日影規制の基本的な解説 〜商業地域や工業地域は対象外?〜

・日影規制が規定されている建築基準法第56の2及び法別表第4を見ても意味が分からん。
・たまに中高層建築物を担当して、日影ってどういう規定か基本的な内容を忘れてしまった…
・建築士や宅建士試験の勉強をしていて、日影規制だけが意味不明…

今回は、上記のような悩みを解決する記事です。

こんにちは!建築士のYAMAKEN(やまけん)です。

以前の仕事で建築審査等を担当していましたので「日影規制」についても審査を行なってきました。
改めて読んでみると大変読みにくい法令ですよね。
ですので、少しでも理解しやすいよう解説します。

一応、読んだ後は「日影規制」を勉強していたあの頃に戻れるはずです。
また、これから「日影規制」について勉強しなければならない方にとっても参考になるはずです。

それでは説明します。




日影規制とは

日影規制とは文字通り、建築物が及ぼす日影を規制しているものです。

具合的には、1年の中で日影の長さが一番長くなる”冬至”を基準にして測定され、午前8時から午後4時(緯度が高い北海道は午前9時から午後3時)の間に生じる”日影”を制限します。

何故、冬至かについては、夏至の際の12時頃の太陽の位置を思い浮かべてください。
冬至に比べて高い位置にありますよね?
一方で、冬至における12時頃の太陽の位置は低いですよね?

太陽の位置が低い方が建物に太陽光が当たるとその影は長くなります。
よって、最も条件が厳しくなる「冬至」を基準として測定することにしています。

次に日影規制が対象となる用途地域の説明です。

日影規制が対象となる用途地域

日影規制が対象となる用途地域は次のものです。

対象用途地域 備考
第一種低層住居専用地域 建築基準法第56条の2第1項に基づき、地方公共団体が気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの。
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
用途地域の指定のない区域

ポイント

✔︎ 住居系用途地域の全てと、近隣商業地域、準工業地域、市街化調整区域、白地地域が対象
✔︎ 対象区域内とするには、地方公共団体により条例において指定することが必須

ちなみにですが、中高層住居専用地域内では、日影規制が適用される場合、北側斜線制限は適用されないので注意が必要です。関連記事を掲載しておきますので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。

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次に対象外となる用途地域の説明です。

日影規制が対象外となる用途地域

日影規制が対象外となる用途地域は次のものです。

対象外用途地域
商業地域
工業地域
工業専用地域

ただし、注意点があり、次の場合には上記用途地域内の建築物であっても日影規制の対象となります。

対象区域外の用途地域でも日影規制の対象となるケース


・建築物の高さが10m超える建築物 かつ、

・冬至日において対象区域内の土地に日影を生じるさせる場合

 

次に日影規制の対象となる建築物と法で定める制限の内容(法別表第4)の説明です。

法別表第4について

制限を受ける建築物の高さや階数等は、用途地域によって異なります。

はじめに、「法別表第4」をご覧ください。(法別表第4だけを見ても分かり難いので加工して掲載)

(い) (ろ) (は) (に)
地域・区域 対象建築物 平均地盤面からの高さ A 敷地境界線からの水平距離≦10m
B 敷地境界線からの水平距離>10m
第一種低層住居
第二種低層住居
田園住居
軒高>7m
又は
地上階数≧3
1.5m 3(2)〜5(4)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
2(1.5)〜3(2.5)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
第一種中高層住居
第二種中高層住居
建築物の高さ>10m 4m又は6.5m
*条例で指定
3(2)〜5(4)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
2(1.5)〜3(2.5)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
第一種住居
第二種住居
準住居
近隣商業
準工業
建築物の高さ>10m 4m又は6.5m
*条例で指定
4(3)〜5(4)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
2.5(2)〜3(2.5)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
用途地域の指定のない区域 軒高>7m
又は
地上階数≧3
1.5m 3(2)〜5(4)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
2(1.5)〜3(2.5)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
建築物の高さ>10m 4m 3(2)〜5(4)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
2(1.5)〜3(2.5)時間
*時間は条例で指定
*( )書きは北海道
注)スマホの方で読みにくい方は横向きにしてみてください。

*建築基準法別表第4の基本的な考え方

 

