この記事では、「多雪区域」の分かりやすい解説を行っています。
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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。
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多雪区域とは?
多雪区域とは、建築基準法施行令第86条第2項ただし書及び第3項の規定に基づき定められるもので、特定行政庁が規則で指定するものです。「〇〇道府県or〇〇市建築基準法施行細則」に規定されます。
(積雪荷重)
建築基準法施行令第86条第1〜3項
第86条 積雪荷重は、積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算しなければならない。
2 前項に規定する積雪の単位荷重は、積雪量1㎝ごとに1㎡につき20N以上としなければならない。ただし、特定行政庁は、規則で、国土交通大臣が定める基準に基づいて多雪区域を指定し、その区域につきこれと異なる定めをすることができる。
3 第1項に規定する垂直積雪量は、国土交通大臣が定める基準に基づいて特定行政庁が規則で定める数値としなければならない。
多雪区域について国土交通大臣が定める基準とは、「垂直積雪量が1m以上の区域」や「積雪の初終間日数(ある区域の積雪部分の割合が50%超える状態が継続する期間の日数)の平年値が30日以上の区域」のことをいい、国土交通大臣告示式で決まっています。
また、単位荷重は通常の区域と異なり異なる定めが行われ、一般的には30N/㎡が指定されています。
多雪区域の位置をまとめた分かりやすい資料がありませんでした…国土交通省が多雪区域以外の区域について、まとめた図面がありましたので参考になると思いますので貼っておきます。
この区域を見ると、多雪区域に該当している道府県は、北海道、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、富山県、石川県、岐阜県、福井県、京都府、鳥取県、岡山県、島根県であることが分かります。がしかし、この地図を鵜呑みにしてはいけません!!
(注)上記はあくまでも参考図であり、各特定行政庁による細則(規則)を反映したものではありません。例えば、上図によると函館市は多雪区域に含まれていますが、実際は垂直積雪量は70㎝のため多雪区域以外となります。
多雪区域はどこ?
北海道・東北地方の主要都市の多雪区域(注)*記事執筆時点
この表は、北海道及び東北地方の概ねの人口が10万以上の主要都市のみ記載しています。
*北陸地方は全域に指定されているので表にするのが煩雑になるので省略しました(すみません!!)
多雪区域の検索方法は2つあります。
「〇〇市町村 多雪区域」か「〇〇道府県 建築基準法施行細則or〇〇市町 建築基準法施行細則」となります。
仙台市のように親切に位置図を示すところもあれば、細則を確認しないと確認できないようになっていたりするので検索する際はご注意してください。
市名 | 垂直積雪量(㎝) | 積雪荷重(N/㎡) |
---|---|---|
札幌市 | 140,190(南区の一部) | 30 |
旭川市 | 130,230(江丹別町(春日及び嵐山を除く)) | 30 |
函館市 | 70 *多雪区域以外 | 20 |
小樽市 | 150 | 30 |
釧路市 | 多雪区域:阿寒町100 非多雪区域:音別町90,左以外70 | 20,30 |
苫小牧市 | 70 *多雪区域以外 | 20 |
帯広市 | 130 | 30 |
北見市 | 100 | 30 |
江別市 | 140 | 30 |
室蘭市 | 70 *多雪区域以外 | 30 |
青森市 | 180,150(浪岡地区) | 30 |
八戸市 | 多雪区域:南郷110 非多雪区域:南郷以外85(標高10m以下70) | 20,30 |
弘前市 | 130 | 30 |
盛岡市 | d=α・ls+β・rs+γ ls:敷地の位置の標高(単位m) rs:0 α:0.0015 β:0 γ:0.58 | 30 |
秋田市 | 100,150,200,250 *詳細:施行細則 | 20,30 |
横手市 | 200,250(増田地域/山内地域),300(山内地域) *詳細:施行細則 | 30 |
山形市 | 120,蔵王地区:0.0099×Ls(標高)-0.37 | 30 |
鶴岡市 | 150(鶴岡・藤島),200(羽黒・櫛引・温海),250(朝日) | 30 |
酒田市 | 100(酒田),150 | 30 |
仙台市 | 40~150 *詳細:公式ページ | 20,30 |
福島市 | 多雪区域:100(土湯温泉・飯坂町) 非多雪区域:50(上記以外) | 20,30 |
郡山市 | 多雪区域:100(熱海町),150(湖南町) 非多雪区域:70(上記以外) | 20,30 |
会津若松市 | 150 | 30 |
多雪区域と豪雪地帯との違い
多雪区域は垂直積雪量が1m以上等の区域について、建築基準法に基づき特定行政庁が指定するもので、構造計算に必要な積雪荷重値です。
つまり、建築物の建築設計に必要なデータです。
一方で豪雪地帯(特別豪雪地帯)とは、多雪区域同様に国土交通省が関係はしますが法律が異なります。1962年(昭和37年)に制定された法律で「豪雪地帯対策特別措置法」といいます。
豪雪地帯・特別豪雪地帯は国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が指定します。
(豪雪地帯及び特別豪雪地帯の指定)
豪雪地帯対策特別措置法第2条第1・2項
第2条 国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣は、第一条に規定する地域について、積雪の度その他の事情を勘案して政令で定める基準に従い、かつ、国土審議会の意見を聴いて、道府県の区域の全部又は一部を豪雪地帯として指定する。
2 国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣は、前項の豪雪地帯のうち、積雪の度が特に高く、かつ、積雪により長期間自動車の交通が途絶する等により住民の生活に著しい支障を生ずる地域について、国土審議会の議決を経て国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が定める基準に従つて、豪雪地帯として指定された道府県の区域の一部を特別豪雪地帯として指定する。
この豪雪地帯対策特別措置法とは、雪害対策の一つとして「産業の振興等」が目的となっているのが多雪区域とは異なります。
また、この法律で、豪雪地帯とは、累年平均積雪積算値が5,000㎝日以上の地域の存する道府県又は市町村で、その区域の3分の2以上が豪雪地域である道府県又は市町村などとなっており、多雪区域の指定ルールとは異なりますよね。
とはいえ、この豪雪地帯・特別豪雪地帯の位置を確認すれば、およその多雪区域の位置を確認することができますので、豪雪地帯に入っていなければ、多雪区域ではないと判断するのに使えばいいのかなと思います。国交省において、豪雪地帯・特別豪雪地帯の範囲図を掲載しているので参考になると思います。
ということで以上となります。参考となりましたら幸いです。