中間検査とは?
建築基準法では、建築物の安全性を担保(品質確保)を目的に一定規模以上の建築物について、建築途中の段階で「中間検査」を位置づけていることはご存知でしょうか。
建築士の方は当然知っていますが、そうでない方にはあまり知られていないですよね。
今回は、建築物の安全性に関する部分の品質を確保するために規定されている「中間検査」について、対象となる工事、求められる書類、罰則などを解説します。
こんにちは。建築士のYAMAKEN(やまけん)です^ ^
このサイトでは建築基準法と都市計画法を中心に法律の解説を行ってきましたが、中間検査については触れていなかったので、近年、共同住宅の界壁問題もあったことから、「中間検査とは?」という視点で記事にしました。
建築主の方にもわかるように書いているつもりですが、分からない用語などがあれば、このサイトで用語の「検索」をして頂ければと思います。
目次
中間検査制度が導入された背景など
中間検査は、記事冒頭でお伝えしたように、建築物の特に構造的安定性の品質を確保するために、1999年(平成11年5月1日施行)に導入された制度です。
基本的に、特定工程とされる工事(床や梁の配筋工事や軸組工事、屋根工事など)の終了時に検査を受けなければならず、検査に合格しないと次の工程に着手する事はできない規定となっています。
この中間検査が導入された背景としては、平成7年1月に発生した「阪神・淡路大震災」において、施工不良や手抜き工事等による欠陥が原因となった建築物の倒壊が多く、被害も甚大だった事が要因だそうです。
制度開始当初は、検査の対象となる建築物や工程を特定行政庁が指定する規定でしたが、その後、構造計算書偽装問題があったことを受けて、平成19年6月に法律で、3階以上の鉄筋コンクリート造共同住宅については全国一律に義務付けがされています。
なお、制度がスタートした平成11年では、完了検査率が約4割※1でしたので、建築確認のみで、図面通り建築されたかどうかは建築士による工事監理と、施工者のチェックのみに任せれ、これら以外はチェックされてない当時の状況が伺えます。
ちなみ、この完了検査率については、平成28年で約9割※1まで改善しているので、現代の建築物については、一定以上の品質は確実に確保されているはずです。
※1:出典:建築確認検査制度の変遷(国土交通省)
最近では、レオパレス21と大和ハウス工業による賃貸共同住宅の不適合事案があったので、中間検査における特定工程の指定が行われていくものと想定しています。
→日本の高い技術力や品質確保は信用を失った事案ですよね・・・でも、震災で欠陥住宅が露呈してきた事からも従前から、手を抜く行為は一定程度発生していたんでしょう。
だからこそ、これからの時代はますます信用・信頼関係が重要になりますね。
では、次に対象工事について解説します。
中間検査の対象工事
対象工事は、建築基準法第6条第1項※2の規定による工事のうち、次のいずれかに該当する工程(特定工程)となります。
※2:建築基準法第6条第1項の規定については、「建築物の建築等に関する申請及び確認」を規定している条項で、建築確認申請が必要となる用途や構造、規模等を定めています。
[特定工程]
一号:2階の床及び当該床を支持する梁の配筋工事(3階以上の共同住宅)
二号:特定行政庁が指定する工程
参照法令:[建築基準法第7条の3]建築主は、第6条第1項の規定による工事が次の各号のいずれかに該当する工程(以下「特定工程」という。)を含む場合において、当該特定工程に係る工事を終えたときは、その都度、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
一 階数が3以上である共同住宅の床及びはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程
※政令:建築基準法施行令第11条
二 前号に掲げるもののほか、特定行政庁が、その地方の建築物の建築の動向又は工事に関する状況その他の事情を勘案して、区域、期間又は建築物の構造、用途若しくは規模を限つて指定する工程
二号:特定行政庁が指定する工程
特定行政庁が指定する工程については、特定行政庁が管轄する地域(地方)の建築物の動向又は工事に関する状況その他の事情を勘案して、建築物の構造、用途、規模に限って指定されるものです。
ですので、特定行政庁によって指定工程が異なります。
Google先生で「○○市 中間検査」と検索すれば容易に調べることは可能ですが、簡単に調べる方法として、民間確認審査機関の日本ERIさんでは、親切に全国の特定行政庁ごとの指定工程について取りまとめを行っています。とても参考になるのでリンクを貼っておきます。
民間機関でも中間検査を受けることができますから、参考にしてみてください。
▶️https://www.j-eri.co.jp/gyoumu/kenchikukakuninkensa/tokuteikotei.html
ちなみ、大阪市さんですと、木造建築物でも規模によって、基礎の配筋工事、屋根工事などが特定工程として指定しているほか、横浜市さんでも、木造建築物でも全軸組緊結完了時を特定工程として指定を行っています。
基本的に住宅であれば安全性・品質の確保のため、木造構造であれば特定工程に指定されている事例が多いと考えられます。
(建築主の方へ)
建築士の方は、当然知っていると思いますが、建築主の方はあまり知らない情報ですから、ご自身が建築する建築物の品質を確保するためにも、発注者の立場として、中間検査が必要となる規模・用途を建築計画の段階で確認しておくことをおすすめします。
中間検査は特定工程終了後から何日以内に申請?
