この記事では、風俗営業法に基づく風俗営業系施設が立地可能な用途地域のまとめです。逆を読めば、風俗営業系施設の建築ができない用途地域を知ることで、これら施設が立地する可能性がある用途地域への居住(転居)を避けることが可能です。
特に、これから子育てを予定していて、引越しを考えているけど、治安や騒音等に対して少しでもリスクを減らしたいと考えている方は参考にしてみてください。
こんにちは!建築士のやまけん(@yama_architect)です。建築や都市に関する行政経験を活かして、これから建築を予定されている方、建築士、不動産関係者向けにためになる情報を発信しています。
では、はじめに風俗営業施設を知りましょう。
風俗営業系施設とは
風俗営業系施設とは、風俗営業法第2条に規定される施設(下記の表を参照)のことをいいます。
皆さんがご存知のカラオケボックスやボーリング場は風俗営業法に規定される施設ではありません(ただし、深夜まで酒類の提供を行う場合には対象となります。)
なお、実際には騒音や治安上の問題を抱えるケースがあるため、この記事では類似施設として、どの用途地域に建築可能な説明します。
種類 (風俗営業法第2条) |
概要 |
---|---|
一号施設 | キャバレー、待合、料理店(※一般的な飲食店ではありません!)、カフェー(※一般的なカフェではありません。詳しくは太宰治の『人間失格』を読みましょう)。その他設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食させる営業 |
二号施設 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計った営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの(一号施設に該当するものを除く) |
三号施設 | 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5㎡以下である客席を設けて営むもの |
四号施設 | 麻雀屋、パチンコ屋その他設備を設けて客に射幸心(※幸運を得たい気持ち)をそそる恐れのある遊技をさせる営業 |
五号施設 | スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則※1で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令※2で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(四号施設を除く)
※1
※2 三 遊園地(メリーゴーラウンド、遊戯用電車その他これらに類する遊戯施設を設け、主として当該施設により客に遊戯をさせる営業の用に供する場所で、その入場について料金を徴するものをいう。)内の区画された施設
|
風俗営業系等の施設と用途地域の関係
こちらの表は、建築基準法で列挙される風俗営業系施設のほか、カラオケボックスやボーリング場などの施設がどの用途地域で建築可能かを示したものです。なお、二号・三号施設については、一般的に商業地域以外での建築はほぼ考えらないので説明を省略します。
表 建築基準法の規定による風営法等関係施設の立地制限(参考表)
第一種低層住居専用・第二種低層住居専用・第一種中高層住居専用・田園住居・工業専用 | 第二種中高層 | 第一種住居 | 第二種住居・準住居・近隣商業 | 商業地域 | 準工業 | 工業 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
キャバレー、料理店等 ※一号施設関係 |
✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ⭕️ | ⭕️ | ✖️ |
個室浴場、ヌードスタジオ、のぞき劇場、ストリップ劇場、専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設、専ら性的好奇心をそそる写真その他の物品の販売を目的とする店舗 | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ⭕️ | ✖️ | ✖️ |
麻雀店、パチンコ店、射的場等 ※四号施設関係 |
✖️ | ✖️ | ✖️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ |
ボーリング場 | ✖️ | ✖️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ |
カラオケボックス | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ |
遊技場 ※五号施設関係 |
✖️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ |
注1)上記の他、店舗型性風俗に関する施設については、風俗営業法第28条等に基づき自治体の条例により制限を別途定めており、多くは住居系用途地域の建築を不可とし、かつ学校や児童福祉施設等の近隣には建築できないよう立地制限を行なっています。詳しくは各自治体の条例を確認ください。
注2)二種中高層地域は2階以下かつ床面積1,500㎡以下、一種住居地域は床面積3,000㎡以下、工業地域は床面積10,000㎡以下
注3)都市計画法に基づく地区計画の指定により、用途地域上は建築可能でも施設の立地を制限している場合もあるので、自治体が定める地区計画(地区整備計画)を確認してください。
子育て環境に優れている用途地域
少しでも良好な住環境を確保したいのであれば、第一種低層住居専用・第二種低層住居専用・第一種中高層住居専用・田園住居の4地域に限られます。なお、これら用途地域では工場の立地も制限されるため、周辺環境が悪化する恐れが少ないです。
ただし、商業系用途地域の縁辺部付近であれば、上記の風俗営業系施設が立地する可能性があるため、留意する必要があります。また、田園住居については、平成30年4月に施行されている新しい用途地域のため選択肢になる程の面積が全国にありません。
ということで今回の記事は以上です。参考となれば幸いです。