鉄骨造の柱脚は、柱と基礎をつなぐ部分です。アンカーボルトの太さやベースプレートの厚さなど、図面で決める寸法には告示による規定があります。
構造計算をすれば、告示にある寸法や仕様はすべて外せるのでしょうか。柱脚では、計算を行っても残る規定があるため、この違いが気になるところです。
建築基準法施行令第66条と平成12年建設省告示第1456号を読みながら、露出・根巻き・埋込みの各形式について確認していきます。
3種類の柱脚形式 / ベースプレートの縁端距離 / 構造計算による仕様規定の適用除外
基礎への緊結と告示1456号
建築基準法施行令第66条では、構造耐力上主要な部分である柱の脚部を、国土交通大臣が定める基準に従い基礎に緊結することが求められています。その具体的な基準が、平成12年建設省告示第1456号です。
構造耐力上主要な部分である柱の脚部は、国土交通大臣が定める基準に従つたアンカーボルトによる緊結その他の構造方法により基礎に緊結しなければならない。ただし、滑節構造である場合においては、この限りでない。
建築基準法施行令第66条(e-Gov法令API Version 2/取得日・法令基準日:2026年10月15日)
令第66条には、上の引用のとおり滑節構造のただし書があります。以下は、基礎への緊結が求められる柱脚について、告示1456号の形式・仕様を整理した説明です。
告示が制定された背景には、平成7年の兵庫県南部地震で鉄骨造柱脚の被害が確認されたことがあります。2000年の基準整備で、柱脚の種類、寸法、形状等の仕様が明確化されました。
ただ、2000年以前に建てられたというだけでは、その柱脚が危険かどうかは分かりません。既存建築物の取得・改修では、確認の履歴や構造図と、現況の腐食・ひび割れ、アンカーボルト・基礎の状態を建築士等が照合する必要があります。
3種類の柱脚形式
告示1456号は、鉄骨造の柱脚を次の3種類に分けています。

| 形式 | 納まりの概要 | 告示の主な確認項目 |
|---|---|---|
| 露出形式 | 鉄骨柱とベースプレートを基礎上に露出させ、アンカーボルトで緊結 | ボルト配置、戻り止め、定着、ボルト断面積比、ベースプレート厚、孔径・縁端距離 |
| 根巻き形式 | 柱脚周囲を鉄筋コンクリートで根巻き | 根巻き高さ、立上り主筋の本数・定着、帯筋 |
| 埋込み形式 | 鉄骨柱の脚部を鉄筋コンクリート内に埋込み | 埋込み深さ、側柱・隅柱の補強筋、コンクリートのかぶり厚さ |
露出形式柱脚
露出形式では、基礎の上にベースプレートとアンカーボルトが現れます。上の図の納まりです。
露出形式のうち、告示第1項第1号のロ(座金・戻り止め)とハ(基礎への定着)は、施行令第82条第1号から第3号までの構造計算を行っても適用されます。
座金・戻り止めとアンカーボルトの定着
ロ:座金とナットの戻り止め
告示文
アンカーボルトには座金を用い、ナット部分の溶接、ナットの二重使用その他これらと同等以上の効力を有する戻り止めを施したものであること。
概要
座金を入れたうえで、ダブルナット、ナット部分の溶接等により、ナットが緩んで戻らない納まりを確保する規定です。
ハ:アンカーボルトの定着
告示文
アンカーボルトの基礎に対する定着長さがアンカーボルトの径の20倍以上であり、かつ、その先端をかぎ状に折り曲げるか又は定着金物を設けたものであること。
概要
原則は定着長20d以上に加え、先端のかぎ状折曲げまたは定着金物が必要です。ただし、付着力を考慮し、アンカーボルトの抜け出しとコンクリート破壊が生じないことを確かめた場合には、告示ただし書の扱いがあります。
| 部位 | 告示仕様の要点 |
|---|---|
| 配置 | アンカーボルトを柱の中心に対して均等に配置 |
| 座金・戻り止め | 座金を使用し、ナット部分の溶接、ダブルナット等の戻り止め |
| 定着 | 基礎への定着長さは原則20d以上とし、先端をかぎ状に曲げるか定着金物を設置。付着力を考慮して抜け出し・コンクリート破壊が生じないことを確認した場合は例外あり |
| 断面積比 | 柱の最下端の断面積に対するアンカーボルトの全断面積の割合は20%以上 |
| ベースプレート厚 | アンカーボルト径の1.3倍以上 |
| ボルト孔径 | アンカーボルト径に5mmを加えた数値以下 |
断面積比の分母になる「柱の最下端の断面積」は、ベースプレートの面積ではなく、角形鋼管やH形鋼など鉄骨柱自体の断面積です。これとアンカーボルトの全断面積を比較します。
ベースプレートの最小縁端距離
