「都市・地域交通戦略推進事業」と「総合交通戦略」との違いとは?分かり難い事業を簡単に解説

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この記事では、国土交通省の補助事業の一つである「都市・地域交通戦略推進事業」について解説しています。
*はじめに、記事執筆時点における国の公表資料ベースに記事を書いています。制度の変更等があれば記事を更新していますが誤記等があるかもしれませんのでご了承ください。

こんにちは。やまけん(@yama_architect)といいます^ ^
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それでは、簡単ですけど説明していきます。




都市・地域総合交通戦略と推進事業との関係

都市・地域総合交通戦略(いわゆる交通戦略)と推進事業制度との関係性を確認した際に、戦略を策定しないと戦略に基づく補助事業(都市・地域交通戦略推進事業)を実施することが出来ないと思ってしまうのですが、実は制度要綱上は戦略を策定しないでも推進事業の適用を受けることが可能となっています。

というか、都市・地域総合交通戦略と都市・地域交通戦略推進事業って違いが全くわからん!!というのがあたり前だと思います。だってめっちゃ分かり難いですもん・・・

ではでは、戦略と推進事業との関係ですが、

「都市・地域交通戦略推進事業制度要綱第3条」の「整備地区」に関係してきます。

整備地区は、一号は個別法に基づく地区、二号が「都市・地域総合交通戦略要綱」に基づく総合交通戦略において都市交通施策や実施プログラム等を内容とする戦略の区域のことをいいます。

つまり、二号による戦略を策定(正しくは戦略について国土交通大臣の認定を受ける)することで推進事業を実施することができるのはもちろんのこと、戦略要綱に基づく交通戦略を策定しなくとも一号の個別法に基づく区域においても実施することが可能になっています。

では、その一号で示す実施区域ですが、次のように規定されています。

法律名区域備考
都市再生特別措置法第81条第1項、法第81条第2項第2・3号立地適正化計画で定められる都市機能誘導区域および居住誘導区域
バリアフリー新法第25条第1項、法第25条第2項第1号移動等円滑化基本構想で定められる重点整備地区定めることが確実と見込まれる場合も可
歴史まちづくり法第5条第8項歴史的風致維持向上計画で定められる重点地区定めることが確実と見込まれる場合も可
踏切道改良促進法第4条地方踏切道改良計画に定められる改良を行う区域定めることが確実と見込まれる場合も可
都市・地域交通戦略推進制度要綱第3条第一号(整備地区)

なお、国によりますと、令和2年3月現在で「都市・地域総合交通戦略」を策定している自治体が108地区(うち、大臣認定を受けたのは、72地区)となっています。なお、複数の市町村で構成する都市圏で認定を受けている事例もあります。

ということで、都市・地域総合交通戦略を策定しなくても例えば立地適正化計画に位置付けている事業やバリアフリー基本構想に基づく事業なども補助対象になりえます。国の推進事業に関する概要資料をご覧になると分かるのですが、「等」という文言が入っているのが分かると思いますw
*注)最終判断は国交省となります。

*出典:都市・地域交通戦略推進事業の概要(出典:国土交通省https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_gairo_fr_000015.html

でははじめに戻りまして、「都市・地域交通戦略推進事業」とは何かについて簡単に説明します。

都市・地域交通戦略推進事業とは?

この推進事業ですが、ちょっとややこしいんです。

事業の中に事業が位置づけられてます・・・。
推進事業とは、都市・地域交通戦略推進事業制度要綱第2条の定義に規定されてまして「都市交通システム整備事業」のことをいいます。

でもって、都市交通システム整備事業とは、”都市交通の円滑化と都市再生の推進を図るために行われる徒歩・自転車・自動車・公共交通など多様なモードの連携が図られた自由通路・地下街・駐車場等の公共的空間や公共交通などからなる都市の交通システムを明確な政策目的に基づいて総合的に整備”することをいいます。

「??ちょっとつまりなんなん?」と思ってしまいがちですが、つまるところ、多極ネットワーク型コンパクシティの形成の推進を図る立地適正化計画の一躍を担うものだと考えればOKだと思います。特にネットワークの構築部分に国が手厚く支援しますって感じです。

ですので基本的な考え方としては立地適正化計画のネットワーク部分のうち主にハード整備に対応するのが都市・地域交通戦略推進事業です。なお、地域公共交通計画策定後の特定事業においてはソフト・ハード整備(主に公共交通のみに特化)を行うことも可能となっています。
*この部分については非常に分かり難いので、後日、記事にしたいと思います。

