今回は、都市計画法で規定される「特定街区」の解説です。
こんにちは!建築士のやまけんです。^ ^
都市計画法における「特定街区」の概要と、「特定街区」を指定することで建築基準法が適用されることにより、建築基準法の一般制限に関する部分が適用除外になりますので、その内容を解説していきます。
「特定街区」の定義とは
「特定街区」は都市計画法における「地域地区」の一つとなっており、都市計画法第9条第20項に規定されています。
[都市計画法第9条第20項]
特定街区は、市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区とする。Specified blocks are blocks designated within districts where the improvement and development of blocks will be implemented to promote the renewal of urban areas, and in which the maximum floor-area ratio, building height, and restrictions on the location of walls are stipulated.
○ポイントとしては、市街地の環境改善を図るため街区の整備、造成が行われる地区について、容積率、高さの最高限度、壁面の位置の制限を定める街区です。
法律そのままなので、分かりズラいですから、「都市計画運用指針」を見てみます。
[都市計画運用指針 特定街区]
特定街区は、良好な環境と健全な形態を有する建築物を建築し、併せて有効な空地を確保すること等により都市機能に適応した適正な街区を形成することにより、市街地の整備改善を図るために定める地域地区である。
○都市計画運用指針を見ると、「有効な空地を確保」と「都市機能に適応した適正な街区を形成」の2つがとても重要です。
特に、”空地の確保”という点が「特定街区」のポイントなので、覚えておきましょう。
次に、都市計画で定める内容について確認します。
「特定街区」に定める都市計画の内容
都市計画法第8条第3項第二号リに規定されていて、「建築物の容積率」、「建築物の高さの最高限度」、「壁面の位置の制限」の3つです。
次に、「特定街区」を定めている都市の指定状況についてみてみます。
「特定街区」の指定状況
特定街区は、現在※、全国17都市、113地区、188.8haで指定されています。
※平成29年3月31日都市計画現況調査(国土交通省)
東京都だと東京都庁が有名ですかね。
ちなみ、東京都内の「特定街区」は東京都のホームページで確認することができます。
▶︎http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/cpproject/intro/list_tokute.html(外部リンク)
特定街区の有効空地面積とは
「都市計画運用指針」では、特定街区の指定に当たって、勘案することが望ましいとされている事項に、「有効空地の面積の街区面積に対する割合」があります。
具体的な都市の事例として、横浜市では、この割合を20%としています。
※「横浜市特定街区運用基準(平成26年7月1日:横浜市)」
建築基準法との関係
「特定街区」が都市計画決定されると建築基準法第60条により、建築基準法の規定が適用されます。
ポイントとしては、第3項の部分です。
[建築基準法第60条]
特定街区内においては、建築物の容積率及び高さは、特定街区に関する都市計画において定められた限度以下でなければならない。
2 特定街区内においては、建築物の壁又はこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き、特定街区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。
3 特定街区内の建築物については、第52条から前条まで並びに第60条の3第1項及び第2項の規定は、適用しない。
どういうことかというと、建築基準法第60条第3項の規定により、法第52条から59条、60条の3第1〜2項の規定は適用されなくなります。
適用されない条項 (建築基準法) |
法律の内容 |
---|---|
法第52条 | 容積率 |
法第53条 | 建蔽率 |
法第53条の2 | 建築物の敷地面積の最低限度 |
法第54条 | 外壁の後退距離(第一種低層住居専用地域等) |
法第55条 | 高さの最高限度(第一種低層住居専用地域等) |
法第56条 | 斜線制限 |
法第56条の2 | 日影規制 |
法第57条 | 高架の工作物内に設ける建築物の高さの制限の緩和 |
法第57条の2 | 特例容積率適用地区内の容積率の緩和 |
法第57条の3 | 法第57条の2の指定の取り消し |
法第57条の4 | 特例容積率適用地区内の高さの限度 |
法第57条の5 | 高層住居誘導地区 |
法第58条 | 高度地区 |
法第59条 | 高度利用地区 |
法第59条の2 | 総合設計制度 |
法第60条の3第1項 | 特定用途誘導地区 |
法第60条の3第3項 | 特定用途誘導地区における用途規制の緩和(条例化) |
おわりに
今回は、「特定街区」について解説しました。
なお、「特定街区」と建築基準法第59条の2の「総合設計制度」との大きな違いは、”街区単位”か”建築物の敷地単位”かです。
どちらも空地を確保するという点は同じですので、どのように都市づくりを進めていくかで、街区単位とするか、建築物の敷地単位とするかを選択しているはずです。
それではここまでとなります。
最後までご覧いただきありがとうございました。
*タイトル写真
larahcvによるPixabayからの画像