令和元年9月10日に一級建築士試験「学科の試験」の合格者発表がありました。
例年の合格率が16〜18%前後だったのに対して、22.8%(約5,700人合格)でしたので、若干優しい問題だったのか、人手不足の観点から合格者数を増やしたのか詳細は不明ですが、合格された方はおめでとうございます!!すでに、10月13日(日)の製図試験に向けて勉強を進めていると思いますが、製図試験ほど辛く苦しく、ちょー楽しいものはないと思いますので、是非頑張ってください!!
こんにちは!!一級建築士を独学で合格したやまけんです^ ^
すでに学科の段階から専門学校に通われている方は学校がなんとかしてくれますが、製図については独学で受験してみようかなと考えている方もいますよね。
今回は、先日発表になった一級建築士設計製図課題をもとに、独学者の視点に立って、どういった建築物が想定されるのか、どういった部分に留意すればいいのかなど、考えられるところを書いていきます。
ではでは、お付き合いください。
まずは、一級建築士設計製図課題2019のおさらいです。
一級建築士設計製図課題2019について
先日、建築士試験の業務を担う公益社団法人建築技術教育普及センターから発表された、2019年の設計製図課題です。
☑️課題
美術館の分館
☑️要求図書
- 1階平面図・配置図(縮尺1/200)
- 2階平面図(縮尺1/200)
- 3階平面図(縮尺1/200)
- 断面図(縮尺1/200)
- 面積表
- 計画の要点等
(注1)
既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。
(注2)
屋上庭園のある建築物の計画
(注3)
建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)
☑️建築物の計画に当たっての留意事項
-
- 敷地条件(方位等)や周辺環境に配慮して計画するとともに、空調負荷の抑制や自然光の利用を図る。
- バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮して計画する。
- 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
- 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
- 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を配置する。
- 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。
設計製図課題から思うこと
まず、美術館が3階にあれば耐火建築物で設計します。
ですので、通常通りRC造にするでしょうね。
その前に美術館というのはどういうことなのだろうか。これから人口減少が急速に進み超高齢社会が到来するのに、非日常性が異常に高い”美術館”とは・・・
それでも、本館ではなく分館としたのは、時代ニーズである地方創生や総活躍社会を想定して、今ある既存ストックを活用しながら新たに附属施設を設けるといったところを想定したのだろうと思います。
これから世の中に輩出される建築士が”美術館”に携われることはあるのだろうかと考えてしまいます・・・
けっして美術館が悪いとは思わないですが、もっと時代のニーズにあった、老人ホームやサービス付高齢者向け住宅、ホテルなどが考えられただろうにと思った次第です(ぼやきですみません)
とはいえ、課題をクリアして合格しない限りは一級建築士とならない限りは、ただの無資格者のままなので、合格するしかないですよね。
ふんわりした課題のため、自由度が高い分、簡単に要求室が収まる可能性が十分に考えられるので、試験時間よりも早めに描き上げた方は、チェックを何度も行なった方が良いと思われます。
課題に関する法的事項
ここからは課題から見えてくる私の想定です。時間があるときにどうぞ。
○建築基準法第27条関係(耐火建築物関係)
課題から読み取れる内容として、3階部分も美術館の用途に供することが考えられます。
その場合、建築基準法第27条の規定より、「耐火建築物」とすることが無難な判断になります。
そうすると、耐火建築物とすることにより、延焼ラインにかかる外壁開口部は必ず防火設備の要求が生じます。
○延焼ラインに関する事項
上記に関係しますが、本館が同一敷地内にある場合、本館と分館とは渡り廊下でつなぐことも想定されますが、繋がないで、少しだけ離して建築することも考えられるので、その場合、建物間の中心線から1階は3m、2階以上は5m部分が延焼のおそれのある部分となり、外壁開口部は防火設備とする必要があります。
○建築基準法第20条関係
構造的な部分として、本館との構造的な分離を求められる可能性があります。
その場合、エキスパンションジョイントで構造的に分離しておく必要があります。
その際に、平面図・断面図への表記が必要となるので、書籍等を確認して記載方法を確立しておくことが必要です。なお、補足して、特定防火設備により本館とは区画しておいた方が無難です。
○防火区画関係
間違いなく、面積区画(規模的に水平区画で十分な可能性が高いけど・・・)と竪穴区画、面積区画に附属するスパンドレルは必須となると考えられます。
自由度が高いからこそ、特に留意しておく必要がありますね。
○避難距離(令第120条・121条関係)
避難距離については、施行令第120条の規定により、耐火建築物であれば50m(内装を準不燃とすれば+10m)となります。また、令第121条第1項第六号ロ及び第2項により、避難階以外の階の居室の床面積合計が200㎡(3階部分)を超えることが想定されるので、2以上の直通階段は必要となります。
また、重複距離制限は25m(または30m)となるのでご注意を。
*販売店舗部分がある場合は、その居室部分にかかる避難距離は30m(または+10m=40m)となるのでご注意ください。
私と同じく独学合格を目指す方へ
☑️設計製図テキストについて
これから、日建学院さんと総合資格学院さんとで一級建築士設計製図対策テキストを販売することが考えられますので、まずは購入しておきましょう。
*Amazonで日建学院さんのみ販売日(2019/8/26)が公表されています。
また、大手の資格学院さんがテキストを販売するまでの間に基礎的な部分を含めて学習する場合には、こちらのテキストがおすすめです。
雲母未来(きららみらい)さんという方が書いているテキストで、一級建築士試験の対策講座を運営されており、2019年の課題に関しても詳しく解説されています。(ページ数も約300とあり、情報量が豊富です)
▶️https://value-co.jp/workshop/index.php(外部リンク)
なんとしても独学で合格したい方は是非購入した方がいいです。
製図道具について
製図道具についてはこちらに記事を書いているので読んでみてください。
関連記事
☑️一級建築士試験(製図)について(独学受験者による体験談)
☑️一級建築士製図試験対策。試験前と試験中に確認した方が良いこと。
☑️製図用紙については、本番と同様に厚紙を使用している建築士.comさんで販売しているものを使用した方がいいです。
*あわせてエスキス用紙も購入しておきましょう。
最後に
独学でも合格することは十分に可能です。
それは私自身がそうだったので、今現在頑張っている方も、努力すれば合格することは可能です。
合格するためには、勉強する時間をつくって、ひたすら描き続けることが重要ですから、独学で合格してやろうと誓った方は覚悟を持って頑張ってください。
私のサイトでは、建築基準法に関する情報等を掲載しているので、サイト内を自由に回遊してみてくださ。