特定工程を終えた日から4日以内に建築主事に到達するよう規定されています。
建築主事は、受理した日から4日以内に適合するかどうかの検査をすることになります。
[建築基準法第7条の3第2項]
前項の規定による申請は、特定工程に係る工事を終えた日から4日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。※前項とは、一号・二号の特定工程のこと。
※やむを得ない理由とは、建築基準法施行規則第4条の3に規定されており、「災害その他の事由」となっています。ですので、災害があった場合を除いて基本的には、申請が遅れるというのは容認していないということ。
この中間検査は建築主事だけではなくて、先ほど紹介した日本ERIさんをはじめとする民間審査機関でも受けることが可能です。なお、民間審査機関の中間検査規定は、建築基準法第7条の4に規定されています。
では、中間検査を受験せずに特定工程を進めた場合、罰則はあるのか説明します。
中間検査を受験しなかった場合の罰則規定
中間検査を受けなかった場合の罰則規定は、建築基準法第99条第1項第三号に規定されており、中間検査申請をしない又は虚偽申請を行なった者は、1年以内の懲役又は100万円以下の罰金に処するとされております。
[建築基準法第99条第1項・第三号抜粋]
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一 〜 二 (略)
三 第7条第2項若しくは第3項(これらの規定を第87条の4又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)又は第7条の3第2項若しくは第3項(これらの規定を第87条の4又は第88条第1項において準用する場合を含む。)の期限内に第7条第1項(第87条の4又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)又は第7条の3第1項(第87条の4又は第88条第1項において準用する場合を含む。)の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者※第7条の3第1項が中間検査の申請
という事で、中間検査に該当する場合は必ず受験するようにしましょう。
ちなみに、中間検査を受験し忘れてしまった場合、例えば、木造の軸組工事や、鉄筋コンクリートの配筋工事などの場合ですと、目視確認ができないケースが非常に多くなるので、検査不能となります。
そうなった場合は、違反建築物として解体するまで一生涯付いてまわりますから、ホントに注意が必要です。
特定行政庁が指定する工程は、時限制度であることが多く、変更されているケースもあるので、確実に特定行政庁のホームページなどを確認しておくことが品質確保を確実に行うのに重要ですね。
では、最後に中間検査時に必要な提出書類をお伝えします。
中間検査申請に必要な書類
必要書類は、建築基準法施行規則第4条の8に規定されているもので、まとめると次表のようになります。
この規定については、建築士が行うことがメインなので、建築主さんはあまり気にしなくて良いと思います。
規則第4条の8 | 添付書類等 | 留意点 |
---|---|---|
一号 | 中間検査を受ける建築物の建築確認に要した図書及び書類 (建築確認申請書の副本) |
※建築確認を受けた建築主事等の場合は、添付不要 |
二号 | 法第7条の5(建築物に関する検査の特例)を受けようとする場合については、次の写真 ・屋根の小屋組の工事終了時 ・構造耐力上主要な軸組もしくは耐力壁の工事終了時 ・基礎の配筋の工事終了時(鉄筋コンクリート基礎に限る) ・特定行政庁が指定する特定工程終了時における構造耐力上主要な部分の軸組、仕口その他の接合部、鉄筋部分等 |
▶️検査の特例とは、一定規模等の建築物について、建築士が設計した建築物であれば、審査項目を減らせるもの。 関連記事:建築士が設計する建築物の建築確認特例とは? ▶️中間検査を受けた部分については添付不要 |
三号 | 軽微な変更説明書 | ▶️施行規則第3条の2に該当する軽微な変更があった場合 |
四号 | 特定行政庁が必要と認める書類 | ▶️各特定行政庁がにおいて規定 |
五号 | 委任状(代理者が申請する場合) |
参考情報:レオパレス21による界壁不適合事案を受けた今後の中間検査について
レオパレス21及び大和ハウス工業の不適合事案を受けて、再発防止策について専門的見地から検討を行ってきた外部有識者検討会で取りまとめ(令和元年8月2日)が行われました。
この検討会による提言において、中間検査については、次のように記載されています。
○中間検査・完了検査において、設計図書と建築物の照合方法の確認等を通じて、追補された工事監理ガイドラインに準拠して、適切に工事監理が実施されていることを確認するとともに、目視、工事写真の確認等を通じて、工事が確認図書の通り実施されたものであることを確認すべき。
○国は、特定行政庁に対して3階建て以上の賃貸共同住宅(木造・鉄骨造)について、積極的に中間検査の工程指定を行うよう要請すべき。
よって、界壁問題を受けて、中間検査においてチェックするよう工程指定がなされるものと考えられます。
なお、提言では、3階建て以上となっていますが、木造のケースでは2階建て物件が多いので、想定ですが、多くの特定行政庁で2階建て以上として界壁等の工程指定がなされるものと私は考えています。
それでは、最後までご覧いただきありがとうございました。
お役に立てれば幸いです。