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住みやすく質の高い賃貸住宅が足りていない?

こんにちは。やまけん(@yama_architect)です。
やまけんブログでは、建築や都市計画、宅建に関して業務に役立つ豆知識などを発信しています♪

今日の話は、「質の高い賃貸住宅」の供給量が圧倒的に足りていないんじゃないかって話です。




全国の空き家数は約846万戸

平成30年に実施された「住宅・土地統計調査」によると日本全国の空き家総数は8,488,600戸でした。

空き家率は13.6%と、前回の平成25年調査に比べて26万戸も空き家が増加しています。

この空き家のうち、賃貸用空き家は4,327,200戸あります。

しかしながら、全ての空き家がすぐに利用できる賃貸住宅ではなく、一般的に賃貸住宅として使用される「長屋」や「共同住宅」でかつ腐朽・破損していない賃貸住宅はそれぞれ、長屋で195,600戸、共同住宅で3,171,100戸、合計で3,366,700戸程度にとどまります。

実態は、将来、建て替えを考えており入居を停止している住宅やリフォーム・リノベーションをしないと使用できないような物件や旧耐震の物件を除くと、この総数の半分程度、150万戸前後と考えるのが妥当かと思います。

ちなみに、腐朽・破損している賃貸住宅は約81万戸あることが分かっていますので、この倍の数字は通常の使用に耐えられない物件じゃないかと思います。

住宅総数が6,242万戸ですから、賃貸住宅の実態的な空室は全体の2〜3%とみれば不足感があります。

最低の省エネ性能を備えた賃貸住宅は少ない

省エネ性能や居住環境に大きく作用するペアガラス(複層ガラス)を全てに設けた「長屋」と「共同住宅」は、総数が17,545,900戸に対して1,513,200戸しかありません

つまり、省エネ性能の高い住宅は全体の9%程度しか普及してないのです。

おそらく、平成11年の省エネ基準(次世代省エネ基準)にも該当していない建築物が賃貸住宅の9割を占めているということです。

このような状態で、多くの方が質の高い住宅に居住するのは困難になると考えられます。
*現行では、平成28年基準

先ほどの空き家数を考慮すると、空き家のうち15万戸前後しか最低基準の省エネ性能を満たしていないものと思いますから、日本の賃貸住宅がいかに質の低いかが想像できちゃいます。

それなら、設備性能の高い持ち家住宅を購入しようと考えてしまうのも当然ですよね。

質の高い賃貸住宅が求められている

ライフスタイルを選択するのは個人の自由ですからどのような賃貸住宅を選択するかは個人の価値観に委ねられているのは分かります。

けれど、本当は、暑くない、寒くない、騒音問題も起きないような物件に住みたいのが誰もが持っている本音だと思います。

誰も、冬寒くて夏暑い、隣や上下階の居住者の生活音がうるさい、オートロックがない、宅配ボックスがない、防犯カメラがないといった住宅には住みたくないですよね。

優良物件に住むことができる居住者は限られているということ。

だからこそ、温熱環境や防犯上等に優れている住宅というのは需要はあるが、低質な住宅に比べて賃料が高くなりがちなため、その賃料を払える所得層が少ないことから、大量に質の低い住宅が供給されている(省エネに関しては、令和3年4月から法律で規制強化)現状にあると思います。

こうした実態が見えてくると、国民が質の高い住宅に住み、健康面での問題が解決されていけば、住宅での不安を解消できていくんじゃないかと思います。

(省エネは規制が強化されているけど、これ以外の質の高い住環境の確保はまだまだ・・・)

質の高い住宅で賃料が地域の相場よりも若干高いくらいでも需要は多いんだろうと思います。

実際、前回の2,013年から2,018年の間に賃貸住宅(民営)は約71万戸増加している一方で持ち家比率は61.7%から61.2%に低下(*出典:平成30年住宅・土地統計調査)していますから、今後も賃貸住宅供給量は増加していくはずです。

正直なところ、大家さんが土地を遊ばせておくのがもったいないから賃貸住宅を建築します程度だと、地域の賃料相場と地域の一般的な所得等との関係から、特に地方(いわゆる田舎)を中心に質の低い住宅が供給されやすい状況になっていると考えられます。

上記の考え方が一般的なので、平均所得が高い大都市を除き、所得層のボリュームゾーンに合わせて賃貸住宅が供給されてしまうため質の低い住宅が供給されやすい状況にある。

実際、地方でオートロックや宅配ボックスが付いている賃貸住宅を供給されているのは大手のハウスメーカーのみくらいではないでしょうか。

まとめ

これからの住宅の住み方を考慮すれば、質の高い住宅に誰もが居住することができれば、日常生活における不安や悩みを一つでも解消することにつながりますよね。

ですので、省エネだけじゃなく、遮音や防災・防犯といった面で最低基準を設けたり、補助金を用意していくことが必要なのではないかと思います。

一方で不動産は利益を安定的に生み出す仕組みとして何百年という歴史がありますから、オーナーさんへのまちづくりや都市計画での視点からのアプローチも必須です。

生活の質の向上という大きな社会貢献と賃貸による利益を上手に組み合わせていくことが必要なのでしょうね。

あと、質の高い賃貸住宅は良質な街並み形成にも貢献できるので、国や自治体は積極的に補助制度をつくっていくことも必要じゃないかなと思います。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など