こんにちは!!建築士のやまけんです。
この記事では、先日(米国時間1月6日)ラスベガスで開催されているCES2020において発表された「人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市(コネクティッド・シティ)」について、建築士で都市計画のコンサルティングを行っている私自身の考えをもとにその意図を解説していきます。
目次
コネクティッド・シティ(Connected City)とは?
はじめに今回発表された実証都市の概要をお伝えします。
国内のニュースでも話題となりましたが、トヨタ自動車株式会社のプレスリリースによると、人々が生活を送るリアルな環境のもと、自動運転、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI(人口知能)技術などを導入・検証する都市を静岡県裾野市につくるというものです。
何のことが分からないと思う方が大半だと思います。笑
上記の単語をそれぞれ説明すると長文となってしまうので今回はこのコネクティッド・シティが目指すモノとは何かを簡単に伝えます。
4種の神器とされる、AI、Cloud、Blockchain、IOTは知ってますよね?
この技術を駆使して、都市における生産活動の最適化(効率化)を図る都市をつくるものです。
最適化と言っても理解し難いですよね。
例えば交通でいえば、MaaSといって、目的地さえ入力すれば、スマホ一つで出発点から到着点までの最適な経路を示し、なおかつ、バスやタクシー鉄道、カーシェアの移動手段に関わらず支払いと予約などが一括で処理できるサービスの実現に向けた取り組みが国内で進められています。
このMaaSですが、特徴としてドアツードアが可能である点です。これによって、移動は単なる移動ではなくなり、新たに付加価値をつくることが可能となり、移動は単なる移動ではなくて、移動に+αの生産が可能となります。
極端なことを言えば、ドラえもんがいる世界の一歩手前くらいをイメージしてもらうと良いかもしれません。
実証都市のネームであるWoven Cityとは?
実証都市では、街を通る道を3つに分類し、それらの3つの道が編み目のように織り込まれた街をつくるとプレスリリースに書かれているので、『織る』と言うところからWovenを使用したものと考えられます。
この都市の特徴ですが、プレスリリースの資料の中では、モビリティ、サスティナビリティ、住宅の質の向上、コミュニティといった点で最新技術を活用して新しい街を整備するようです。
その中でも、トヨタ自動車が最も力を入れている交通ですと次のように規定されています。
①スピードが速い車両専用の道として、『e-Palette』など、完全自動運転かつゼロ・エミッションのモビリティのみが走行する道
②歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道
③歩行者専用の公園内歩道のような道
※出典:https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31170943.html
多くの方はイメージ図みても何のことだか分からないと思いますし、ピンとこないと思います。
私もスマートシティ(スマートシティ自体も世の中にはあまり普及していないかも・・・)に関する仕事もしていますが、はじめの頃は何を目指すものなのか理解できませんでした。
まぁ、都市での生活がより現代よりもさらに便利になると思っていただくのが一番ですね・・・笑
2021年初頭から着工するようなので、あと3年もすればその全貌がわかるでしょう!
では、次に実証都市の位置についてです。
実証都市の位置は?
※出典:裾野市都市計画情報
実証都市は、静岡県裾野市にある、2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車株式会社東富士工場を活用するようです。なお、プレスリリースによると将来的には、約70.8万㎡の範囲の街づくりを考えているとのことです。東京ディズニーシーが約49万㎡ですので、それよりも少し大きい程度ですね。
この位置の都市計画情報を調べると、用途地域は工業専用地域となっていますから、現在の用途地域では、建築基準法において、居住系施設や店舗・飲食店の建築はできません。
ですので、これからおそらく用途地域の変更を行うものと想定されます。
用途地域の変更などは、確実な土地利用計画がないと変更する理由が立ちませんが、今回は、ある程度の土地利用計画はほぼ出来ているでしょうから、それをもとに2020年中に都市計画審議会に諮るでしょう。
ちなみですが、余程のことがない限り、変更されないというケースはないです。ましては、世界的な企業による土地利用ですから、裾野市としては嬉しい限りでしょう。とはいえ、近隣都市としてはどのように捉えているかわかりませんので、そのあたりも注視していくと面白いのかもしれません。
実証都市に居住するには?
