この記事では、保安上危険な建築物や著しく保安上危険な建築物に対する特定行政庁の指導(対応)について分かりやすく解説しています。
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保安上危険な建築物に対する対応
保安上危険な建築物に対しては、特定行政庁は、所有者・管理者・占有者に対して、修繕、防腐措置その他当該建築物又はその敷地の維持保全に関し必要な指導及び助言をすることができると定められています。
ただし、損傷、腐食その他の劣化が生じ、そのまま放置すれば保安上危険となり、又は衛生上有害となるおそれがあると認める場合に限られます。
このため損傷がないよう建築物、、、例えば、健全な状態の建築物に対しては、修繕等の指導を行うことはできないです。
- 誰が?
特定行政庁 - 何に対して?
建築物の敷地、建築物の構造、建築設備 - どのような場合に?
損傷、腐食及び劣化が生じそのまま放置すれば保安上危険となるか、または衛生上有害となる恐れがあると認められる場合 - 誰に対して?
建築物の所有者、管理者、占有者
(保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言)
建築基準法第9条の4
第9条の4 特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第3条第2項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が生じ、そのまま放置すれば保安上危険となり、又は衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、修繕、防腐措置その他当該建築物又はその敷地の維持保全に関し必要な指導及び助言をすることができる。
著しく保安上危険な建築物に対する対応
著しく保安上危険な建築物に対する措置が書かれているのは建築基準法第10条です。
この建築基準法第10条第1項から第4項まで定められています。基本的な対応方法は第1項と第3項に規定されています。
補足としまして、第1項では、対象となる建築物は特殊建築物とその他法令で定められる建築物としており、さらに”そのまま放置すれば”という言葉が入っておりますが、第3項では対象となる建築物は対象規模が指定されており、単に”著しく保安上危険”とみめられる場合においてと書かれています。
このため、第1項では、勧告に対して第3項では命令となっています。ただし、第3項の規定では、法第9条第2項から9項等の手続きを踏まえる必要があります。
(著しく保安上危険な建築物等の所有者等に対する勧告及び命令)
建築基準法第10条
第10条 特定行政庁は、第6条第1項第1号に掲げる建築物その他政令で定める建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第3条第2項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することができる。
2 特定行政庁は、前項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかつた場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
3 前項の規定による場合のほか、特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第3条第2項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が著しく保安上危険であり、又は著しく衛生上有害であると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを命ずることができる。
4 第9条第2項から第9項まで及び第11項から第15項までの規定は、前2項の場合に準用する。
法第9条 | 内容 | 誰に対して | 命令等 |
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第1項 | [勧告することができる建築物(既存不適格建築物)] ・特殊建築物(法第6条第1項第1号建築物) ・特殊建築物で3階以上で100超200㎡以下 ・階数が5以上で延べ面積が1,000㎡を超える建築物 ※2023年4月1日以降は3以上で延べ面積200㎡超に変更 [どのような場合に勧告できるか] 損傷、腐食その他の劣化が進み、そのまま放置すれば著しく保安上危険となり、または著しく衛生上有害となる恐れがあると特定行政庁が認める場合 | 所有者 管理者 占有者 | 勧告 除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限等 ※相当の猶予期限を付することが必要
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第2項 | 正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると特定行政庁が認める場合 | 第1項の勧告を受けた者 | 命令除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限等 ※相当の猶予期限を付することが必要 |
第3項 | 既存不適格建築物のうち、現に著しく保安上危険、または著しく衛生上有害であると特定行政庁が認める場合 | 所有者 管理者 占有者 | 命令 除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限等 ※相当の猶予期限を付することが必要 |
第4項 | 第2項及び第3項の場合における第9条の準用 ・法第9条第2項〜第9項、第11項〜第15項 ※次回、第9条の解説記事を書くので、記事が完成したらリンクを貼る予定です。 |
この表でポイントなるのが、『著しく保安上危険』、『著しく衛生上有害』の定義です。
つまり、これらに該当するかどうかで勧告・命令を受けるかどうが決まります。
これについては、国土交通省から発出されている『既存不適格建築物に係る 指導・助言・勧告・是正命令制度 に関するガイドライン』に例示が記載されています。
以下に概要だけ記載しますので、更に詳細を知りたい方はガイドラインを確認してみることをお勧めします。
補足:著しく保安上危険とは?
ガイドラインによると『著しく保安上危険』であるかどうかの判断は次のようになっています。
- 建築物において、劣化や自然災害等が原因で倒壊等する可能性が高い
- 建築物が倒壊等した場合、通行人等に被害が及ぶ可能性が高い
著しく衛生上有害とは?
ガイドラインによると『著しく衛生上有害』であるかどうかの判断は次のようになっています。
- 建築物又は設備等の破損等が原因で、通行人等に被害が及ぶ可能性が高い
本記事のまとめ
普段あまり使用する条項ではないので、使う時は建築士を取得するための試験勉強ぐらいで使うくらいですが、建築士としての予備知識として知っていて損はないかなと思いまして簡単に記事にまとめてみました。
それでは以上となります。
今回の記事は以上となります。参考になれば幸いです。