縁端距離は、アンカーボルトの表面から測るのではなく、アンカーボルトの中心軸からベースプレートの縁端部までの最短距離です。平面的な位置関係を図にすると、次のようになります。
| アンカーボルト径 d | せん断縁・手動ガス切断縁 | 圧延縁・自動ガス切断縁・のこ引き縁・機械仕上げ縁等 |
|---|---|---|
| d ≤ 10mm | 18mm | 16mm |
| 10mm < d ≤ 12mm | 22mm | 18mm |
| 12mm < d ≤ 16mm | 28mm | 22mm |
| 16mm < d ≤ 20mm | 34mm | 26mm |
| 20mm < d ≤ 22mm | 38mm | 28mm |
| 22mm < d ≤ 24mm | 44mm | 32mm |
| 24mm < d ≤ 27mm | 49mm | 36mm |
| 27mm < d ≤ 30mm | 54mm | 40mm |
| 30mm < d | 9d / 5 | 4d / 3 |
根巻き形式柱脚
根巻き形式は、鉄骨柱の脚部周囲を鉄筋コンクリートで覆う形式です。告示では、次の内容が定められています。
- 根巻き部分の高さ:柱幅の2.5倍以上
- 立上り主筋:4本以上とし、頂部をかぎ状に折曲げ
- 立上り主筋の定着:異形鉄筋は根巻き部分25d以上、基礎40d以上/丸鋼は根巻き部分35d以上、基礎50d以上
- 根巻き部分:施行令第77条第2号・第3号の帯筋を配置
立上り主筋の定着には、付着力を考慮して同等以上の定着効果を確かめた場合の例外があります。一方、帯筋の規定を適用しないのは、保有水平耐力計算を行った場合です。定着と帯筋では、例外の条件が違います。
埋込み形式柱脚
- 鉄骨柱の埋込み深さ:柱幅の2倍以上
- 側柱・隅柱:径9mm以上のU字形補強筋その他これに類するもので補強
- コンクリートのかぶり厚さ:鉄骨の柱幅以上
「柱幅」には、張り間方向と桁行方向の見付け幅のうち、大きい方を用います。
構造計算後も適用される仕様規定
施行令第82条第1号から第3号までの構造計算を行うと、告示第1項の仕様規定の一部が適用除外になります。ただし、露出形式のロ・ハと根巻き形式の帯筋は、次のとおり別の扱いです。
| 形式 | 構造計算を行った場合に告示上残る基準 |
|---|---|
| 露出形式 | ロ:座金とナットの戻り止め ハ:アンカーボルトの定着 |
| 根巻き形式 | ハ:根巻き部分の帯筋 ※保有水平耐力計算を行った場合は例外 |
| 埋込み形式 | 告示第1項の仕様基準は適用しない |
仮設建築物や平屋のコンテナ建築物の扱い
2025年の改正により、告示第2項として特例が整理されました。対象は、一定の仮設建築物と、コンテナその他これに類するものを利用した平屋建築物です。これらは、建築物に作用する荷重・外力に対して柱脚が構造耐力上安全であることを確かめた場合、第1項の形式別仕様によらないことができます。
ただし、仮設建築物は法第85条第2項・第6項・第7項のうち、法第6条第1項第1号又は第2号に掲げる建築物を除くという条件があります。旧条文の「1号・4号建築物」といった分類は、2025年改正後の説明にそのまま使えません。
この特例でも、風圧力・地震力による滑動、転倒、引抜き等に対する安全性は確かめます。国土交通省の技術的助言では、コンテナ等建築物は一般的な建築物より軽量なため、風による滑動・転倒のおそれがあるとされています。
柱脚詳細図と現場の納まり
柱脚形式と柱脚に作用する応力の対応を確かめ、柱脚リスト・基礎伏図・柱脚詳細図の内容をそろえます。アンカーボルトの材質・径・本数・配置・定着方法、ベースプレートの厚さ・孔径・縁端距離、ダブルナット等の戻り止めは、ここまで見てきた規定と図面を照合する箇所です。
寸法が合っていても、定着部が基礎の鉄筋と干渉すれば、そのままでは納まりません。基礎のへりあきや定着部のコンクリート破壊、アンカーフレームの位置と施工誤差も関わります。ベースモルタルやナットの締付けなどは、鉄骨建方後の現場確認まで残る項目です。
おわりに
柱脚の告示は、寸法の表だけを探していると、構造計算との関係を見落としやすい規定です。露出形式の戻り止め・定着、根巻き形式の帯筋については、仕様を外せる条件がそれぞれ違います。計算方針が決まった段階で、この違いを柱脚詳細図に反映できているか。この記事が、その照合に役立てばと思います。
参考:建築基準法施行令(e-Gov法令検索)/国土交通省告示第215号(告示1456号の2025年改正)/コンテナ等建築物に関する国土交省技術的助言












