・建築審査会について知りたい。
・建築審査会に審査請求したい。
上記の悩みや疑問に答える記事です。
こんにちは。やまけんです。
今回は元建築行政職員としての知見を踏まえ、建築審査会について簡単に分かりやすく解説します。
普段は建築審査会について知ることはないでしょう。というか知る必要はほとんどないです。笑
ですが、覚えておけば何かの機会で使えることはあるかもしれませんよね。
一応、この記事を読めば建築審査会の概要は知ることができるようになっているはずです。
建築審査会とは
建築審査会とは、建築基準法第78条に規定されるもので、同法において特定行政庁が許可を行う際に同意が必要とされる規定及び同法第94条第1項(不服申し立て)の審査請求に対する裁決の決議と、特定行政庁の諮問に応じて、建築基準法の施行に関する重要事項を調査審議する審査会です。
[建築基準法第78条第1項]
この法律に規定する同意及び第94条第1項前段の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて、この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために、建築主事を置く市町村及び都道府県に、建築審査会を置く。
同意が必要とされる規定(概要)
建築審査会の同意が必要となる規定は次のようになりますが、普段、建築士の方々が利用するのは、接道義務規定の適用除外規定である建築基準法第43条第2項、それから総合設計制度の建築基準法第59条の2、用途地域内の建築制限に関することくらいかなと思われます。あとは、予備知識程度、建築基準法上の道路の規定(法第42条第3項と6項の指定)について知っておくぐらいでOKです。
法令 | 特定行政庁が許可を行う場合の同意など |
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法第3条第1項第三号・四号 | 文化財保護法に基づく保存建築物や保存建築物で原形を再現する建築物などについて建築基準法の適用を除外する建築物を指定する場合 |
法第42条第6項 | 建築基準法第42条第2項の規定において幅員1.8m未満の道路の指定または同条第3項道路を指定する場合 |
法第43条第2項 | 接道義務を満たさない建築物についての例外許可(旧建築基準法第43条ただし書き許可)を行う場合の許可 |
法第44条第2項 | 道路内の建築制限の特例許可 |
法第46条第1項 | 壁面線の指定 |
法第47条 | 壁面線の建築制限を超える建築物の特例許可 |
法第48条第14項 | 用途地域内の建築制限に適合しない建築物の特例許可 |
法第52条第15項 | 容積率に関する特例許可 |
法第53条第7項 | 建蔽率に関する特例許可 |
法第53条の2第4項 | 建築物の敷地面積の最低限度に関する特例許可 |
法第55条第4項 | 第一種低層住居専用地域内等における建築物の高さの限度に関する特例許可 |
法第56条の2第1項 | 日影規制に関する特例許可 |
法第57条の4第2項 | 特例容積率適用地区内における用途上又は構造上やむを得ないと認める場合の特例許可 |
法第59条第5項 | 高度利用地区内における公益上必要な建築物についての特例許可 |
法第59条の2第2項 | 総合設計の許可 |
法第60条の2第7項 | 都市再生特別地区内における公益上必要な建築物についての特例許可 |
法第67条の3第10項 | 特定防災街区整備地区内における公益上必要な建築物や用途上又は構造上やむを得ないと認める場合の特例許可 |
法第68条第6項 | 景観地区内における公益上必要な建築物や用途上又は構造上やむを得ないと認める場合の特例許可 |
法第68条の3第5項 | 地区計画又は沿道地区計画(再開発等促進区域又は沿道再開発等促進区)内における斜線制限(法第56条)の特例許可 |
法第68条の5の3第3項 | 高度利用型地区計画区域内における斜線制限(法第56条第1項一号等)の特例許可 |
法第68条の7第2項 | 予定道路の指定を行う場合 |
法第68条の7第6項 | 予定道路について法第52条第2項(幅員12m未満の道路における容積率の算定)の適用を行う場合 |
法第86条第5項、法第86条の2第5項 | 一団地認定における特例許可 |
