この記事では、密集市街地整備法の概要と不動産取引における重要事項説明に必要な知識をお伝えしている記事です。
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密集市街地とは?
密集市街地とは、「老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、十分な公共施設が整備されていないことその他当該区域内の土地利用の状況から、その特定防災機能が確保されていない市街地」をいいます。
なお、特定防災機能とは、火災・地震が発生した場合に延焼防止上及び避難上確保されるべき機能のことをいいまして、つまるところ、高密度に木造建築物(耐火・準耐火以外)が建築されている市街地のうち、その改善を効率的に図るためにつくられた法律です。
法律の制定は平成9年でして火災による死者が多かった兵庫県南部地震(平成7年)以降に制定されています。
都市の防災を確保する上では木造密集市街地の解消が重要ですので、都市計画においても地域地区として「特定防災街区整備地区」と、地区計画として「防災街区整備地区計画」を指定することが可能となっています。また、「防災街区整備事業」といって両地区内において市街地再開発的な事業を実施することが可能です。
この上記の3地区については後述する重要事項説明と大きく関わります。
特定防災街区整備地区の指定数
国土交通省が公表している「都市計画施行状況調査」によると令和2年3月末時点で、東京都、大阪府、兵庫県で11地区指定されています。
- 東京都:新宿区、墨田区、品川区、目黒区、世田谷区、豊島区、北区、板橋区
- 大阪府:岸和田市、門真市
- 兵庫県:加古川市
続いて、防災街区整備地区計画の指定数についてです。
防災街区整備地区計画の指定数
国土交通省が公表している「都市計画施行状況調査」によると令和2年3月末時点で、東京都や大阪府を中心に39地区指定されています。
- 北海道:札幌市
- 東京都:品川区、大田区、世田谷区、渋谷区、足立区、北区、葛飾区、江戸川区
- 新潟県:糸魚川市
- 大阪府:豊中市、寝屋川市、守口市、門真市、尼崎市
- 沖縄県:那覇市
重要事項説明義務のある法律の規定
密集市街地整備法のうち、重要事項説明の対象となるのは、宅建業法施行令に定められており、その条項と概要は次のようになります。
重要事項説明の対象となる地域は中心市街地や防火地域・準防火地域などのいずれも限定されている地域となるのと、都市計画で指定されているため容易に調査することが可能でかつ説明内容も簡単です。
簡単ではありますがその説明内容をまとめました。
参考になれば幸いです。
条項 | 概要 |
---|---|
法第33条第1項 | 防災街区整備地区計画区域内においては行為着手の30日前までに市町村長に届出 *いわゆる地区計画区域内の届出と同じ。重要事項説明を行うためにも都市計画(地区計画)においてどのような制限が定められているのか、自治体のホームページで確認(不明な点は職員に対しヒアリング)し、その内容を説明します。 |
法第33条第2項 | 第1項の変更規定。変更する場合には変更する行為に着手する30日前までに市町村長に届出 |
法第197条第1項 | 防災街区整備事業(東京都など5都市14地区*令和2年3月末時点)の施行区域内において土地の区画形質の変更等を行う場合に都道府県知事等の許可が必要となるもの *防災街区整備事業が行われている場合には、周辺状況から明らかに分かると思いますので、事業は完了しているのか事業中なのか、事業中であればその事業の概要について確認し説明を行います。 |
法第230条 | 防災街区整備事業の事業区域内において、権利変換期日以後個別利用区内の宅地又はその使用収益権を取得した者は、工事完了の公告があるまでは、当該宅地について使用し、又は収益することができないとするもの |
法第283条第1項 | 防災都市計画施設(都市計画で定める都市施設)の区域内において、建築物の建築を行おうとする者は、事前に都道府県知事等の許可を受けなければならないとするもの |
法第294条 | 防災再開発促進地区(防災街区整備方針で定められる区域)で締結される避難経路協定については、協定締結後に土地所有者となったものについても効力が及ぶとするもの(承継効) |
法第295条第5項 | 防災再開発促進地区(防災街区整備方針で定められる区域)で締結される避難経路協定については、協定締結後に土地所有者となったものについても効力が及ぶとするもの(承継効)*新たに避難経路協定に加わった者にも効力が及ぶとするもの。 |
法第298条第4項 | 防災再開発促進地区(防災街区整備方針で定められる区域)で締結される避難経路協定について、一人協定の場合には、協定認可の日から起算して3年以内において避難経路協定区域内の土地に2以上の土地所有者等が存することになった時の効力が及ぶとするもの。 |