「外壁後退」と「壁面線」、「壁面の位置の制限」を同じ意味で使用してはダメ!!(物件調査のポイント)

これら3つは全て敷地境界線から外壁までの距離について定められるものですが、全て同じ「壁面線」と考えていませんか?

似ている規定ですが違います。

こんにちは!建築士のYAKAKEN(やまけん)です。




はじめに

極端な例ですが、あなたは、役所に対して外壁後退が定められているか聞きたいだけなのに、「壁面線の指定はされているか?」と問い合わせすると、役所が親切かどうかは関係なく、”外壁後退が指定されており、壁面線が指定されていない場合”は、「壁面線の指定はありません」と答えが返ってきます。
これは、行政側に責任はなく、聞き方の悪いあなたに責任があります。

昔、私が経験したことです。

不動産取引において都市計画や建築基準法の制限を説明する際には正しい根拠とその内容を正確に買主に伝える必要があります。
役所が親切じゃないから悪いとか、察すればいいとか、そんなことは無関係です。

ちょっとキツイことを言いましたがご容赦ください。
それでは、それぞれの違いについて解説していきます。

この解説で曖昧な説明が減ることを願っています。

「外壁後退」について

「外壁後退」とは建築基準法第54条に規定されています。

※いつの時代か法律の改正で条ずれになったら54条ではなくなるかもしれないので、予め伝えておきます。

それで、この法第54条ですが、指定される都市計画の地域地区(用途地域)が決まっています。

・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・田園住居地域

この3つの用途地域では、都市計画法により原則として「外壁後退」を定めることとされています。

上記の用途地域以外で「外壁後退」と定めている場合は、都市計画で定める「地区計画」や建築基準法に基づく住民同士のルールとなる「建築協定」の区域内であることが多いです。
※都市計画法では、指定するには「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため必要ば場合に限る」とされています。・・・特別な理由が無い限りは指定されるものです。

この規定ですが、低層住居地域内の日照や通風等を確保して、良好な住宅街を形成することが目的となっていますので、全ての敷地境界線(道路境界線も含む)から後退する必要があります。
ちなみ、制限されるのは「外壁」のみです。(門や塀は制限されていないです)

なお、後退距離は1m又は1.5mのいずれかとすることが法律で決まっています。

ここまで読むと、「外壁後退」の意味がなんとなく分かったのではないでしょうか。

「壁面線」について

「壁面線」とは建築基準法第46条に規定されています。

※これについても、将来、法律の改正で条ずれになったら46条ではなくなるかもしれないので、その時はごめんなさい。

この「壁面線」ですが、ポイントとしては、第3章第2節(建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等)に規定されていることです。

つまり、どういうことかというと「道路」と関係するわけです。

法律では次のように規定されています。

〔建築基準法第46条第1項抜粋〕
特定行政庁は、街区内における建築物の位置を整えその環境の向上を図るために必要があると認める場合においては、建築審査会の同意を得て、壁面線を指定することができる。この場合においては、あらかじめ、その指定に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行わなければならない。

重要なところは、街区と言っているということ。
先ほどの道路との関係からも分かるように、道路に面する建築物の壁面の位置を指定するものです。

さらに街区単位で指定されるので、一つの建築物のみに規定が及ぶものではないのです。

横浜市さんではこの法第46条指定を行っているので、「横浜市 建築基準法第46条」で検索して、グーグルマップと照らし合せて見ると、視覚的に理解しやすいと思われます。

この壁面線が指定されると、次条である法第47条により、「建築物の壁若しくはこれに代わる柱又は高さ2mをこえる門若しくはへい」は壁面線を越えて建築することができません。

高さ2mこえない門などは建築することができるので、公共的な歩行空間として利活用できるかというとそういうことではないようです。

ただし、横浜市などの指定されている事例を確認すると、歩道として利用されているので、実際は歩行空間も確保できないような劣悪な密集した市街地の通りで道路拡幅などの方法が無いような止むを得ない場合において、指定されていると考えるのが妥当なところかもしれません。

さきほどの「外壁後退」と違うのは、建築審査会の同意を得て特定行政庁が指定することです。

つまり、都市計画ではないということ。
都市計画で定めるルールではないことで、都市づくりのような広義的な視点ではなく、狭義的なところがポイントとなるところです。

理解して頂いたと思いますが、「外壁後退」とは制限される内容も趣旨も異なりますよね。
さらに、この次に解説する「壁面の位置の制限」とは趣旨が異なるので留意してくださいね。

「壁面の位置の制限」について

代表的なのは、都市計画で定める「高度利用地区」と「地区計画」です。

「高度利用地区」は、都市計画で定める地域地区の一つですが、都市計画法第9条第19項において次のように規定されています。

(都市計画法第9条第19項)
高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区とする。

そして、高度利用地区計画が指定されると、建築基準法第59条第2項の規定により、「建築物の壁又はこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するもの」は壁面の位置の制限に反して建築することはできなくなります。

よく、市街地再開発事業や街並み誘導型の地区計画などにおいて「壁面の位置の制限」が指定され、制限された部分が歩行空間などに利用されたりしています。
大阪の御堂筋や東京の銀座などが良い例かもしれません。
地域地区でいうと商業系用途地域が多いのかもしれません。

基本的には道路と壁面の関係となりますので、道路から何m後退することが求められます。
よくあるケースとして、道路境界線から後退する部分の高さが設けられています(例えば、道路境界線からの後退距離は4mとし、後退する部分の地盤面からの高さは5mまでなど)。

いずれも都市計画で定められるものなので、街区単位や大規模な敷地となる再開発ビルなどで指定されています。ここまで来ると理解していると思いますが、「壁面線」とは趣旨が全く違いますよね。

不動産調査などにおける調査のポイント

都市計画で定められるものが「外壁後退」と「壁面の位置の制限」です。
※都市計画で定められると建築基準法の規定により後退距離などが制限される。ただし、地区計画を建築基準法条例化していない場合は建築基準法上の制限を受けません(都市計画法での地区計画届出のみ)。

特定行政庁(建築基準法)が指定するのが「壁面線」です。

外壁後退は、低層住居系+田園住居のみに指定されているので、調査する不動産がその用途地域なのかがポイントです。
指定されていれば、必ずと言っていいほど外壁後退が指定されています。
また、都市計画で定めているので、都市計画を担当している部署で指定されているか確認しましょう。

次に、壁面線ですが、壁面線は建築基準法で定められるので、建築指導課などの建築行政を担当する部署で確認しましょう。
ちなみに、外壁後退に比べて指定されている都市自体が少ない(私が調べた限りです)のであまり出くわすことはないと思います・・・出会ったらレアなケースです。

最後に壁面の位置の制限ですが、高度利用地区や地区計画で定められているので、都市計画を担当している部署で確認すれば分かるはずです。
比較的多くの都市で指定されているもので、特に地区計画で規定されているケースが多々あると思われます。

はじめに戻ってしまいますが、不動産売買などにおいて物件調査を行う場合は、はじめに都市計画を担当する部局に確認すると思いますが、その際に、”セットバックがあるか” や ”壁面後退”などのあやふやな確認方法はしないで、この3つの用語を正しく使い分けてみましょう。
今回の記事ですが、私の知り合いの建築士で「壁面後退」と言っている方がいたので、それなにっ!?って思ったことがあったのでいつかはこれに関する事項を書いてみようと考えていたところがキッカケです。笑

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!