この記事では、宅建業法の重要事項説明において規定されている都市緑地法について、どのようなルールが説明対象となっているのか、またそうしたルールの調べ方や、買主への説明方法などについて説明します。
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>>都市緑地法以外のその他の制限についてはこちらの記事をご覧ください。
目次
都市緑地法に関する重要事項説明一覧
宅建業法第35条に規定される都市緑地法に関する重要事項説明としては次のとおりです。
- 第8条第1項:緑地保全地域における行為の届出
- 第14条第1項:特別緑地保全地区における行為の制限
- 第20条第1項:地区計画等緑地保全条例
- 第29条:緑地保全地域・特別緑地保全地区内の管理協定
- 第35条第1項・第2項・第4項:緑化地域に関する規定
- 第36条:一団地認定を受けた敷地の緑化率
- 第39条第1項:地区計画等の区域内における緑化率規制
- 第50条:緑地協定
- 第51条第5項:緑地協定
- 第54条第4項:緑地協定
宅地・建物の売買する土地が上記の法令に該当する場合には説明が必要となります。
緑地保全地域
【都市緑地法第8条第1項(緑地保全地域における行為の届出等)】
都市緑地法第8条第1項
緑地保全地域(特別緑地保全地区及び第20条第2項に規定する地区計画等緑地保全条例により制限を受ける区域を除く。以下この条及び第6章第2節において同じ。)内において、次に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、都道府県知事等にその旨を届け出なければならない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
三 木竹の伐採
四 水面の埋立て又は干拓
五 前各号に掲げるもののほか、当該緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの
法律第8条第1項の規定は、都市計画で定める『緑地保全地域(都市計画法第8条第1項第12号)』内では、建築物の新築や宅地の造成を行う場合に事前に、都道府県知事(市の区域内は市長)に対して届出が必要となるものです。
なお、緑地保全地域は、全国どこにも指定されていません!(平成31年3月31日時点*出典:国土交通省都市計画施行状況調査)。ですので、不動産調査において遭遇することはありませんし、重要事項説明を行う機会はありません。
なお、緑地保全地域は、都市緑地法第5条によると次のような地域に指定されることとなっています。都市計画の決定権者は市町村です。
- 無秩序な市街地化の防止又は公害若しくは災害の防止のため適正に保全する必要があるもの
- 地域住民の健全な生活環境を確保するため適正に保全する必要があるもの
※出典:都市緑地法第5条
指定された場合には、市町村が公表している『都市計画情報』にて確認することができると思います。
現時点においては、全国のどの都市にも指定されていないので注意する必要はありませんが、今後、指定されることも十分にありますので、指定されている地域での取引の場合には、次の行為を行う場合に都道府県知事(市の区域は市長)に届出が必要となる旨をお伝えします。
- 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
- 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 水面の埋立て又は干拓
- 緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為(屋外における土石、廃棄物・再生資源の堆積)
なお、施行令第4条では、届出が不要となる行為を定めているので、緑地保全地域内での取引となった場合には届出が費用となる行為もあわせて説明する必要があります。
特別緑地保全地域
特別緑地保全地域は、先程の第8条の緑地保全地域の届出制と異なり都道府県知事等の許可を受けなければ、建築物の新築や宅地造成等の行為に着手することはできないこととされています。
特別緑地保全地区は、都市計画で定めることとされており、全国の81都市で654箇所(*平成31年都市計画施行状況調査)が指定されています。この地域も樹木等を保全することが目的であり、指定要件も次のように定められています。
- 無秩序な市街地化の防止、公害又は災害の防止等のため必要な遮断地帯、緩衝地帯又は避難地帯として適切な位置、規模及び形態を有するもの
- 神社、寺院等の建造物、遺跡等と一体となつて、又は伝承若しくは風俗慣習と結びついて当該地域において伝統的又は文化的意義を有するもの
- 次のいずれかに該当し、かつ、当該地域の住民の健全な生活環境を確保するため必要なもの
・ 風致又は景観が優れていること。
・ 動植物の生息地又は生育地として適正に保全する必要があること。
(特別緑地保全地区における行為の制限)
都市緑地法第14条第1項
