旧38条認定の城→白石城(宮城県白石市)

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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なため理解するのに苦しみますよね(私自身が苦しみました。)。このことを解決するために法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。

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城(櫓)と城門の木造復元

*白石城三階櫓(宮城県白石市)

建築基準法の観点から城の復元をイメージすると、建築基準法第3条第1項の建築基準法を適用させない文化財としての復元を思い浮かべるかもしれません。

ところがです。実際は、詳細な発掘調査や内部構造等の資料を基に復元ができている城郭はごく僅か(大洲城など)となっています。

(適用の除外)
第3条 この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 文化財保護法の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
 旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
 文化財保護法第182条第2項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
 第一号若しくは第二号に掲げる建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの

建築基準法第3条第1項

江戸時代に描かれた外観資料が残っていることはあっても、その他の内部構造が分かる詳細な資料等が残っていないケースが多いとか(幕末の戊辰戦争や太平洋戦争の空襲により消失など)、、、

建造当時の詳細の情報を知り得ることができないため、文化庁により文化財とは認められるのは相当にハードルが高いようです。

加えて、史跡に指定されているケースでは土地の形質の変更等に対しては制限がかかるため、発掘調査なども難しく建築自体も困難なケースとなることも。

とはいえ、近年は木造に復元ブームが到来しているように名古屋城や安土城の木造復元などのニュースを見る機会が増えてきていますよね。

地域のアイデンティティを支えるツールとして、または地域のシンボル、観光ビジネスの両面から整備を進めていこうとする行政の動きが活発です。
別サイトですが、近年、隅櫓や大手門の復元が行われた水戸城の記事のリンクを置いておきます。

では、文化財に指定されていない城をどのように木造により復元しているのか。

答えとしては、通常どおり建築確認済証の交付を受けています。

建物用途としては展示スペースを有する博物館に類似する施設(特殊建築物)となることから、天守閣のような規模の大きい建物の場合には、防火避難規定の関係から法適合の段階で当時の外観を再現することが難しいのが実情のようです。(木造ではなく、鉄筋コンクリートによる天守閣の復元が多いのはこのためです)。

一方で、建築物の高さが低く規模の小さな門や櫓は、人が立ち入らない用途(倉庫)、規模としては小さいが高さが16m超となる建物は工作物(物見塔・記念塔)などで建築確認を行っています(どこのお城?というのは実在する展示等に影響するため差し控えます。)

木造で建築基準法に適合させるには?

木造の城(現代では、博物館、展示場などの用途)を建築基準法に適合させようとすれば、建築基準法第21条、27条、35条等に該当させない規模とすることが大前提となります。(逆を言えば、この法令に該当する規模で文化財の認定を受けないものは建築不可です。)

その中でも、そもそも木造での復元を難しくさせるのが、耐火建築物等の要求を生じさせる21条と27条となり、また、防火避難規定である35条関係を回避する必要があります。

この条に適合させないようにするとなれば、階数としては、必ず2階以下とする。

又は、3階部分を階数として扱わないよう装飾塔や物見塔(建築面積の1/8以下が条件)として3階部分は展示物等を置かないようにしたうえで通常は人が立ち入らないようにする。

さらに、高さを16m以下(装飾塔・物見塔として建築面積1/8以下であれば3高さ12mまでは高さ算入しないため、高さ16m超も可能)に抑える必要があります。

その他、採光や排煙などの検討も必要となる上に、延べ床面積としては、500㎡を超えないようすることが求められます。

その他の詳細は省きますが、まとめますと、建築基準法に適合させるように設計する関係上、復元可能なのは、いわゆる3階櫓・2階櫓程度のものや2階建ての城門程度(一部は展示場として一般客を立ち入らせることができない。)のみとなると考えられます。

その他の方法としては人の立ち入りを前提としない工作物(一時的な立ち入り)です。

ですので、3階超の天守閣を復元させようとすれば、詳細な資料等を集めて文化財として認定を受けて復元する他ないです。

白石城と建築基準法

*白石城3階櫓(宮城県白石市)

今回紹介する仙台藩の支城であった白石城(1995年)は、かなりイレギュラーですが建築基準法第38条認定を受けています。

この建築基準法第38条認定は一時期削除されていた期間があったため、旧38条認定と言っています。では、旧38条認定ですが、どのように書かれているのかですが…

【建築基準法第38条】
この章の規定又はこれに基く命令若しくは条例の規定は、その予想しない特殊の建築材料又は構造方法を用いる建築物については、建設大臣がその建築材料又は構造方法がこれらの規定によるものと同等以上の効力があると認める場合においては、適用しない。

※この章:第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備に関する規定であり、建築物の防火避難に関する基本的な構造規定のこと。一方で道路斜線制限や用途地域制限などの第3章規定は適用される。

つまり、建設大臣(現在:国土交通大臣)が構造等を判断してOKとすれば、防火避難関係が規定される第2章(法第19条ー41条)が適用されないため、大規模木造により建築することも可能ということ。

ただし、旧38条認定ですが、私自身携わったことがないので、どのようなプロセスでOKとなるのかブラックボックス部分が多いので良いとも悪いともいえないです。とはいえ、事実として過去に白石城のように建築できていることをみると、こちらのプロセスを踏めば城の復元は可能かもしれないです。

ちなみにある一部の城の復元のように『工作物』で建築すると、内部の一部を展示的スペースに供すれば違法となる可能性が高いため、白石城のように比較的規模の大きい櫓(=本来の用途は倉庫)を建築し、かつ展示スペースを設けるような博物館用途にするのであれば、法適合性を遵守する観点から旧38条による大臣認定一択だったのかもです。

白石城の概要としては次のようになります。

白石城(3階櫓)の概要
白石城(大手二ノ門)
  • 構造:木造
  • 階数:2階
  • 高さ:9.39m
  • 延べ面積:55.46㎡
*高さは9.39mの2階建ての大手門(2階部分は立ち入り不可のめ工作物または倉庫として建築確認済証の交付を受けていると思われます。)
*一ノ門は通常の住宅建築でも見られる平屋門
*内部構造 現行法の階段では、蹴上22㎝以下、踏面21㎝以上が必要
*3階櫓の1階部分(床面積:233㎡)
*3階部分の屋根組
*屋根組詳細

白石城へのアクセス方法

*白石市街地(奥に見える高架橋が東北新幹線)

白石城へはJR白石駅(JR仙台駅からローカル線で50分程度、デイタイムは時間2本の運行)から徒歩10分程度です。*下記地図は新幹線白石蔵王駅から白石駅経由でのアクセス方法です。

城郭建築のため多少の登りがありますが、大阪城や熊本城、姫路城といった大規模な城郭ではないので楽に天守閣(三階櫓)まで到達可能です。

白石は仙塩広域都市計画区域外の別都市計画区域とはいえ、ローカル線で1時間2本、新幹線でも1時間あたり1本以上は運行しているので比較的便利な地域かと思います。

実際、白石市は、人口約3万人(都市圏人口:約14万人)で白石駅1日あたり約5千人が利用しているので、地方圏では比較的利用者数が多い方かと思います。仙台と約40km近く離れていますが、仙塩都市圏の影響を強く受けていることが分かるデータかと思います。

白石城は駅から近いのが最大のメリットかと思います。

さらに、新幹線の利用ですと仙台駅から約14分で着くので、仙台に出張や遊びに行った際のついでに立ち寄ることもできます。ちなみに、白石市は『温麺(うーめん)』が有名。駅前には白石温麺の専門店がありますので、白石のお土産にも最適かと思います。

それでは以上となります。参考となりましたら幸いです。






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