「急傾斜地法」と「土砂災害防止法」は目的が異なります。[両法の違いと建築基準法・宅建業法との関係]

よくある誤解として、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)」「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」が両法ともに危険なエリアを示す区域を指定するため、同意義だと思ってしまうことあるようです。
今回は、それぞれの法律の特徴と建築基準法との関係性について解説します。

こんにちは。建築士のやまけんです。

それでは、解説していきます。

法律の目的

○急傾斜地法(昭和44年法律第57号)

[急傾斜地法 第1条]
この法律は、急傾斜地の崩壊による災害から国民の生命を保護するため、急傾斜地の崩壊を防止するために必要な措置を講じ、もつて民生の安定と国土の保全とに資することを目的とする。

ポイントとしては、「急傾斜地の崩壊」と「崩壊を防止するために必要な措置を講じ」です。
また、指定されると看板が設置されます。一度は見たことあるのではないでしょうか。

次に、土砂災害防止法です。

○土砂災害防止法(平成12年法律第57号)

[土砂災害防止法 第1条]
この法律は、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限し、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めるほか、土砂災害の急迫した危険がある場合において避難に資する情報を提供すること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。

ポイントしては、「土砂災害」、「土砂災害が発生する恐れがある土地の区域」、「警戒避難体制の整備」、「一定の開発行為を制限」、「建築物の構造の規制に関する所要の措置」、「避難に資する情報を提供」の部分です。

ですので、それぞれの法律の目的が全く違います。
では、それぞれの法律の特徴を見ていきます。

急傾斜地法と土砂災害防止法の特徴(建築基準法との関係性)

急傾斜地法 土砂災害防止法
目的 急傾斜地の崩壊防止対策などのハード整備が中心となっている
(砂防法、地すべり防止法と同じ。急傾斜地法と合わせて土砂三法)
警戒避難体制の確保などのソフト的な取り組みが中心となっているほか、土砂災害の危険性があるエリアの開発や建築構造の制限を行っている
指定される区域 急傾斜地崩壊危険区域 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
区域を指定する者 都道府県知事 都道府県知事
区域内における制限 (建築等行為)
建築物の建築や立木の伐採などの行為は、都道府県知事の許可が必要(第7条)
(特定開発行為)
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内において、住宅(自己用を除く)、社会福祉施設、学校等の用途以外に供する建築物の建築を予定している開発行為は、都道府県知事の許可が必要(第10条)(建築行為)
・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内における居室を有する建築物は、建築基準法第6条第1項第四号区域内の建築物とみなされる
・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内における居室を有する建築物の建築は、建築基準法施行令第80条の3に適合させる必要がある

■関連記事
▶︎土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)での建築は可能?(待ち受け壁の解説)(ブログ内リンク)

 

建築基準法と関係してくるのは、土砂災害防止防止法の「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」内における建築物の建築を計画する場合です。

居室を有する建築物の建築を予定している場合には、次のポイントが重要です。

☑️建築基準法第6条第1項第四号に該当することとなるため、都市計画区域外などで四号建築物(木造2階建て延べ床面積130㎡程度の一戸建ての住宅など)を建築する場合には、建築確認申請が必要となります。

☑️建築基準法施行令第80の条の3、平成13年国交告383号に適合させる必要があります。

では、最後に、宅建士受験者向けに「宅地建物取引業法」との関係を解説します。
宅建業法の法律をみて、しっかりと確認していきましょう!

宅地建物取引業法との関係

重要事項説明の規定は、宅地建物取引業法第35条に記載されています。

[宅地建物取引業法第35条第1項(抜粋)]
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 (略)
 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要

三〜十三 (略)

十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項

イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

※法律は平成29年6月2日時点

[宅地建物取引業法施行令第3条(抜粋)]
法第35条第1項第二号の法令に基づく制限で政令で定めるものは、宅地又は建物の貸借の契約以外の契約については、次に掲げる法律の規定(これらの規定に基づく命令及び条例の規定を含む。)に基づく制限で当該宅地又は建物に係るもの及び都市計画法施行法(昭和43年法律第101号)第38条第3項の規定により、なお従前の例によるものとされる緑地地域内における建築物又は土地に関する工事若しくは権利に関する制限(同法第26条及び第28条の規定により同法第38条第3項の規定の例によるものとされるものを含む。)で当該宅地又は建物に係るものとする。
二十三 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第7条第1項
二十三の二 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第10条第1項及び第17条第1項

[宅建業法取引業法施行規則第16条の4の3]
法第35条第1項第十四号イの国土交通省令・内閣府令及び同号ロの国土交通省令で定める事項は、宅地の売買又は交換の契約にあつては第一号から第三号までに掲げるもの、建物の売買又は交換の契約にあつては第一号から第六号までに掲げるもの、宅地の貸借の契約にあつては第一号から第三号まで及び第八号から第十三号までに掲げるもの、建物の貸借の契約にあつては第一号から第五号まで及び第七号から第十二号までに掲げるものとする。
一 (略)
二 当該宅地又は建物が土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第7条第1項により指定された土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨

法令等はここまでです。

法律、施行令、省令を読み解くとこで、どういった契約の際にどういった制限を説明しなければならないかを理解することができます。

これらの両法における重要事項の説明内容は次のようになります。

政令・省令・契約内容の別 急傾斜地法 土砂災害防止法
[施行令第3条関係]
宅地、建物の貸借以外の契約
(売買など)
☑️法第7条第1項
・急傾斜地崩壊危険区域内における建築等の行為については都道府県知事の許可が必要となる規定
☑️法第10条第1項
・土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内における特定開発行為については、都道府県知事の許可が必要となる規定
☑️法第17条第1項
・法第10条第1項(特定開発行為)の変更に係る規定
[省令第16条の4の3関係]
宅地の売買・交換の契約
建物の売買・交換の契約
宅地の貸借の契約
建物の貸借の契約
☑️法第7条第1項
・土砂災害警戒区域(イエローゾーン)

[重要事項の説明に係る補足(重要)
土砂災害警戒区域及び特別警戒区域が指定される前には、必ず基礎調査が都道府県により実施されることになります。

この基礎調査の結果については、公表されることとなっており、将来、土砂災害警戒区域等に指定される可能性があることから、この旨についても、重要事項の説明の際に説明することが望ましいとされています。

なお、この説明を行わない場合(故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為)、宅建業法第47条第1号に違反する場合があるとされており、今後、重要事項説明についても義務化される可能性が十分に高い内容ですので、留意しておく必要があります。

※出典:「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律に基づき 都道府県が公表する基礎調査の結果について(国土動第107号 平成27年1月18日) 国土交通省土地・建設産業局不動産業課長から各業界団体宛ての通知」

終わりに

今回の解説のポイントとしては、急傾斜地法と土砂災害防止法の目的はそれぞれ違うこと、また、建築基準法と関係してくるのは、土砂災害防止法における土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)であるということでした。

また、補足的に宅建業法における重要事項説明についても解説しましたので、宅建士試験でも通常の業務でも活用できるかなと思います。

今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。^ ^