「立地適正化計画」も平成26年8月の施行以降、コンパクトシティを進める地方都市の多くで作成されるようになって、今では取り組んでいない自治体の方が多いくらいですよね。
(詳しくは国交省さんのホームページをご覧になってください。「立地適正化計画 国土交通省」で検索すれば取り組み自治体数が分かります)
こんにちは。建築士のやまけんと申します^ ^
意外と知られていないシリーズでお送りしたいと思います。
今回は、タイトルにあるとおり「特定住宅整備事業」です。
後ほど「特定住宅整備事業」についても解説するとして、この整備事業を行う方は「都市計画提案」することが可能となっています!! そして今回伝えたいのは、この都市計画提案を行うことで、土地に付加価値を加えることが可能かも?です。
それでは、解説していきます。
まずは、「特定住宅整備事業」とはについてです。
特定住宅整備事業とは
特定住宅整備事業とは、都市再生特別措置法に規定されているもので、コンパクトシティ+ネットワークの形成を進める「立地適正化計画」に関連するものです。
法律では、次のように規定されています。
都市再生特別措置法第86条(抜粋)
立地適正化計画に記載された居住誘導区域内における政令で定める戸数以上の住宅の整備に関する事業(以下「特定住宅整備事業」という。)
*政令で定める戸数とは、20戸以上(施行令第25条)
要は、各自治体が作成する立地適正化計画において位置付けられた「居住誘導区域」内において、20戸以上の住宅整備事業を行う行為が、「特定住宅整備事業」となります。
では、「特定住宅整備事業」によるメリットは何かというと、それは「都市計画提案」となります。
都市再生特別措置法第86条(抜粋)
立地適正化計画に記載された居住誘導区域内における政令で定める戸数以上の住宅の整備に関する事業(以下「特定住宅整備事業」という。)を行おうとする者は、都市計画決定権者に対し、当該特定住宅整備事業を行うために必要な次に掲げる都市計画の決定又は変更をすることを提案することができる。この場合においては、当該提案に係る都市計画の素案を添えなければならない。
都市計画提案とは、例えば、良好な住宅街形成を図るため地区計画などを活用して外壁の後退距離の制限などを設ける都市計画を、民間事業者が行政に対して提案できる制度です。(詳しくは、⬇️の関連記事をご覧ください)
▶️都市計画提案制度とは?[都市計画法の解説]
注)都市計画法及び都市再生特別措置法それぞれに「都市計画提案制度」が設けられており、規模の基準が異なるので注意が必要となります。
では、「特定住宅整備事業」により、提案可能な都市計画を見てみましょう。
提案可能な都市計画
提案可能な都市計画は、都市再生特別措置法に規定されており、次の各号となります。
なお、私が調べた限りでは、三号の「その他政令で定める都市計画」については、政令未制定なのか・・・見つけることができませんでした(読み間違えていたらすみません。)
① 第37条第1項第二号、第三号及び第五号から第七号までに掲げる都市計画
▶️用途地域、高度利用地区、特定防災街区整備地区、市街地再開発事業、防災街区整備事業、土地区画整理事業② 都市計画法第12条の4第1項第一号から第四号までに掲げる計画に関する都市計画
▶️地区計画、防災街区整備地区計画、歴史的風致維持向上地区計画、沿道地区計画③ その他政令で定める都市計画
この中で特に注目すべきは、高度利用地区、地区計画ですね。
高度利用地区は基本的に市街地再開発事業とセットと考えておく必要がありますが、高度利用地区の指定により容積率をあげることが可能です。
ただし、用途地域でも高度利用を図ることが適当である中高層住居専用地域や商業地域に限って行うのが妥当だと思いますけどね。
(活用例)
例えば、例えば、100戸程度の住宅街区を整備しようとするときに、マンションの場合は容積率をあげることも可能ですし、地区計画をセットで行えば、建物の意匠関係についてもルールを定めることができますから、この街区にしか無い魅力を住宅整備の初期段階につくってしまうことで、統一された建築物しか建築できないようにしてエリア全体の価値をあげることも可能だと考えられます。
(あくまでも可能性なので、一概に言えないので注意してください)
補足
☑️景観計画の提案する事も可能
地区計画で定めることができない色彩関係などの制限もする事も法的に可能となるので、都市計画提案と合わせて行う事ができる。
終わりに
最後に個人的な見解として、これからの時代はただ単に建築物を造るのではなくて、いかに付加価値をつけていくかが売れる(価値が持続する)ポイントだと考えおり、それには、都市計画提案を上手に活用すべきだなと思います。
都市計画とは、基本的に行政が行うべきモノと考えられていますが、そんな事はないですし、行政主体と民間主体とで適切に役割分担していくことが求められている時代だと思います。
都市計画提案の活用によっては、他との差別化が図られて都市全体の魅力をあげていくことも可能だと思います。
行政で行うには限界があるため、民間主導だからこそ柔軟にできることがありますから、民間主体でまちづくりを進めていく重要性がここにあると思いますし、活用手法の一つかなと考えています。
ですから、「居住誘導区域」で戸数の多い住宅整備を行う際は、検討してみてはどうでしょうか。
今回は、以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。