トヨタが発表したプレスリリースによると、初期はトヨタの従業員やプロジェクトの関係者をはじめとする2,000名程度の住民が暮らすことを想定してるようです。
ですので、建設後すぐに関係者以外が居住するのは難しいかもしれません。
今後の街づくりに注視しましょう。
では、今回この都市設計を担うビャルケ・インゲルス氏について簡単に紹介します。
ビャルケ・インゲルス氏とは?
デンマーク出身で日本の方にはあまり馴染みがないかもですが、世界的な建築家集団であるBIG(Bjarke Ingels Group)を率いているビャルケ・インゲルスが街づくりの設計を担うようです。
BIGについては、第2ワールドトレードセンターやGoogleの新社屋も担当するなど、世界的にかなり有名です。
そのBIGとトヨタが連携して都市づくりを行うと言う点が今回最も注目するところです。
国内の建築家やコンサルが入っていないんですよ、、、つまり、トヨタとしては世界から取り残されないために躍起になっているわけです。BIGと連携すると言う点は世界的に見るとかなりの注目を浴びるはずですね。
トヨタが都市づくりに参戦する意図とは?
トヨタはすでに交通の分野では、MaaSの実現に向けて、”移動で困る人をゼロにする”というミッションのもとMONET Technologies社をソフトバンクと協働で立ち上げ、全国の自治体と連携しながら、次世代のモビリティの導入について実証をスタートさせています。
しかしながらこの取り組みは、既成市街地で行われるため、法律の障壁がいくつもあり、実証・実験を繰り返し行ってデータをいくつも取ることが自動運転には必要不可欠な要素となりますから、行政手続き上、どうしてもスピード感が遅くなる自治体との連携は不利な面もあったりします。
今回CES2020で発表された資料にも記載されているように、便利で最適化された都市をつくるためには『技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回す』ことが非常に重要になってくるわけです。
素早く回す ←これがとても重要な部分
つまり、トヨタが都市づくりに参戦する理由は、多くのデータを採取・蓄積・分析して、AIを進展させ、最適化された都市のプラットフォームを誰よりも早くつくることにあると考えられるのです。
都市のプラットフォーム化については、既にスマートシティやスーパーシティとして国内の主要都市が国内の企業と連携してその取り組みを進めていますが、まだ出口が見えていない状態です。
このトンネルを抜けた先に、スマートシティのあり方的なものが見えてくるのかも知れませんが、国内の都市では”これがスマートシティだ!”と言う名を挙げているところは一つもないです。
[参考]スパーシティについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ですので、トヨタが本格的に動き出したものと考えられます。
ご存知の方はいるかも知れませんが、日本国内では今後大きく世帯数が減少していくことが予測されています。
それに伴い自動車販売台数も落ちていくことは必至です。
そのため、トヨタとしては、単に自動車を販売する会社ではなくて、モビリティサービスを提供し生活の質を向上させる企業に変化しようとしているんでしょうね。(推測ですが・・・)
この実証都市のデータが国内の主要都市にスマートシティやスーパーシティの一つのあり方として一定程度普及していくことで、トヨタとしてはモビリティサービスを国内の都市に売ることが可能です。
つまりプラットフォームを勝ち取ることで、都市をコントロールすることが可能になる。
(今後の都市計画のあり方自体も変えていく重要な取り組みとなる)
直接自治体が購入するかどうかは別として、より便利な生活を求める住民が今後増えるとすると、都市間競争はより高度に凌ぎを削ることが想定されるので、高度で便利である点は都市に必要不可欠なものを考えるべき時代にきているものと考えられます。
最後に
新たな街をつくって実証する試みは国内初ですから今後も注視していきたいと思いますが、現時点で一点だけ気になるのが防災の面ですが、富士山が近傍にあるため、活火山である富士山が噴火した際には影響必至だと考えられます。
ふざけた話、魔法障壁でもあれば都市は守られるのかもですが、この点だけが気がかりです。
それと、これから少しづつ都市運営は民間が担っていく時代になっていくのかもしれないです。
そうすると、行政の役割はミニマム化され、財政状況も改善にしていく可能性もなくはないかも・・・
ということで今回の記事は以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございます。
・また、トヨタ自動車が都市づくりに参戦する意図とは?