この記事では、壁なしの自動車車庫や屋根が帆布のスポーツ施設といった簡易な構造の建築物について、法令で緩和される規定」を解説しています。法令は、建築基準法第84条の2となります。
こんにちは!!建築士のやまけんです^ ^
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簡易な構造については用途としてはあまり使用することはない汎用性の低い規定のため、建築士の試験問題で出題される程度ですが、知っておいて損はないですし、知っておくことで、設計するときに役立つことがあるはずですw
建築基準法第84条の2
(簡易な構造の建築物に対する制限の緩和)
建築基準法第84条の2
第84条の2 壁を有しない自動車車庫、屋根を帆布としたスポーツの練習場その他の政令で指定する簡易な構造の建築物又は建築物の部分で、政令で定める基準に適合するものについては、第22条から第26条まで、第27条第1項及び第3項、第35条の2、第61条、第62条並びに第67条第1項の規定は、適用しない。
緩和の対象となる建築物
緩和の対象となる「簡易な構造の建築物」及び「簡易な構造の建築物の部分」の基準の適合は、建築基準法施行令第136条の9と施行令第136条の10(基準)に規定されています。
はじめに施行令第136条の9については、一号が開放的簡易建築物、二号が膜構造建築物にわけられており、一号については自動車車庫やスポーツ練習場等で階数が1で床面積が3,000㎡以内のもの、二号については屋根及び外壁が帆布の材料で階数が1で床面積が3,000㎡以内のものとなっています。
詳しくはこちらの表をご覧ください。
(開放的簡易建築物)
用途 | イ 自動車車庫 ロ スケート場、水泳場、スポーツの練習場等 ハ 不燃性物品の保管その他これと同等以上に火災の発生の恐れの少ない用途に供するもの ニ 畜舎、堆肥舎、水産物の養殖場・増殖場 |
階数 | 1 |
床面積 | 3,000㎡以内 |
その他 | ①壁を有しない建築物 ②H5建告1427号に適合する建築物 ・常時開放された側面等の開口部の合計面積≧建築物の水平投影面積÷6 ・高さ2.1m(天井面又ははりの下端が床面から2.1m未満の高さにある場合は、その高さ)以上の常時開放された開口部の総和幅≧建築物の周長÷4 ・各部分から外壁の避難上有効な開口部までの距離≦20m *建築物の部分適用は、準耐火構造・耐火構造の壁又は防火設備(施行令第126条の2第2項:遮煙等)で区画が必要 *給水管等の壁貫通部は、H5建告1426号に適合 |
(膜構造建築物)
用途 | ロ スケート場、水泳場、スポーツの練習場等 ハ 不燃性物品の保管その他これと同等以上に火災の発生の恐れの少ない用途に供するもの ニ 畜舎、堆肥舎、水産物の養殖場・増殖場 |
階数 | 1 |
床面積 | 3,000㎡ |
その他 | 屋根及び外壁が帆布その他これに類する材料で造られている建築物または建築物の部分(間仕切り壁を有しないものに限る) *建築物の部分適用は、準耐火構造・耐火構造の壁又は防火設備(施行令第126条の2第2項:遮煙等)で区画が必要 *給水管等の壁貫通部は、H5建告1426号に適合 |
簡易な構造の建築物の基準
簡易な構造の建築物の基準は、建築基準法施行令第136条の10に規定されており、自動車車庫と車庫以外、防火地域・準防火地域、屋根不燃区域、その地域に区別されています。
「柱・はり」・「外壁」・「屋根」の制限が設けられており、”準耐火構造”や”不燃材料”、”大臣告示”等にするなどの制限のほか、自動車車庫における隣地境界線に接する部分の防火塀の設置などが定められています。
詳しくは、建築基準法施行令第136条の10を確認していただく他ないのですが、法文はとても読みにくいため、詳しく表にしても逆に分かりにくくなる可能性があるのかなと思います。おすすめは建築確認申請メモなどの参考書籍を読むのが一番です。
関連告示(参考まで)
○平成5年6月22日建設省告示第1426号
▶️準耐火構造の壁を貫通する吸水管、配電管その他の管の部分及びその周囲の部分の構造方法を定める件○平成5年6月22日建設省告示第1427号
▶️高い開放性を有する構造の建築物又は建築物の部分○平成12年5月31日建設省告示第1434号
▶️防火上支障のない外壁及び屋根の構造を定める件○平成5年6月24日建設省告示第1434号
▶️通常の火災寺における炎及び火熱を遮る上で有効と認める塀その他これに類するものの基準○平成5年6月24日建設省告示第1435号
▶️屋内側からの通常の火災寺における炎及び火熱を遮る上で有効と認める屋根の基準
緩和される法令
では、次に緩和される法を解説します。「簡易な構造の建築物」の一番のポイントですからね。
緩和される法令 | 緩和される法令の概要 |
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法第22条 | 屋根不燃区域(いわゆる法22条区域と規定されるもの) |
法第23条 | 屋根不燃区域における延焼のおそれがある部分の外壁の制限 |
法第24条 | 屋根不燃区域とそれ以外の区域がまたがる場合は、すべて屋根不燃区域を適用 |
法第25条 | 延べ面積1,000㎡を超える木造建築物のうち延焼のおそれがある部分の外壁・軒裏を防火構造とし、屋根は法第22条区域を適用 |
法第26条 | 延べ面積が1,000㎡を超える建築物の防火壁(防火床)による区画 |
法第27条第1項・3項 | 耐火建築物としなければならない建築物 *除かれていない規定は、法第27条第2項(倉庫等で3階以上の階の床面積が200㎡以上、3階以上を自動車車庫等とする場合は耐火建築物としなければならない規定) |
法第35条の2 | 特殊建築物等の内装制限 |
法第61条 | 防火地域及び準防火地域内の建築物 |
法第62条 | 防火地域及び準防火地域内の屋根の構造 |
法第67条第1項 | 特定防災街区整備地区の建築物は耐火建築物等としなければならない規定 |
施行令第112条 | 防火区画 |
施行令第114条 | 界壁、防火上主要な間仕切り壁、隔壁 |
第5章の2 | 特殊建築物等の内装制限 |
これを覚えておけば、簡易構造は理解したと言って問題ありません。
では、次に「簡易な構造の建築物」についてです。
補足
一層二段の自動車車庫は、平成5年の施行令の改正により「簡易な構造の建築物」として位置付けられたことで防火規定の大部分が適用されないことになっています。
実際にはこういった建築物の設計を行うことは非常に稀なので、頭の片隅くらいにおいておけば良いかなと思われます。
今回は、簡単ではありますが、このあたりで失礼します。
「簡易な構造の建築物」を調べている方の参考になれば幸いです。