なお、推進事業を実施するにあたり、都道府県知事、市町村長、法定協議会、都市再生推進法人等において「都市交通システム整備事業の整備計画」を策定する必要があります。ちなみに、この整備計画についても補助対象となります。

補助率

補助率は、原則として3割補助となります。

ただし、立地適正化計画に位置づけられた事業のうち都市機能誘導区域等で行われるものについては、5割補助となります。
*次の表に記載してあるのが補助率5割となるエリア等です。

エリアの要件等
立地適正化計画に位置づけられた事業次の全ての要件に該当する区域
①居住誘導区域内でかつ40人/ha以上の区域または都市機能誘導区域
②人口集中地区(DID地区)
③駅(ピーク時間運行本数3本以上/片道)から半径1kmまたはバス・軌道の停留所(ピーク時間運行本数3本以上/片道)から半径0.5km
④公共用地率15%以上の地域(予定も含む)
立地適正化計画に位置づけられた事業(複数市町村の共同作成)次の全ての要件に該当する区域
①居住誘導区域内でかつ40人/ha以上の区域または都市機能誘導区域
②人口集中地区(DID地区)
③中心拠点区域に接続する駅(ピーク時間運行本数3本以上/片道)から半径1kmまたはバス・軌道の停留所(ピーク時間運行本数3本以上/片道)から半径0.5km
④中心拠点区域の中心から半径30kmの範囲
⑤市街化区域または用途地域内(非線引き区域)
⑥公共用地率15%以上の地域(予定も含む)
滞在快適性等向上区域
*立地適正化計画を推進していない市町村
滞在快適性等向上区域へのアクセス等に寄与し、歩道または自転車の整備等と一体的に整備する都市交通施設の整備に係る事業
*将来にわたり40人/ha以上を維持でき、立地適正化計画によらない持続可能な都市づくりを進めている市町村に限定
都市再生緊急整備地域等法定協議会が行う交通ターミナル戦略に位置づけられた事業
*滞在快適性等向上区域または都市再生緊急整備地域
補助率が5割となるエリア等の概要

では、次に補助対象者についてです。

補助対象者は?

推進事業の補助対象者は、地方公共団体のほか、都市再生推進法人、認定地域来訪者等利便増進活動実施団体、独立行政法人都市再生機構、法定協議会に対して補助することとなります。

なお、地方公共団体が補助対象事業者となる場合については、社会資本整備総合交付金のメニューの都市・地域交通戦略推進事業として交付され、地方公共団体以外の協議会等については都市・地域交通戦略推進事業補助金が適用される体系となっています。

近年の傾向ですが、地域公共交通計画等の策定等に対する補助対象者が法定協議会になるなど、協議会の役割が重要になっているので、自治体職員の方は法定協議会の運営に力を入れていった方が今後の都市政策にも有利に働くものと思われます。

では、どういった協議会が推進事業の対象者となるのかですが、次の7つの法律に基づく協議会となります。

例えば、都市再生特別措置法ですと、都市再生特別措置法第117条に規定されている市町村都市再生協議会、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の場合ですと、法第6条に協議会を定めることができるとされています。

都市・地域交通戦略の補助対象となることができる協議会

・中心市街地活性化法
・都市再生特別措置法
・都市鉄道等利便増進法
・高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
・地域公共交通の活性化及び再生に関する法律
・地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律
・踏切道改良促進法

では次に補助対象となる事業について解説します。

推進事業の補助対象事業とは?

補助対象となる事業は、大きく3つの事業に括られています。このうち、一部の事業については、全体事業費として1億円以上の事業とするなど規定されています。

  1. 都市交通システム整備事業の整備計画の作成等に関する事業
  2. 公共的空間等の整備に関する事業
  3. 公共的空間または公共空間の整備に併せて実施される事業

上記の3つについて詳しく説明すると次の事業となります。

①都市交通システム整備事業の整備計画の作成等に関する事業とは

事業名補助対象の概要
整備計画の作成に関する事業現況調査、基本構想の立案、土地利用・都市施設等の総合的な計画の立案、整備手法の調査、駐車場整備計画の策定、駐車場有効利用促進計画の策定、整備計画策定の一環として行う交通・情報実験(公共的空間等の整備を行う施設の位置、規模等を検討するものに限る)
交通まちづくり活動推進事業以下の3つのいずれかに事業に基づくものかつ公共交通の利用を効果的に促進するための公共交通実態分析、アンケート調査、専門家の派遣、社会実験等に要する費用
・立地適正化計画に位置付けれている事業
・交通ターミナル戦略に基づく事業
・地区交通戦略(国土交通大臣認定)に基づく事業
スマートシティの推進に資する社会実験スマートシティ官民連携プラットフォームの加入者が行う事業で、公共交通における自動運転バスの実装に向けて取り組む社会実験

