この記事を読むことで建築物の居室の『採光計算』の基礎を知ることができます。
建築試験勉強や確認申請図書作成において作業時間の短縮が図れるようになるはずです。(*応用編ではないので、ご注意ください)
こんにちは!建築士のやまけんです。
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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。
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目次
はじめに、勘違いしてはいけないこと
はじめに建築設計における採光計算において勘違いしてはならない事項があります。
法第28条第1項の採光計算と採光無窓計算は別もの(別規定)です。
これって、分かっている人には理解できないかもですが、採光計算は法第28条第1項の規定だけだと勘違いしてしまう方が少なからずいます。そうではない事を知っておくだけで、混同した間違いをすることがなくなります。
どういうことかと言うと、法第28条第1項に基づく採光を確保しなければならない建築物は用途が決められています。
一方で採光無窓計算とは、法第28条第1項が適用される建築物の用途に関わらず建築物の居室一律に適用されます(厳密には、木造建築物や特殊建築物など)。
いわゆる政令第111条第一号or第116条の2条第1項第一号の規定による、20分の1採光のことです。
これを勘違いしてしまい、採光無窓計算を忘れてしまって、設計を行ってしまう例を見たことがあります。
まずはこのことを確認した上で次に進んでください。
法第28条第1項の規定による採光計算とは?
建築物の居室(建築基準法第28条第1項に限る)は、法律で規定する採光を確保しなければなりません。
まずは法律を確認します。
[建築基準法第28条第1項及び4項]
1 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前3項の規定の適用については、1室とみなす。
この法文を分解すると次のようになります。
[採光計算が必要となる対象の部分]
・住宅、学校、病院、診療所、下宿その他政令(令第19条第1項→同条第2項)で定める居室
[採光に有効な部分]
・採光に有効な窓等の面積は、住宅の場合は居室の床面積の「7分の1」、住宅以外の場合は居室の床面積の「5分の1〜10分の1」で政令(令第19条第3項)で定める割合以上
[法第28条第1項が適用されないケース]
・地階、地下工作物内に設ける居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室(平成7年5月25日「採光のための開口部を設けることを要しない居室について」:建設省住宅局建築指導課長)
上記の内容だけでは理解するのに不十分なので、次からは、具体的な採光計算方法が定められている規定(政令第20条)を踏まえながら説明していきます。
法第28条第1項の採光計算が必要となる建築物の用途と採光の割合
有効採光面積÷居室の床面積は、次の表に掲げる割合以上としなければなりません。
[割合] 有効採光面積÷居室床面積 |
建築物の用途 | 建築物の部分 | 告示緩和後の[割合] (昭55年建告1800) |
---|---|---|---|
5分の1以上 | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校又は幼保連携型認定こども園 | 教室 | 7分の1以上 |
音楽教室、視聴覚教室 | 10分の1以上 | ||
保育所、幼保連携型子ども園 | 保育室 | 7分の1以上 | |
7分の1以上 | 住宅 | 居室 | ー |
寄宿舎 | 寝室 | ー | |
下宿 | 宿泊室 | ー | |
児童福祉施設等(保育所を除く) *児童福祉施設等:施行令第19条第1項 |
寝室(入所者) | ー | |
保育、訓練、日常生活に必要な便宜の供与その他これらに類する目的のために使用される室(入所者・通所者) | ー | ||
10分の1以上 | 大学、専門学校など(5分の1以上を確保する学校を除く) | 教室 | ー |
病院、診療所、児童福祉施設等 | 談話・娯楽室(入院患者・入所・通所者) | ー |
上記のうち、緩和する方法ですが、告示(昭和55年12月1日「照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準等」)に規定されています。
緩和条件が定められており、学校や保育所などについて規定されていますが、最も汎用性が高いのは、保育所等かなと思いますので、上表にも緩和後の割合を記載していますが、改めて掲載します。
[基本割合] 有効採光面積÷居室床面積 |
建築物の用途 | 建築物の部分 | 告示緩和後の[緩和割合] (昭55年建告1800) |
緩和条件 |
---|---|---|---|---|
5分の1以上 | 幼稚園、幼保連携型認定子ども園 | 教室 | 7分の1以上 | 床面において200lx(※)以上の照度を確保する照明設備を設置する |
保育所、幼保連携型認定子ども園 | 保育室 |
(※)200lxのレベルとは、室内は明るいですが、作業するには少し手元が暗いかな?と感じる程度です。
では、次に、有効採光面積の算出方法の説明です。
有効採光面積とは(基本を理解)
有効採光面積は、建築基準法施行令第20条に規定されており、次のように計算されます。
有効採光面積=W*A(d÷h *aーb)
d:窓の直上にある建築物の各部分から隣地境界線等までの水平距離
h:窓の中心から直上の建築物の各部分までの垂直距離
a:住居系用途地域6、工業系用途地域8、商業系用途地域・無指定10
b:住居系用途地域1.4、左記以外1
注)Aの最大値は3、天窓(トップライト)はA*3、窓の外側に縁側(ぬれ縁を除き、幅≧90㎝)がある場合はA*0.7
注)ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は1室とみなされる
開口部に面する隣地が公園や水路、道路などの場合の『d』
建築確認申請における採光計算のポイント
明らかに採光OKの居室について、採光補正係数の計算が面倒な場合、道(建築基準法上の道路)に面する場合は、A=1として計算することをおすすめします。
また、同様に隣地境界線に面する場合で、明らかに採光が確保できる距離が取れている場合もA=1でも問題ありません(現に私はそれでもOKとして審査していた経験があります)。
理由は簡単ですよね。採光計算がすぐに終わるからです。
明らかに採光計算がOKなのに、開口部の全てや距離ごとに応じた詳細な計算をするのは無駄です。
計算する場合は、Aを1とした場合で採光がOUTになる場合のみ詳細に計算します。
さらに採光計算の詳細に知りたい方へ
ここまで読んで頂きありがとうございました。
採光計算の基本を知ることができていれば幸いです。
これよりも更に詳しく知りたい場合はこちらの書籍がおすすめです。
今後、採光の考え方が変わるかもしれない?
採光とは居室の日照確保が目的ですが、自然光を人工的に常に取り入れることができるようになればどうでしょうか。
どうしても一部の居室で日照を確保できない場合には、人工太陽光による対応も可能となる時代も来るんじゃないかと個人的に思っています。
そのような開発が三菱電機さんで進められています。詳しくはこちら(外部リンク)をどうぞ。