こんにちは。建築士のやまけんです^^
これからの人口減少社会は、日本人口が少なくなるという寂しい反面、こういった社会情勢をうまく活用して、よりよい街づくりを行うチャンスでもあります。
その一躍を担うのが「賃貸住宅の経営」です。
そこで、今回は、人口減少や超高齢社会において賃貸住宅を経営する上でのポイントを考えてみました。
少しコンサルタント的な視点で書いてあるので、「なんか違うよな?」と思ったところがあれば、活用しなくてもいいですし、「ここは使えそう」とか「そういった視点があるのか」のような頭の片隅に残るような部分があれば、今後の賃貸住宅の計画に使ってみてください。
私としては、賃貸経営を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
これから、多くの賃貸住宅は淘汰されていく時代になる
白地の地域は、2015年を基準に大幅に世帯数が減少していく地域を示しています。
※出典:『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2019年推計)国立社会保障・人口問題研究所
この結果が示していることは、今後、間違いなく賃貸住宅は競争が激化し自然に淘汰されていくことが考えられます。
理由は、世帯数が減少していくからです。
上の図を見て、どう思います?
推計では日本全体で2015年ー2040年で約5%ほど減少するとされており、また、地域によっては10%以上も減少することが予測されています。
賃貸経営において重要なことは人口よりも世帯数です。
世帯数が伸びている地域であれば、大きな心配は無用で、需要に対して供給不足になっている可能性が高いですから経営に心配はないですが、世帯数が減少している地域は、供給過多となっている可能性が高いので、賃貸経営が厳しい状況下に置かれていることが想定されます。
今から10年前や20年前に比べて賃貸住宅が増えたなと、なんとなーく感じた人がいると思います。
もちろん、日本全体の世帯数が伸び続けていたので、当然のことなんですが、しかし、今後はそうはいきません。
供給過多になるのは必然です。
そうすると、人はどういった理由で賃貸住宅を選択するか、
①立地、②賃料、③間取り、④住宅設備 などの順となっていることが分かっていますから、立地性に欠く賃貸住宅は淘汰されていくことが考えられるのが当然です。
とはいえ、今後も社会生活のあり方はITの進展によって変化していくので、一概には言えない部分があります。
というのも、立地性というのは、仕事や日常生活に必要な事を済ませるのに、利便性の高い地域に住むというこれまでの前提を持って考えているからです。
例えば、仕事を家で済ませることができるになれば、出勤する必要がないので、その分、職場までの通勤距離は無視して選択することができるようになりますよね。
しかしながら、日本全体とては、世帯数が減少していくので、必ず賃貸住宅は淘汰されていくはずです。
では、そのような中、何をポイント(主眼・視点において)経営していけばよいのか。
供給過多となる時代の賃貸経営のポイント
はじめに言いたいことは、
利益を出すことを前提に設計をしてはいけないということ。
これは決して利益を出してはいけないと言っているのではなく、利用者目線で設計するべきだということです。
はっきり言うと、利用者目線で設計して採算性が合わなければ、建築しないことも考えるべきだと思います。
何故かというと、利用者目線に立って、共同住宅のロビーに宅配ボックスを設置したとしましょう。
オーナーには何にもメリットはないですよね。
しかし、入居者にとっては、再配達のリスクを減らすことができるため、特に共働き世帯や単身世帯は、ある方と無い方の住宅を天秤にかけたときは、多少コストが上乗せされても、ある方を選択します。
また、オートロック機能もその一つではないでしょうか。
オーナーにとっては維持管理のデメリットしかありませんが、入居者にとっては安全・安心を確保できる手段の一つですよね。
あった方がいいけど、オーナーの目線からすると不必要に感じてしまう住宅設備も、入居者にとっては必要な設備には違いありません。
先日、旭化成ホームズが、賃貸住宅の共用部に「防災ステーション」などを設置できる「へーベルメゾン・防災パッケージ(外部リンク)」の販売を開始しています。
この「防災パッケージ」も、オーナーにとっては、コスト増になってしまいますが、入居者にとってはメリットの高い商品ですよね、要は付加価値の高いものを提供することが重要なわけです。
なお、「賃料が高くなってしまっては、借りてがいないのでは?」という考えもあると思いますが、
設備が増加する分のコストは賃料に乗せればいいわけです。
