで使用するハンドミキサーもモーターが使われていますね。
第一種低層住居などの店舗併用の場合には、一部の用途に対して原動機の出力制限がかかります。

原動機を使用する建築物の確認申請と使用開始後の注意点

次に確認申請時の取り扱いについてです。

通常、確認申請を行う際には、原動機の台数と出力が分かる資料(調書)を添付することになります。*調書は、各特定行政庁ごとに任意様式や条例・規則等で定めていることが多い。

この調書に使用する機器と台数などを記載していくわけです。

ちなみになのですが(いつもちなみが多くてすみません)、調書の審査はあくまでも確認申請時のみになると解釈していて間違いはないと思います。

というのも、完了検査時には、例えば厨房で使用する器具や設備は納入されていないのが一般的なんです。

とはいっても、審査機関によっては、全ての設備を導入した上で検査を行っているところがあるのかもしれませんので、完了検査時のチェックポイントについては、事前相談時に確認しておいた方が無難です。

これでお分かりでしょう。

実際、調書通りに使用されているか(設備や道具の変更によりモーターの出力に増減が生じる可能性がある)は、性善説に基づくことになるということです・・・ましてや使用する道具まで確認しているかというとそれはないですよね・・・法適合の確認方法がグレーなんですよね。

そうは言っても、仮に法律の制限を超えるものを使用していれば騒音等により近隣等からクレームが入れば立ち入り検査等で発覚する可能性もありますので、しっかりと法律を守る必要があります!!
(法律は守らないとダメですよ。当然ですが、自分だけいいというのが一番良くない・・・)

これは建築物を使用する人向けに関することですが、竣工して、引き渡しを受けた後に、調書に記載した内容を超える出力の機器を使用する場合には、原動機の出力制限が用途地域内の制限に適合しているか確認するため、一度、確認申請を担当した建築士への相談が必要です。

原動機と関係する作業場の考え方について

作業場の前に工場とは、物品等の製造、加工、仕分け、梱包、荷造り等の諸作業を一定機関継続して行うことを目的とする一定の場所をいう。

そして、作業場とは、工場内でそれら作業を行う場所をいいます。
※参考:「建築確認のための基準総則集団規定の適用事例(編集 日本建築行政会議)」

ですので、製造等と直接関係しない事務室や応接室、休憩室、物品の倉庫などはこの作業場に該当しないという考え方が上記の書籍に示されています。

利用形態によっては、作業場に該当しないと示されている室でも作業場と一体と捉えられることがあります。もちろん、それは利用形態によって判断は異なってきますので注意ください。
当ブログでも何度も言っているように最終的な判断は特定行政庁になります。

住居系用途地域ですと、作業場は50㎡以内と厳しく制限されているものもありますので、作業場の取り扱いについては、安全側の設計を心がけたいところだと思います。

終わりに

原動機の出力制限と作業場について解説しました。

原動機を使用する建築物を建築する際には、用途地域によって床面積や出力の制限が設けられていますので自治体ごとの条例・細則・規則・取扱を確認するようにしたいところです。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました٩( ‘ω’ )و






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など