法別表第4を確認しつつ、建築基準法第56条の2第1項を読むことが大切です。

余計な文章等を省いて、簡単に説明すると次のようになります。

建築基準法第56条の2第1項の読み方


建築物は、冬至日の真太陽時による8:00〜16:00の間において、平均地盤面からの高さ”(は)欄”の水平面に、敷地境界線からの水平距離が5mを超える範囲において、(に)欄に掲げる時間以上の日影となる部分を生じさせてはならない。

[建築基準法第56条の2第1項(抜粋)]
別表第4(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域内にある同表(ろ)欄の当該各項(4の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時まで(道の区域内にあつては、午前9時から午後3時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(4の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(2の項及び3の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が5mを超える範囲において、同表(に)欄の(1)、(2)又は(3)の号(同表の3の項にあつては、(1)又は(2)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。

補足1 平均地盤面からの高さ

平均地盤面からの高さとは、建築物が周囲の地盤と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さとなります。
*法別表第4に記載されてます。

補足2 敷地内に2以上の建築物がある場合

同一敷地内に2以上の建築物がある場合には、敷地内に一つでも日影規制の対象となる建築物がある場合には、「一つの建築物」とみなされ、日影規制の適用を受けます。

つまり、2棟あったとして、片方の棟の高さ5mの場合でも、「一つの建築物」とみなして、日影検討を行う必要があります。
なお、補足1の平均地盤面からの高さも同様に適用されるので注意が必要です。

補足3 日影規制の高さ不算入

建築基準法施行令第2条第1項第六号ロの規定により、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔等で屋上部分の水平投影面積の合計が建築面積の8分の1以内のものは、高さ5mまで算入する必要はありません。

[建築基準法施行令第2条第1項第六号ロ]
〜(略)〜、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以内の場合においては、その部分の高さは、12m(法第55条第1項及び第2項、法第56条の2第4項、法第59条の2第1項(法第55条第1項に係る部分に限る。)並びに法別表第4(ろ)欄2の項、3の項及び4の項ロの場合には、5m)までは、当該建築物の高さに算入しない。

なお、「1の項」は記載がないため、第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は対象外です。

補足4 敷地周囲との関係など

✔︎建築物の敷地が道路や水路等に接する場合(幅10m以下の場合)は、敷地境界線は当該幅*0.5だけ外側にあるとみなす。
✔︎また、当該幅が10mを超える場合は、敷地の反対側の境界線から敷地内側に5m寄った線を敷地境界線とみなす。
注)緩和の対象となる道路等ですが、これには、道路、水面、線路敷等となっており、「公園」は含まれていないことに留意ください。

✔︎敷地の平均地盤面が隣地の平均地表面より1m以上低い場合は、平均地盤面は高低差(H)ー1m*0.5だけ高い位置にあるものとみなす。
注)隣地の平均地表面の平均する範囲については、個々のケースかつ特定行政庁によって判断が異なるので、設計前に考え方を確認しておく必要があります。

上記に関しては、建築基準法施行令第135条の12に規定されていますが、文字だけだと分かり難いと思いますので、こちらの図書などを参考にしてみると良いと思われます。

また、日影時間の制限の異なる区域の内外にわたる場合の考え方等も示されているので参考になると思われます。

 

補足5 日照権

建築基準法における日影規制と日照権は別物です。

過去の判例を読んでも、日影規制がOKだとしても、日照権において損害賠償が行われているケースがあります。つまり、日影規制が適用されない商業地域だからという理由だけでは、隣地の日照権を排除できないことになります。
当然に土地周辺のこれまでの建築の状況等を鑑みる必要があるため、高度利用が行われている東京都区内を除いては、日影がどの程度及ぼすのかはしっかりと把握しておくべきです。

なお、中高層建築物の場合には、紛争防止の観点から行政側において近隣住民等への説明等を行うよう指導を行なっている場合があるので、建築計画がある場合には、事前に条例や要綱等をチェックしておく必要があります。

本記事のまとめ

日影規制の概要について解説しました。
なお、実務上における設計においては、日影計算ソフトを活用しますのでそこまで悩む必要はないかもしれませんが、日影をチェックする際には、上記の考えは必読ですので、設計担当することになったら熟読しておく必要がありますね。

建築士の方は今更感があるかもしれませんが、参考までに設計上のソフト(参考書)を紹介しておきます。

それでは今回は以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。