結論:開発許可を受けた区域では、都市計画法第36条第3項の工事完了公告が出るまで建築着工は原則できません。例外は工事用仮設建築物、権利行使としての建築、または許可権者が「支障がない」と認めた場合です。一方、建築確認申請は法第37条の承認そのものではありません。確認済証が出ても、第37条の制限を越えて着工できるわけではありません。
「開発行為の工事が終わりそうだから、建物の確認申請だけ先に進めたい」「確認済証が下りれば基礎工事に入ってよいのか」。この二つは、似ていますが法律上は別の話です。東日本大震災以降、私のところでも相談が多かった論点の一つでした。ここを曖昧にすると、確認申請は進んだのに現場へ入れない、ということが起きます。
なぜ完了公告前に建築できないのか―法第36条と第37条を続けて読む
都市計画法第36条(要旨)
e-Gov 都市計画法第36条
開発許可を受けた者は工事を完了したとき、その旨を都道府県知事等へ届け出ます。知事等は検査を行い、許可内容に適合していれば検査済証を交付し、工事が完了した旨を公告します。
都市計画法第37条(抜粋・強調は筆者)
e-Gov 都市計画法第37条
開発許可を受けた開発区域内の土地においては、前条第3項の公告があるまでの間は、建築物を建築し、又は特定工作物を建設してはならない。ただし、工事用の仮設建築物等を建築するとき、その他都道府県知事が支障がないと認めたとき等はこの限りでない。
開発工事から建築着工までの流れ
- 開発工事
- 完了届
- 法36条の検査
- 検査済証の交付・完了公告
- 建築着工
法第37条が着工の基準点にしているのは「工事が終わった日」ではなく、第36条第3項の「公告」です。
理由は単に事務手続の順番だからではありません。開発許可は、造成面だけでなく道路、排水施設、擁壁、公園などを許可図書どおり整備させる制度です。第36条の検査と公告を経ないまま建築工事が重なると、未完成の排水や擁壁を使い始め、是正のための重機動線も塞ぎかねません。さらに公共施設の管理・帰属は法第39条・第40条により完了公告を基準に動きます。第37条は、宅地の完成確認と建築着工の順序を法的に固定する役割を持つ、と読むと腑に落ちます。
確認申請を先に出せる理由と、確認済証だけでは着工できない理由
建築確認は、申請された計画が「建築基準関係規定」に適合するかを確認する手続です。その範囲は建築基準法第6条と施行令第9条で定まります。施行令第9条第12号には都市計画法第29条、第35条の2、第41条第2項、第42条、第43条、第53条などが並びますが、第36条・第37条は列挙されていません。
建築基準法施行令第9条第12号(要旨)
e-Gov 建築基準法施行令第9条
都市計画法第29条第1項・第2項、第35条の2第1項、第41条第2項、第42条、第43条第1項、第53条第1項等を建築基準関係規定とする。
したがって、法第37条の承認は確認検査機関が代わりに出すものではありません。確認申請を先行できるかは、開発許可の変更が残っていないか、完成予定道路を建築基準法第42条第1項第2号道路として評価できる段階か、敷地の安全性を示せるかなど、確認審査に必要な前提が固まっているかで決まります。申請を受け付けてもらえることと、確認済証を交付できること、さらに現場へ着工できることを分けて考えてください。
手続ごとの判断主体
- 開発完了検査・公告:開発許可権者が、許可図書どおりに開発工事が完成したかを確認します。
- 法37条ただし書承認:開発許可権者が、公告前の建築でも開発工事・公共施設・安全確保へ支障がないかを判断します。
- 建築確認:建築主事・指定確認検査機関が、申請計画の建築基準関係規定への適合を確認します。
- 道路管理・占用等:道路管理者等が、帰属・認定時期や工事車両の出入りを確認します。
確認検査機関には、都市計画法第37条の行政判断を代替する権限はありません。
第37条ただし書承認が必要になる場面
- 工事用仮設建築物:開発工事そのものに必要な現場事務所等。用途・存置期間を明確にします。
- 許可権者が支障なしと認める建築:防災上必要な工事との一体施工、公共・公益施設、工程上分離が困難な大規模開発など。単に工期を短縮したいだけでは足りない運用が一般的です。
- 同意していない権利者の権利行使:法第33条第1項第14号の同意をしていない者に関する例外です。開発者が任意に使える抜け道ではありません。
例えば千葉県の開発許可制度の手引は第37条承認の考え方を示し、埼玉県は承認申請様式を公開しています。横浜市のように市が許可権者となる場合もあります。名称が「承認」「建築承認」「制限解除」など異なるので、許可通知書に記載された窓口へ確認するのが確実です。
実務で先にそろえる資料
- 開発許可通知書、変更許可・軽微変更の履歴
- 許可土地利用計画図、造成・擁壁・排水・道路縦横断図
- 工程表(完了検査、是正、検査済証、公告の予定日を別々に記載)
- 建築配置図との重ね図、工事車両動線、仮設計画
- 公告前着工が必要な理由と、開発工事へ支障を生じさせない対策
- 完成予定道路の帰属・認定・建築基準法上の道路種別の見込み
結論はシンプルです。確認申請を進めることはあり得る。しかし建築着工は、完了公告か第37条ただし書承認のどちらかを確認してから。工程表には「造成工事完了日」だけでなく「公告予定日」を入れ、開発許可権者と確認審査側へ同じ図面・同じ工程を見せることが、いちばん確実です。