特別緑地保全地区内においては、次に掲げる行為は、都道府県知事等の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公益性が特に高いと認められる事業の実施に係る行為のうち当該緑地の保全上著しい支障を及ぼすおそれがないと認められるもので政令で定めるもの、当該特別緑地保全地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
一 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
二 宅地の造成、土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更
三 木竹の伐採
四 水面の埋立て又は干拓
五 前各号に掲げるもののほか、当該緑地の保全に影響を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるもの
こちらの土地自体を所有し続けるメリットがあまりないので、売主から相談を受けた場合には、指定した自治体の所管課(公園緑地課)に相談し、今後の予定などをヒアリングの上、自治体による土地購入の予定がないかなどを確認しておくことをおすすめします。
なお、東京都内の場合には、専用のページを設けているので参考にしてみてください。
>>https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/kouen_ryokuti/tokubetsu.html
地区計画等緑地保全条例
地区計画等緑地保全条例は、先ほどの特別緑地保全地域の街区バージョンといえばイメージがつきやすいかもです。地区計画という都市計画手法を活用して、その計画区域内において特別緑地保全地域内の行為を条例化により市町村長の許可制にするものです。
特別緑地保全地域内での許可に係る行為の許可権者は、都道府県知事か市長に限られますが、地区計画等緑地保全条例の場合には、市町村長となります。
現時点(*記事執筆時点)では、横浜市のみが活用しているようです。
>>https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/midori/tikuryokka/kenchikubutsu.html
不動産取引においては、地区計画条例の内容を伝えればOKかと思います。
地区計画条例の内容とは、地区計画と地区整備計画、又、地区計画に係る条例のことです。特別緑地保全地域内の行為に関することが定められているはずです。
(地区計画等緑地保全条例)
都市緑地法第20条第1項(抜粋)*読みにくいで法のカッコ書きを省略しています。
市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、沿道地区整備計画、若しくは集落地区整備計画において、現に存する樹林地、草地等(緑地であるものに限る。次項において同じ。)で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項が定められている区域又は歴史的風致維持向上地区整備計画において、現に存する樹林地、草地その他の緑地で歴史的風致の維持及び向上を図るとともに、良好な居住環境を確保するために必要なものの保全に関する事項が定められている区域(同項において「歴史的風致維持向上地区整備計画区域」という。)に限り、特別緑地保全地区を除く。)内において、条例で、当該区域内における第14条第1項各号に掲げる行為について、市町村長の許可を受けなければならないこととすることができる。
管理協定区域
管理協定とは、緑地保全地域や特別緑地保全地域内の樹木等の管理について、所有者と自治体・緑地保全・緑化推進法人が管理に関する協定を締結し、所有者に変わって保全行為を行うものです。
重要事項説明の対象としては、承継効(都市緑地法第29条)に関する内容となります。つまり、管理協定が締結された後に所有者となった者にもその効力が引き続き及ぶとするものです。
(管理協定の効力)
都市緑地法第29条
第27条(前条において準用する場合を含む。)の規定による公告のあつた管理協定は、その公告のあつた後において当該管理協定区域内の土地の所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。
緑化地域
緑化地域とは、敷地面積に対する緑化面積の割合の最低限度を定めるもので、都市計画で決定します。現時点(*平成31年都市計画施行状況調査)においては、世田谷区、横浜市、名古屋市、豊田市において指定されています。
重要事項説明の対象としては、都市緑地法第35条第1項・第2項・第4項、となります。
いずれも緑化地域に関する内容を説明するものですが、第1項が建築物の緑化率は都市計画で定められた最低限度以上としなさいとするもの、第2項が緑化率の適用除外(市町村長の許可を受けたもの)、第4項が緑化地域が内外にわたる場合の措置です。