接道義務規定の適用除外については、あらかじめ建築審査会において同意基準を一括して定めておき、特定行政庁が許可した案件を後日、審査会に報告する形式をとるというのが多くの行政庁で行われています。
というのも案件的に年に何十件も出てくるとその度に審査会を開催する必要があるため、手間と費用と申請者への配慮等からこのようにしていると考えられます。※東京都では一括同意基準を公式ホームページに掲載しています。
建築基準法第43条に関する例外許可や用途地域の制限にかかる例外許可などもそうですが、基本的には特定行政庁が許可することを前提にして建築審査会に諮ります。
ですので、『許可していいか悩むな〜、審査会に確認してみよう』みたいなことで審査会に諮ることはないです。
なので、建築審査会の同意案件の物件の計画がある場合には、例外的に許可を受けるためには限りなく高いハードルが存在することを理解しておく必要があります。
特定行政庁と十分な協議を重ね、許可を受けるに足りる対外的な理由を整理していく根拠づくりなどの作業があると思ってもらった方がいいですね。なお、用途地域の制限については、公益上必要な建築物や既存不適格建築物でやむを得ないと判断されるような例に限られると考えておきましょう。
では次に、不服申し立てについてです。
審査請求
建築基準法令の規定により、特定行政庁、建築主事、建築監視員、都道府県知事、指定確認検査機関、指定構造計算適合性判定機関が行なった処分又は不作為について建築審査会に対し審査請求することができるようになっています。
不作為とは、行政不服審査法において次のように規定されています。
[建築基準法第3条(不作為についての審査請求)]
法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
不服申し立てについては、明らかに行政庁の処分が法に照らして間違っていることが明白である場合に審査請求できると考えるのが妥当です。
普段、民間審査機関が行う処分については、最終的に特定行政庁においてチェックしているので、その段階で法に適合しないことが分かれば民間審査機関に対し指示等を行い、解決を図って行きます。
といっても審査機関は法に適合しない恐れがある場合(例えば道路など)には、事前に行政庁照会を行っているので問題が生じることはほぼないですね。
あるとすれば、防火避難規定に関する誤認などでしょうか・・・
ちょっと脱線してしまいましたが、よくある建築トラブルのような私情が介入するような事例(通行料を払っていないだとか、商業地域内で家が建築されたことで日影が生じたなど)は審査請求されるような案件とならない可能性が高いと考えていた方が良いです。
なんと言っても民法は建築基準法ではないですからね。
建築基準法に適合していることが自明であれば、それ以外の民事等にかかる内容については民事訴訟等で対応することになると認識しておきましょう。
建議(意見)についての役割もある
建築審査会はイメージ的に不服があることについての審査請求等をイメージしがちですが、それ以外についても規定されています。
それが建議です。
建議とは上申のことです。
当然建議する内容は、建築基準法の施行に関する事項についてのみとなっています。
なお、建議先は関係行政機関と規定されています。
[建築基準法第78条第2項]
建築審査会は、前項に規定する事務を行う外、この法律の施行に関する事項について、関係行政機関に対し建議することができる。
建築審査会の委員
建築審査会のメンバーは、法第79条に規定されていて、5人以上(分野は法律、経済、建築、都市計画、公衆衛生、行政)で組織するよう定められています。
市町村の審査会であれば市町村長が都道府県の審査会であれば都道府県知事が任命します。
頻繁に建築審査会を開催されている東京都さんを参考にすると分かりやすかいなと思いますので、参考までにリンクを貼っておきます。委員以外についても過去の議事録なども読むことができるので審査会の同意を得る予定の建築物を設計している方は一読しておくことをお勧めします。
本記事のまとめ
建築審査会の概要についてまとめました。
あまり使用する(普段から見るような)規定ではありませんが、接道規定の例外許可などは一度は経験することがあるかもしれませんから、頭の片隅くらいに入れておいた方が良いです。
それでは最後までご覧いただきありがとうございました。
皆さまの参考になれば幸いです。