こんにちは。建築士のやまけんです(^^)
今回は都市計画法において地域地区の一つとされている景観地区の解説です。景観と言っても、多くの人が馴染みないかもしれないので
・・・記事を書いてて少し不安なのですが、「夜景」や「街並み」が綺麗な場所やまちを見に観光をしたことはありますよね?
圧倒的に綺麗な場所に行くと感動したり、心地良い気分になります♪
そういった景観的にすぐれた場所を保護する法律があるんです。以外と知られていませんが、「景観法」というものです。
私個人としては、石井幹子先生のライティングデザインが好きだったので、景観について多少勉強した程度だったのですが、まちづくりという分野に関わるようになってくると、これからの都市にはなくてはならない都市計画の手法の一つではないかと思うくらい重要だなと感じています。
ではでは、景観地区について都市計画法から解説してみます。
目次
都市計画法における「景観地区」の位置付け
景観地区は、都市計画法第8条に規定される地域地区の一つです。
「景観地区」において定める制限の内容等については、都市計画法に記載はなく、景観法に規定されています。
景観法の規定は、景観法第61条第2項に記載されており、『建築物の形態意匠の制限』は必ず定め、『建築物の高さの最高限度又は最低限度』、『壁面の位置の制限』、『建築物の敷地面積の最低限度』は必要に応じて定めることとされています。
「都市計画運用指針(国土交通省)」にも景観地区の目的などが記載されているので、参考まで掲載します。
[都市計画運用指針 13.景観地区]
景観地区は、市街地の良好な景観の形成を図るために定める地域地区である。このため、 既に良好な景観が形成されている地区のみならず、現在、良好な景観が保たれていないが、 今後良好な景観を形成していこうとする地区について、幅広く活用することが可能とされているものである。
この景観地区については、既に良好な景観が形成されている地区だけでなく、今後、良好な景観を形成していこうとする地区についても、定めることができることです。
何を言いたいかというと、景観を保護するために景観地区を指定するのでは?と思うのが一般的なところですが、新たに良好な景観形成を進めていこうとする地区についても指定することができるんです。
これによって、これまで、街並みが汚く、お世辞にも綺麗と言えなかったところでも、景観地区を活用することで、都市の外観上の魅力向上につながることが期待されるわけです。
実際には、住民や事業者の合意形成が必要になってくるので簡単に進められるものではないですが、任意のルールで進めるよりも法律で指定する方が効果が高いですし、何よりも認知度が高いので、住民の意識が高い地域では活用していくべき都市計画手法の一つでしょうね。
「景観法運用指針」では、次のように指定される地区の考え方の例示を掲載しています。
[景観法運用指針の抜粋]
・既に良好な景観を形成している業務地、商業地、住宅地、歴史的街並み、集落等・地区周辺の山並みや海岸線、河川、緑地、城址等の地域のシンボルと街並みが一体となって、地域色豊かな景観形成を進めていく必要がある区域
・良好な景観の形成を進めることが生活環境の向上に資すると想定される住宅地
・良好な景観の形成を進めることによって、地域の活性化や地域の価値創造を図ることを目標とする商店街や中心市街地
・町家や武家屋敷等の景観資源は点在しているものの、良好な景観を形成しているとは言い難い状況であり、今後良好な景観形成を進める必要がある既成市街地
・市街地縁辺部等で、住宅と、青空駐車場や資材置き場等の空閑地が混在するなどの景観上の課題が顕在化している区域
・多種多様な形状や色彩からなる郊外型店舗等が集積しているバイパス沿道等、景観の向上に向けた対策が必要である区域
・ 今後建築物の更新が想定される郊外型の団地など、これまでの環境を確保しつつ新しい生活環境を創造していく必要がある区域
・ 開発事業等に伴い、新たな景観の創出が見込まれる区域
・ 道路、河川、公園、緑地、水辺等の地域の景観資源と一体となって良好な景観の形成を進める必要がある区域
景観地区で定める制限の内容
景観法第61条第2項に規定されています。
法令 | 都市計画に定める内容 | 備考 |
---|---|---|
景観法第61条第1項 (都市計画法第8条第3項第一号及び三号) |
①地域地区の種類、②位置、③区域、④区域の面積 | |
景観法第61条第1項各号 | 下記事項のうち一号は必須。二〜四号は任意 一号:建築物の形態意匠の制限 二号:建築物の高さの最高限度・最低限度 三号:壁面の位置の制限 四号:建築物の敷地面積の最低限度 |
景観計画による良好な景観の形成に支障がないように定める |
○建築物の形態意匠の制限とは?
建築物の色彩や見た目など、ズバリ形態的な意匠の制限のことです。
金沢や鎌倉、京都などが景観地区を指定していますので、気になる方は「○○市 景観地区」で検索です。
景観地区が指定されると制限の内容は?[景観法]
景観地区内については、景観地区内の建築物の形態意匠及び工作物の形態意匠、高さ等を制限することができるようになっていると先ほど説明しましたが、これを担保するため、建築物の形態意匠等に関する計画について、市町村による認定制度が設けられています。
要は、建築する前に市町村長の認定を取らないと着工することはできません。
景観地区内の景観を担保するには重要な規定です。
景観地区が指定されると制限の内容は?[建築基準法]
景観地区が指定されると建築基準法第68条の規定により、都市計画で定めた内容が制限されることになります。
建築基準法第68条 | 制限される内容 | 適用除外となる建築物 |
---|---|---|
第1項 | 建築物の高さの最高限度又は最低限度が定められた場合には、最高限度以上・最低限度以上にする | 公衆便所や公益上必要な建築物や特定行政庁が許可したもの |
第2項 | 壁面の位置の制限が定められた場合には、地盤面下を除き、制限の内容に反してはならない | 上記のほか、学校や駅などで特定行政庁許可したもの |
第3項 | 建築物の敷地の最低限度が定められた場合には、最低限度以上にする | 第1項に同じ |
なお、建築基準法第68条第5項により、上記の制限される内容に適合し、かつ、敷地内に有効な空地が確保されること等により特定行政庁の許可を受ければ高さの制限(建築基準法第56条:斜線制限)を適用しないことが可能です。
景観地区の指定状況は?
2019年3月末日現在、30市区町村、51地区で指定されています。
景観形成で有名な仙台や金沢、京都、尾道などの主要都市以外でも指定しているところがあるので、気になる方はGoogle マップで観光してみると面白いと思います^^♪
おわりに
国土交通省では毎年「都市景観大賞」なるものを実施していて、昨年度は「女川駅前レンガみち周辺地区」が受賞されていました。
▶︎平成30年度の報道記者発表の記事はこちら(外部リンク)
景観形成には、なんと言っても費用(コスト)がかかります。
特に、既存の街並みである程度景観が確保されているところではなく、新たに景観形成を行う地区であれば尚更かもしれません。
景観地区は、都市の魅力アップにつながるのは間違いないですが、一方で持続させていくには、地域として守り育てていく教育や住民の参画が必要不可欠でしょうから、指定には足踏みしてしまうかもしれません。
しかしながら、景観が綺麗なところは素敵ですよね(^^)
綺麗なところで、「嫌な気持ちだな〜」って思う人は滅多にいないでしょうから、指定する価値は十分にあると思います。
今後も挑戦していく都市を追いかけてみたいので、魅力的なところがあったら当ブログでも紹介していきたいと思います。
それでは最後までご覧いただきありがとうございました。