緑化地域が指定されている場合には、この規定を説明します。特に重要なのは、第1項の基本的な規定を説明することにあります。なお、対象となる敷地面積については、条例化により300㎡まで引き下げることが可能となっている注意してください。
緑化地域内においては、敷地面積が政令で定める規模(*1,000㎡以上。条例化により300㎡以上まで引き下げることが可能)以上の建築物の新築又は増築(当該緑化地域に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為及び政令で定める範囲内の増築を除く。以下この節において同じ。)をしようとする者は、当該建築物の緑化率を、緑化地域に関する都市計画において定められた建築物の緑化率の最低限度以上としなければならない。当該新築又は増築をした建築物の維持保全をする者についても、同様とする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地の周囲に広い緑地を有する建築物であつて、良好な都市環境の形成に支障を及ぼすおそれがないと認めて市町村長が許可したもの
二 学校その他の建築物であつて、その用途によつてやむを得ないと認めて市町村長が許可したもの三 その敷地の全部又は一部が崖地である建築物その他の建築物であつて、その敷地の状況によつてやむを得ないと認めて市町村長が許可したもの3 (略)
都市緑地法
4 建築物の敷地が、第1項の規定による建築物の緑化率に関する制限が異なる区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の緑化率は、同項の規定にかかわらず、各区域の建築物の緑化率の最低限度(建築物の緑化率に関する制限が定められていない区域にあつては、零)にその敷地の当該区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以上でなければならない。
補足:都市緑地法第36条:一団地認定敷地に係る第35条
一団地認定敷地といって、一敷地内に複数の建築物を建築することができる制度があります。この場合には、先ほどの緑化率について一敷地として適用される規定です。
(一の敷地とみなすことによる緑化率規制の特例)
都市緑地法第36条
建築基準法第86条第1項から第4項まで(これらの規定を同法第86条の2第8項において準用する場合を含む。)の規定により一の敷地とみなされる一団地又は一定の一団の土地の区域内の建築物については、当該一団地又は区域を当該建築物の一の敷地とみなして前条の規定を適用する。
地区計画等緑化率条例
地区計画等緑化率条例は、地区計画という都市計画の手法を用いて、緑化地域よりも小さい街区単位で緑化率を定めることができる規定です。わたしが調べた限りですと、記事執筆時点において、46都市で条例化が行われています。
重要事項説明においては、地区計画の内容、地区整備計画の内容、地区整備計画に関して条例化された緑化率の最低限度等を説明します。取引対象地に地区計画があるかどうか、また、その内容をチェックすることで緑化率が定められているか確認することができます。
市町村は、地区計画等の区域(地区整備計画、特定建築物地区整備計画、防災街区整備地区整備計画、歴史的風致維持向上地区整備計画又は沿道地区整備計画において建築物の緑化率の最低限度が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画等の内容として定められた建築物の緑化率の最低限度を、条例で、建築物の新築又は増築及び当該新築又は増築をした建築物の維持保全に関する制限として定めることができる。
都市緑地法第39条第1項
緑地協定
緑地協定の重要事項説明については、法第50条、51条第5項、54条第4項が該当します。よく大規模開発団地等で協定(法第54条協定)が結ばれていると思いますので、不動産取引されている方は、一度は担当したことがあるはずです。
緑地協定については、次のようなルールを定めることができ、市町村長が認可することとなっています。
重要事項説明においては、緑地協定が締結されているかどうか確認し、該当する場合にはその内容を伝えるほか、協定締結に合意した所有者から継承した者は協定参加人になる旨を伝えます。*大規模開発団地で庭先の緑化が統一されている場合には締結されている可能性が高いです。
建築計画に影響が出てくる内容なので、買主さんの建築の意向をヒアリングした上であらかじめ緑化協定の内容を確実に伝えておくことで、契約後のトラブルを防止を図ることをおすすめします。
- 保全又は植栽する樹木等の種類
- 樹木等を保全又は植栽する場所
- 保全又は設置する垣又はさくの構造
- 保全又は植栽する樹木等の管理に関する事項
- その他緑地の保全又は緑化に関する事項
なお、国土交通省によると全国に約1600箇所あるようです。
*市町村の公園を担当する部署に確認することで緑地協定が締結されているか分かります。