「原動機」と聞いて、すぐに何を指すのか分かる方は、実はそれほど多くないのではないでしょうか。
私自身、建築行政を担当していた頃に「どの機器を原動機として数えるのか」「結局、どの出力を合計すればよいのか」と悩んだことがあります。法令を読んでも、原動機そのものの定義が書かれているわけではないため、少し分かりにくい規定です。
この記事では、私が実務で迷ったポイントも交えながら、用途地域、建物用途、作業場、原動機出力の順に整理します。建物内のモーターを無条件にすべて合計するわけではない、という点が最初のポイントです。
この記事でお答えすること
- 建築基準法でいう「原動機」とは何か
- 建物内のモーターをすべて合計するのか
- 第一種低層住居専用地域で原動機を使う店舗・工房を計画できるのか
- 0.75kW以下の制限がかかる用途は何か
- 立地検討と確認申請では、どのような資料を用意するのか
原動機制限の確認フロー
原動機の出力だけを先に確認したくなりますが、実務ではその前段にある「何の用途で、どのような作業をするのか」の整理が欠かせません。私の場合は、次の順番で確認するようにしています。
- 用途地域を確認
用途地域のほか、特別用途地区・地区計画・条例による制限も確認します。 - 建築物の用途と工場性を整理
店舗の名称だけではなく、製造・加工・修理等の実態から判断します。 - 作業場の範囲と床面積を算定
事務室や休憩室でも、作業と一体なら作業場に含まれる可能性があります。 - 別表第2の対象作業を照合
塗料の吹付、木材加工、金属切削、空気圧縮機、印刷など、作業ごとに規制内容が異なります。 - 対象となる原動機の出力を集計
仕様書の定格出力、台数、同時使用の考え方を整理し、必要に応じて特定行政庁へ確認します。
建築基準法における「原動機」とは
ややこしいのですが、建築基準法には「原動機」の一般的な定義が置かれていません。実務では、電動機など、機械を動かす動力源の出力を機器仕様書や銘板で確認します。
ここで注意したいのは、モーターを備えた設備があるからといって、直ちに建物内の全設備を合算するわけではないという点です。別表第2や政令が規制している用途・作業との関係を確認し、その作業に用いる原動機を拾っていきます。
空調機・冷蔵庫などの扱い
製造・加工等の作業に直接使用しない一般設備は、対象作業の原動機とは区別して扱う考え方があります。一方、設備名称だけで一律に除外できるものではありません。用途、工程、使用方法を機器リストとあわせて整理します。
用途地域と原動機・作業場の代表的な制限
ここまでの説明だけでは、まだ少し抽象的だと思います。法第48条と別表第2では、用途地域ごとに建築できない建築物や工場が定められていますので、原動機に関係する代表例を見てみます。
| 用途地域・根拠 | 代表的な規制 | 設計時の確認 |
|---|---|---|
| 第二種住居地域 別表第2(へ)項第二号 | 原動機を使用する工場で、作業場の床面積が50㎡を超えるものは不可 | 工場性と作業場範囲 |
| 準住居地域 別表第2(と)項第二号 | 原動機を使用する工場で、作業場の床面積が50㎡を超えるものは原則不可。自動車修理工場は150㎡以下の例外 | 作業場面積と自動車修理工場の扱い |
| 準住居地域 別表第2(と)項第三号 | 塗料の吹付、木材加工、金属切削、空気圧縮機、印刷などを作業・出力別に規制 | 作業名称と対象原動機の出力合計 |
| 商業地域 別表第2(ぬ)項第二号 | 原動機を使用する工場で、作業場の床面積が150㎡を超えるものは原則不可。日刊新聞印刷所等の例外あり | 工場性、作業場面積、例外規定 |
| 商業地域・準工業地域 別表第2(ぬ)(る)項 | 環境を悪化させるおそれのある事業を、作業方法・設備・出力等で規制 | 単純な総kWだけでは判定不可 |
また、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等の食品製造や一定のサービス店舗では、関係政令により作業場面積と原動機出力0.75kW以下などの条件が設けられる場合があります。用途地域と店舗形態を組み合わせて確認する必要があります。
第一種低層住居専用地域で原動機を使えるのか
実務で相談を受けることが多いのが、「第一種低層住居専用地域で、モーターを使う店舗や工房を計画できますか」という質問です。
結論は「兼用住宅の用途と規模による」
第一種低層住居専用地域で店舗や工房等を計画する場合は、令第130条の3に定める兼用住宅に該当するかを確認します。住宅部分が延べ面積の2分の1以上で、兼用部分の床面積が50㎡以下であることが基本です。
そのうち、洋服店・畳屋・建具屋・自転車店・家庭電気器具店等、自家販売のパン屋・米屋・豆腐屋・菓子屋等、アトリエ・工房では、原動機を使用する場合の出力合計が0.75kW以下に限られます。日用品店や食堂だから自動的に同じ制限になるのではなく、実際に製造・加工を行うなら用途の捉え方から確認する必要があります。
つまり、「原動機があるから建築できない」のではありません。まず兼用できる用途かを確認し、そのうえで面積と原動機出力の条件を確認する、という順番になります。
立地可能か検討するときに用意したい資料
次の資料は、確認申請の提出書類そのものというより、計画地で希望する用途・作業が可能かを事前に検討し、特定行政庁へ相談するときに用意したい資料です。
- 用途地域、特別用途地区、地区計画等の都市計画情報
- 製造・加工・修理等の工程を説明する資料
- 作業場の範囲と床面積を示した平面図
- 機器名称、用途、台数、定格出力を記載した機器表
- メーカー仕様書、カタログ、機器銘板の写し
- 同時使用の有無や予備機の扱いを説明する資料
確認申請では工場・事業調書等を提出
立地可能であることを確認した後、確認申請では、工場・事業調書等に作業内容、作業場面積、使用する機械、台数、原動機出力などを記載して提出するのが一般的です。様式名や記載項目は申請先によって異なるため、特定行政庁や指定確認検査機関が示す様式を確認します。
事前検討で作成した工程説明、平面図、機器表、仕様書等は、調書の記載根拠や補足資料として使えます。先に資料を整理しておくと、確認申請の段階で原動機の拾い漏れに気づく、といった手戻りも避けやすいと思います。
確認申請後に機種や台数を変更すると、出力制限や作業内容の判定が変わる場合があります。テナント入替えを含め、設備変更前に設計者へ確認することが重要といえそうです。
作業場の範囲にも注意
作業場は、工場内で製造・加工・修理等の作業を行う場所です。事務室、休憩室、倉庫等は通常の使い方では区別されますが、作業工程と一体で使用する場合は作業場として扱われる可能性があります。
名称だけで区分せず、平面図上で工程、機器配置、材料・製品の流れを説明できるようにしておくと、特定行政庁との協議が進めやすくなります。
まとめ
- 原動機の確認は、用途地域と実際の作業内容の整理から開始
- 建物内のモーターを無条件ですべて合計する判定ではない
- 作業場面積と、対象作業に使用する原動機出力を分けて確認
- 設備変更後も用途地域の制限への適合を継続して確認
- 判断が難しい場合は、工程図と機器表を用意して特定行政庁へ相談
参考:e-Gov法令検索「建築基準法」/e-Gov法令検索「建築基準法施行令」/国土交通省「用途規制」












