既に理解している人は読まない記事ですので、分からないのを前提に上記の悩みを解決します。
なお、最近改正された建築物省エネ法により適合基準の規制強化が図られてたので最後に少しだけ解説します。
こんにちは!建築士のやまけんです。
この記事を読めば建築物省エネ法が建築基準関係規定であることが分かります。
それでは早速解説します。
建築基準関係規定である理由
建築基準関係規定(施行令第9条)にはバリアフリー法と同じで建築物省エネ法が規定されていません。
つまり、建築物省エネ法を確認する必要があります。
法律は、建築物省エネ法第11条に規定されています。
少し読み難いかもですが、まずは、読んでみてください。
[法第11条(特定建築物の建築主の基準適合義務)]
建築主は、特定建築行為(特定建築物(居住のために継続的に使用する室その他の政令で定める建築物の部分(以下「住宅部分」という。)以外の建築物の部分(以下「非住宅部分」という。)の規模がエネルギー消費性能の確保を特に図る必要がある大規模なものとして政令で定める規模以上である建築物をいう。以下同じ。)の新築若しくは増築若しくは改築(非住宅部分の増築又は改築の規模が政令で定める規模以上であるものに限る。)又は特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築の規模が政令で定める規模以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る。)をいう。以下同じ。)をしようとするときは、当該特定建築物(非住宅部分に限る。)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。2 前項の規定は、建築基準法第6条第1項に規定する建築基準関係規定とみなす。
前項の規定とは、省エネ基準への適合義務の規定となります。文章だけ読んでも分かり辛いので表にしてみます。
規模(床面積) | 建築物(住宅以外) | 住宅 |
---|---|---|
大規模(2,000㎡以上) | 適合義務 (建築基準関係規定) |
届出義務 (建築基準関係規定ではない。なお、基準に適合せず所管行政庁が必要と認める場合、指示・命令等) |
中規模(300㎡以上2,000㎡未満) | 届出義務 (建築基準関係規定ではない。なお、基準に適合せず所管行政庁が必要と認める場合、指示・命令等) |
|
小規模(300㎡未満) | 努力義務 | 努力義務
*大手住宅事業者(建売戸建ての場合、年間150戸以上)は、トップランナー基準へ適合が必要 |
現行制度では、床面積が2,000㎡以上の非住宅建築物については、省エネ基準への適合が義務付けられており、その義務付けられる規定が建築基準関係規定となります。同条第2項で『建築基準関係規定とみなす』と規定されていますから、これにより建築基準法には記載されていません。
ということで、これが建築物省エネ法が建築基準関係規定の理由となります。
住宅は対象外
『住宅は適合義務の対象じゃないんだ!』と思った方、そうなんです。
住宅は適合義務ではないんですね。
ですので、住宅の省エネ基準適合率は62%となっています。なお、非住宅建築物は95%適合しているという結果が示されています。*出典:「改正建築物省エネ法の各措置の内容のポイント(国土交通省)」
住宅のうち38%は、適合していないんですよ。
欧米で最低の省エネ基準とされる日本において適合していない住宅ってなんなのって思いませんか。
ですので、私は省エネ基準に適合しない建築物は絶対につくりたいとは思いません。省エネ基準以上とするのは当然ですし、それ以上を目指して設計します。なお、大手住宅メーカーでは、省エネ基準に適合させているのもさることながら、省エネ基準以上の仕様としているケースもあります。
断熱性が高い建築物は、冬も夏も快適です。
ストレスなく暮らす(利用する)ことができますし、ヒートショックを防止し健康を維持する重要な手法の一つです。
お客さん(建築主)が、省エネなんてどうでも良いと言っても、そこは説得しましょう。
床面積を減らしてでも省エネ基準に適合するよう設計してあげましょう。
これを理解していない現代の設計者は本当にお客さんのことを考えてあげていないと言われても仕方ないことです。
国には頑張ってもらい、住宅も適合義務として欲しいところです。
法改正の情報(2021年4月施行)
この基準適合建築物ですが、中規模(300㎡以上)も対象となります。
2021年4月から予定しておりますが、非住宅建築物が対象となり、住宅は引き続き届出義務があるのみです。
なお、戸建て住宅については、建築主への説明義務が同様に2021年4月に開始されるので、あわせて確認してみてください。
本記事のまとめ
建築物省エネ法第11条に規定されていることを理解してもらればOKです。
適合義務がある建築物は、『建築物エネルギー消費性能基準』に適合することが求められることになります。
なお、省エネ計算については、委託しなくても自分自身で行うこも十分に可能です。
とはいえ、急いでいる場合には外部委託するのが一番ですし、省エネのプロに任せた方が良い場合もあります。
それでは今回の記事は以上となります。
皆さまの参考になれば幸いです。
Bernardo FerreriaによるPixabayからの画像