住宅設備のグレードを上げたことで賃料が高くても、その分の恩恵を受けたいと考えている入居者にとっては、賃料はそこまで重要になってきません。
ですので、賃料が高い=借りてがいない という考えは絶対ではありません。
私のこれまでの経験上から得られた見解ですが、一戸建て住宅やマンションを購入する不動産リスクは非常に高いですが、賃貸住宅はその分、負債を抱えるリスクは少なく、飽きたら引っ越しできますし、身軽ですから、住宅設備の質が良ければ、その分賃料が多少高くても借りてはいます。
このことは、借りてに伝えたいことですが、
賃料が高い=一戸建てを購入した方が得 という考えも、不動産を35年ローンで購入するリスクの方が遥かに高いので、”一方的に一戸建ての方が得とされる” よく意味の分からない神話は気にしない方が無難です。
堀江貴文さんことホリエモンも持ち家を否定しています。
というか、賃貸住宅さえも論外らしく、ホテル住まいだそうです。
繰り返しになりますが、利用者目線に立って企画・設計することが大切
今後、特に地方では賃貸住宅は供給過多になりますから(一部では既に供給過多の傾向になっている)、賃貸住宅が他から”選ばれる”必要があるわけです。
供給過多になると、第一に立地性に欠く住宅は投資分の回収が難しくなる可能性が高いです。
ですので、立地性に負けない企画・設計(利用者目線)を行うことが大切なんです。
でも、利用者目線といっても、いろいろなケースがありますので、”立地場所の都市環境”と”誰に住んで欲しいか”というターゲットを絞って企画・設計することが重要です。
それを次の項に書いています。
立地環境とターゲットの考え方
「ターゲット」の検討が一番重要です。
立地環境は、変えられるものではないですよね。
立地環境とは、駅やバス停、日常生活サービス施設の立地状況などで、ほぼ変わることはありません。
なお、ターゲットによって立地環境のメリット・デメリットがあることに注意が必要です。
ターゲットとは、”立地場所周辺の施設を利用している人”、若しくは、”住んで欲しい人” です。
住んで欲しいということは、「街の経営を担っている」という点も忘れてはいけません。
というのも、立地場所周辺の施設を利用している層にターゲットを絞っても、街の雰囲気は変わりませんが、「住んで欲しい人」にターゲットを絞ると、これまでいなかった層が街に入ってくるため、街の雰囲気が変わります。
とはいえ、狙ったターゲットが確実に入居してくれる可能性は100%ではないことに留意する必要がありますけどね。
私個人としては、賃貸住宅の目的(ターゲット)は次のような分類になると考えています。
今回は、この記事が無料版ということで3つのターゲットだけ掲載します。
ターゲット | ターゲット層が求めるもの | 必要な設備の例 |
---|---|---|
安全・安心を求める層(年齢層は問わない) | 災害に対応した設備や防犯性の高い住宅設備 | ・オートロック ・防犯カメラ ・1階部分の防犯仕様の向上 ・防災備蓄倉庫 ・予備電源(ソーラーパネル) ・制振、免震設備 ・河川ハザードエリア内であれば1階部分はピロティ構造 ・土砂災害のエリアには建築しない など |
子育て世代(ファミリー向け) | 周辺の居住環境(医療・日用品を扱う商業施設の立地や公園などの有無)、また子供を通わせたい学校がある学区 | ・隣接住戸への騒音等への配慮(界壁・床の防音性は高性能のもの) ・ベビーカーや子供用自転車を置けるアルコーブの設置 ・ベビーカーや妊婦に配慮してエレベーターの設置 など |
高齢世帯 | 日常生活サービス(医療・日用品を扱う商業)施設への立地性 | ・高齢者向けサービス付き住宅とする方が入居者のメリットが高い。 ・中庭(パティオ)を設けて、中庭から各戸に入れるようにしたり、共有スペースを設けると、高齢者同士のコミュニティを形成しやすい。※2 ・ペットとの共生 ▶︎今後、確実に入居者数が増える層 |
※2:部屋を小さくし、不要なものを削ぎ落としたシンプルにする場合、賃料を下げて、入居戸数を増やすことも可能となりますが、現時点の社会情勢では、公営住宅との差別化が難しいので、要は競合する可能性が高いため、あまりオススメしません。
終わりに
賃貸経営は、「まちづくり」を一躍担っていることを認識して、「どういった人に住んで欲しい」かを考えてみて、わたしだったら、こんな人達に住んで欲しいという思いを持つことが大切ではないかと思います。
つまりは、土地を所有するオーナーさんの行動次第で「街」はどんどん良くなっていくということです。
そのような思いを持って、ハウスメーカーさんを選ぶといいかもしれません。
それでは最後までご覧頂きありがとうございました^ ^