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【違反建築物と敷地】違反建築物に対する特定行政庁の指導とはどのような内容?

違反建築物(敷地)は、建築基準法の規定に適合しない建築物や土地利用が行われた場合に指摘される問題です。

このような違反が発覚した場合、特定行政庁は、指導や指示を行い、適正な状態への改善を促すことが求められます。しかし、具体的にどのような指導が行われるのか、また違反建築物や敷地のオーナーがどのような対応をすべきなのかについては、多くの人にとっては知られざる領域です。

この記事では、違反建築物や敷地に対する特定行政庁の指導内容について分かりやすく簡潔に解説します。*建築基準法第9条についての簡単な解説です。

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はじめに:違反建築物(違法建築物)と既存不適格建築物

違反建築物(違法建築物)とは、一般的に建築基準法に適合していない建築物のことを指します。

ただし、建築基準法は毎年のように改正されており、過去には適法であった建築物が、法律の改正により現在では適法とはならないケースも存在しますよね?その場合は、違反建築物とはならず、単純に現行法には適合していない建築物として「既存不適格建築物」となります。

既存不適格建築物であれば、違反建築物ではないため、建築基準法第9条に基づく特定行政庁の指導等を受けることはありません。

わたしの主観も含まれますが、建築士としての力量の差は、この既存不適格建築物かどうかを調査する能力にも関係しています。

というのも建築基準法は毎年度のように改正されているたため、どの年にどのような改正が行われたのかを調べるスキルは、通常の建築士よりも重要視されることが多いです。

*この何年何月何日に改正法が施行されているかどうかチェックするスキル(既存不適格調書の作成)はホント大事で、多くの建築士が悩みます。既存不適格調書は建築確認申請書に添付する大切な書類の一つ。この書類がないと、建築物が既存不適格であるかどうかがわからない。

それでは、違反建築物に関する規定である建築基準法第9条を見ていきましょう。

違反建築物に対する特定行政庁に指導のルール

違反建築物に対する措置の規定である建築基準法第9条は第1項から第15項まで規定されています法文としてはとても長い条なので途中で読むのを辞めたくなります。

なお、役所職員として違反建築物の指導等の業務に従事しないのであれば、基本的には全部を覚える必要性は低いかなとはともいます。概要として第1項の内容を把握しておけば問題はありません。

ただし、違反指導に従事する方は、第2項から第15項までの内容についてはある程度熟読しておく必要があると思います。

とはいえですが、実際に実務となると第9条に携わる機会は少なく、行政職員でも建築基準適合判定資格者試験(建築主事試験)の問題で少し勉強するくらいかと思います。

では、第1項の内容についてですが、次のとおり規定されています。

[建築基準法第9条(違反建築物に対する措置)第1項]
特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

建築基準法第9条第1項(抜粋)

これを簡単にまとめるとこのような感じです。

条項誰が?どのような違反?誰に対して?どのような命令?
第1項特定行政庁・建築基準法令違反
・法令に基づく許可に付した条件に違反
・建築主
・工事の請負人(下請人を含む)
・現場管理者
・所有者
・管理者
・占有者
【すぐに命令可能】
・工事の施工の停止

【猶予期限が必要】
・除却
移転
改築
増築
修繕
模様替
使用禁止
使用制限等
建築基準法第9条第1項の概要

なお、命令に関して、工事の施工の停止以外については、”相当の猶予期限”を設ける必要があります。

この規定ですが、”とても重い”規定となっています。

どういうことかというと、軽い感じに”違反建築物なんだから直してね!”といった具合に指導することができるようなものではありません。

第2項から第15項の内容を確認して頂くと覚えやすいかもですが、違反者の意見を聴く機会や自己に有利な証拠の提出、標識の設置、公告など、行政のいわゆる厳格な事務手続きが必要となります。これは行政処分を行う過程上、必要な手続きとなります。

当然、行政側からすると柔軟に対応しづらいです。

そのため、多くの特定行政庁では、違反建築指導に際しては、建築基準法第12条第5項に基づく報告制度により対応しているのが実態です。どうしても厳格に対処する理由がある場合には法第9条を使います。

実態:法第12条第5項により対応

12条第5項の報告とは、建築主等に対して建築物の状況等を報告させることができる規定であり、複雑な建築基準法のうちどの規定に違反しているか調査し、行政と建築主等の双方がその事実を明確化することができるメリットがあります。

[建築基準法第12条第5項]
特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途、建築材料若しくは建築設備その他の建築物の部分(以下「建築材料等」という。)の受取若しくは引渡しの状況、建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況又は建築物の敷地、構造若しくは建築設備に関する調査(以下「建築物に関する調査」という。)の状況に関する報告を求めることができる。
一 建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者、建築主、設計者、建築材料等を製造した者、工事監理者、工事施工者又は建築物に関する調査をした者
二 第77条の21第1項の指定確認検査機関
三 第77条の35の5第1項の指定構造計算適合性判定機関

建築基準法第12条第5項(抜粋)

違反箇所を明らかにし、違反箇所の是正計画を建築主等が立てて実行することで違反箇所の是正を図ろうとするものですが、建築基準法のように特定行政庁が是正措置を命令するよりも建築主自らが違反内容を認識することもできますし、面倒な事務手続きも不要な上に、違反事項が改善されるので多用されているのです。

関連記事:建築基準法第12条第5項の報告

とはいえ、本来の事務手続きではないので、全ての行政庁で行っているわけではないですので注意が必要かと思います。

補足❶:緊急性のある場合は、工事作業停止命令

違反することが明らかな建築、修繕、模様替えの工事中の建築物については、緊急かつ正規の手続き(意見書の提出機会や公開意見聴取など)をすることができない場合に限って、施工停止を命令することが可能です。

10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第2項から第6項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。

建築基準法第9条第10項

緊急性をどのように判断するのか、また、第2項から第6項までの正規の手続きによらないで行うため、違反性が明らかであるケースである場合のみ使うことが可能です。*私は経験がないです。おそらく過去に使ったことがある特定行政庁は相当少ないのではと思います。

関連記事:こちらの記事では行政代執行について触れています。

補足❷:保安上危険な建築物

建築基準法第9条とは別の条文となりますが、特定行政庁が行う業務の一つとして、保安上危険な建築物や著しく保安上危険な建築物に対しては、修繕、防腐措置、維持保全、に関し必要な指導及び助言をすることができるほか、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用中止、使用制限その他保安上又は衛生上必要な措置をとることを勧告することが可能です。

詳細はこちらの記事にまとめています。

関連記事:保安上危険な建築物について解説を行っています。

まとめ

今回の記事では、違反建築物に対する一般的な対応方法について解説しました。実際に使用される機会は一級建築士や建築主事試験の勉強の際に限られるかもしれませんが、建築物の利用者の生命と財産を守るという観点から、この規定は非常に重要です。

違反建築物に対する特定行政庁の指導ルールや、建築基準法第12条第5項に基づく報告制度など、法令に基づいた対応が求められます。これらの対応が適切に行われることで、安全な建築物が確保され、利用者の安心が実現されることでしょう。

建築士や建築主事として、適切な知識と対応能力を身につけることが求められます。この記事が、その知識を深めるための一助となることを願っています。

それでは最後までご覧いただきありがとうございました。

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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など