②公共的空間等の整備に関する事業とは

事業名補助対象の概要
公共的空間等が整備される敷地の整備建築物等除却費及び敷地の総額*(公共的空間及び都市情報システム等の床面積の合計/建築物の延べ床面積)=建築部等除却費及び整地費の補助対象額
公共的空間の整備歩行者通路、広場、人工地盤、公開空地等の整備
*共同利用の通路等は3/4を乗じた額
歩行空間の整備次の3つのいずれかの事業
・立地適正化計画に位置づけられた事業でかつ都市機能誘導区域内の歩行空間の整備
・交通ターミナル戦略策定地区内の歩行空間の整備
・地区交通戦略(国土交通大臣認定)策定地区内の歩行空間の整備
駐車場の整備立地適正化計画及び低炭素まちづくり計画に位置づけられている駐車場(駐車場台数が概ね100台以上)の整備等
駐車場有効利用システムの整備駐車場案内システム等の整備
観光バス駐車場の整備観光バス駐車場の不足により円滑な道路の確保に著しい支障が生じている区域において、地方公共団体が作成する観光バス受け入れ計画に基づき観光駐車場(駐車台数が5台以上)の整備
荷捌き駐車施設の整備荷捌き駐車施設(1ha以上の区域または10店舗以上の地上権者等を対象とする荷捌きのための駐車施設)の整備
自転車駐車場の整備自転車駐車場(200台以上)の整備。なお、立地適正化計画に位置づけられた事業で、かつ、交通戦略(大臣認定)に位置づけられた事業+地域公共交通再編事業の停留所に設置する場合は50台以上
バリアフリー交通施設の整備バリアフリー基本構想の重点地区または交通ターミナル戦略策定地区内において行われるエレベーター、エスカレーター、動く歩道、ユニバーサルデザイン対応駐車場等の施設の整備
シェアサイクル設備の整備シェアサイクリングの導入に必要なサイクルポート、サイクルポートのゲート、精算機・登録機等の整備
路面電車・バス等の公共交通に関する施設の整備路面電車・バス等の公共交通に関する停留所、車両基地、軌道緑化等の施設の整備

公共的空間または公共空間の整備に併せて実施される事業

事業名補助対象の概要
都市情報提供システムの整備交通、施設案内、経路案内、イベント、防災等に関する情報を映像により、または視覚障害者に提供するための施設の整備
地下交通ネットワークの管理安全施設の整備地下交通ネットワークの管理情報システム、防災施設、空調施設の整備または道路等公共施設の地下に設けられる地下ネットワークの出入口として民有地に設けられる共同利用施設の整備
歩行活動の増加に資する施設の整備ベンチ等の休憩施設、植栽施設、電源設備、給排水設備、パークレット等の景観形成または街路空間の利活用の増進に資する施設の整備
公共交通機関の利用促進に資する施設の整備路面電車・バス等の路面公共交通機関に係る停留所の施設、シェルター、架線柱、高度な交通結節機能を有するトランジットセンター等の歩行の円滑化に資する施設の整備
スマートシティの推進に資する情報化基盤施設等の整備公共公益施設と一体的に整備する
・センサー、ビーコン、画像解析カメラ、スマートライト等
・公共交通における自動運転バスの実装に必要な自動運行を補助する施設(磁気マーカー等)
*スマートシティ官民連携プラットフォームの加入者が整備する施設

まとめ

この記事では、都市・地域交通戦略推進事業の概要をまとめてみました。
主な特徴の一つとして、地方公共団体が実施する場合には社会資本整備総合交付金(都市・地域交通戦略推進事業)、また、法定協議会も補助事業を実施することが可能となっています。

また、補助率は1/3(立地適正化計画の誘導区域等で行う場合には1/2)となります。

近年の傾向として、法定協議会で政策決定・実施するような流れが出来ているので、今後もこのような流れは進むと思います。

ちょっと分かり難い解説となりましたので、次回は、都市・地域総合交通戦略についても解説していきたいと思います。






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