こんにちは。やまけんです。
建築や都市計画に関する情報を発信しているブロガーです。
都市計画の理解を深める
いきなりですけど、都市計画に携わる身として次のように考えています。
建築基準法の前身である「市街地建築物法」を知ることこそが、都市計画の実現には必須だと思う。
現在、日本国内の都市計画行政は、都市計画法、建築基準法、都市再生特別措置法が担っています。そのうち、都市計画法と建築基準法は今から約100年前に制定されたことを知ってますか。
このことを知ることで、建築や都市計画に関して理解が深まりますので、建築士や都市計画を専門とされている方、学生の方は是非とも知りましょう。
ということで、今回は、こちらの書籍の紹介です。
建築法と都市計画法の関係
ちょっと愚痴っぽいですが、、、
現在、建築行政においては、都市計画法に基づき決定された都市計画に従って”やらされている感”を持って仕事をされている方が一定数いると思われます。
というか事実ですね。(そういった方はこの記事は見ていないでしょう。それが悲しいです。笑)
私の知人でもそのように考え、あくまでも建築職の自分達は、単体規定を除き都市計画で決められたこと(言われたこと)を、仕方なくやっているというスタンスでした。
それで「都市」をより良くできます? 絶対に無理ですねww
でもでも、彼らが悪いわけではないのです。歴史を知らないからです。「旧市街地建築物法」が制定された経緯を知ることが考えを改めるキッカケになると思います。
本日の紹介する書籍の一文から引用すると市街地建築物法は次のような性格を持っていました。
「市街地建築物法」と「旧都市計画法」は、大正8年4月5日に公布され、大正9年12月1日に施行されています。
今からちょうど100年前です。つまり、近代国家をつくりはじめてから1世紀ということです。
旧都市計画法は大正8年法律第36号、市街地建築物法は大正8年法律第37号となっており、法律の公布に至るまで、内務大臣を会長とする「都市計画調査会」において審議されています。
法律番号も連続していることから姉妹法と呼ばれ、旧都市計画法が大都市を対象として、都市計画の権限・手続き、都市計画委員会制度、土地区画整理など、都市計画を総合的・永続的に実行する制度とされ、市街地建築物法は具体的に市街地内の建築物のあり方を規定し、中小都市の市街地にも広く適用させる制度として考えられていたようです。
池田宏の言葉
当時の池田宏 内務省都市計画課長が市街地建築物法について次のように説明したそうです。
「市街地建築物法というのは(中略)各地の警察法規に散財している種々の建築制限に関する規定の総体でその時勢に足らざるを補充し統一的基本法であります、その目的精神とする所は市町村として将来最も秩序あり健全なる発展を遂げしめむとする都市計画の完成にあります」。
*出典:日本近代建築法制の100年(一般財団法人日本建築センター)
建築物の集団が都市であり、都市を災害等から守ることこそが都市の健全な発展に寄与されるものと考えられていたと思います。
今では正しい考えですよね。
大火や地震の度に甚大な被害を受けてきたわけですから、災害に強い都市をつくることこそが都市の健全な発展に寄与すると考えられていたはずです。
なお、高度経済成長に伴う人口爆発により昭和43年の新都市計画法から開発許可制度が創設され、さらに都市をコントロールしていこうと規定も盛りこまれましたが、基本的な都市づくりの考えは、市街地建築物法にあると考えて良いと思います。
今日では、建築基準法の集団規定に関する部分は、都市計画法に従い行使しているように思われるかもしれない。
しかしながら、前身である市街地建築物法では、都市計画の機能(用途地域(当時は、住居地域、商業地域、工業地域)の指定は第1条に規定など)を有し、都市計画の側面を持っていたことを知ることはとても重要。
現在の建築基準法では、都市計画で決めたことを建築基準法で実効化していくところが、都市計画にやらされている感が生じていると思われます。
でもどうか、こういった書籍を読んで、改めて都市を一体的に運営していくのは、都市計画法と建築基準法であることを理解し、次の100年先を目指した都市づくりを行なって欲しいと切に願います。
ということで、以上となります。
*出典:日本近代建築法制の100年(一般財団法人日本建築センター)