ここ数年、一緒に仕事をする機会が増えた先生の話です。地域計画やまちづくり計画に関して、とても為になることをおっしゃっていたのでちょっと話していきたいと思います。
ある、都市計画・都市交通に関する会議での話です。細かい内容は特定される可能性があるので一部ぼかして話しますね。
結論的には、計画書自体の重要性についてです。
こんにちは。やまけん(@yama_architect)です。
普段、やまけんブログ(yamaken-blog)では、建築基準法や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪
まちづくり計画の意味
まちづくり計画とは、個別具体の個別法に基づく都市計画(都市計画法に基づき法的拘束力を持って定める計画など)や公共交通に関する計画(地域公共交通活性化再生法)などを包含する形で作成されるもので、地域住民と行政、民間事業者が一緒になってつくっていく、地域単位(地域によって範囲は異なる)のきめ細やかな計画となります。
法的な拘束力がないものがほとんどです。
地域の将来ビジョンを定め、どのようなまちづくりを行っていくのか定められています。
この計画に施策・事業が紐つくことで一つの計画として意味を成すことになります。
ですが、このまちづくり計画をつくって終わりとするのが多いのが実態です。
なぜなら、何を目的に何を達成したいのか分からないからです。
将来ビジョンで”未来に誇れる”や”笑顔になれる”とか書いてあったらどう思いますか?何するねん?!となりません?
本来は、明確な目的と持ってつくろうとした計画も、完成し公表される頃には、本来の意味を成さない計画となってしまっているまちづくり計画を良く目にすることがあります。
では話を戻します。
目的を持った計画の重要性
その先生は、毎日のように全国を飛び回っている方で、多くの自治体の都市・交通政策に関して実情を知っている方でした。
全国の多くの都市で抱えている課題の多くは共通していることが多いです。
例えば、人口減少、超高齢社会、少子化、DID地区の拡大、過度な車依存、公共交通利用者の減少、公共交通の衰退、市街地の経済的衰退ですかね。
全国の地方都市では、ほぼ同じ課題が共通しています。
会議での発言です。
「計画書は明確な目的を持って、目的や目標が明確かされてはじめて機能を発揮する」
多くの都市では、解決を図る課題が多いため、解決する課題を絞ることができずに、どこも似たような計画になってしまっているということでした。
耳が痛い話です。
コンサルタントが作っている資料はどこも同じもので、どこの都市にも適用できるように同じものを使い回している状況にあるとのこと。
そういうことを言ってしまう先生ですが、実務的には、民間事業者、行政、地域住民やまちづくり団体、商工会議所の方々との調整役にまわり、視座を低くして、根気よく一つ一つ課題を解決していこうとする姿勢を持っている方です。
口癖は「6勝4敗」です。
全部うまくいくわけないから、10個目指して6個達成できればいいとする考えなのです。
そうした考えで、地域に入りながら地域の方々と同じ目線で解決を図っていこうとする取り組みは、心の底から「すごいなー」と思います。自分でも泥臭さが好きと言っていました。
こうした先生ですと、「計画書自体はあまり重要じゃないから、簡単に作ればいい」と言ってしまいがちじゃないですか?なんとなくというか、計画班と実行班の軋轢みたいに溝みたいなものがあるイメージを持ってしまいがちで、”計画は別にいいんだよ”的な感じです。
ところがですね。
・・・違うんですよ。
こうです。
「計画書は明確な目的と目標を持った軸のブレないものが必要。なぜなら、受け継がれた次の者が何をすればいいのか分からないため」
その上で、関連計画の整理や課題の抽出・分析などの膨大な資料の部分は多くは不要であり、計画書は修正・変更を加味して、あっさりしたもので良いとする考えなのです。
大切なことは、計画の目的と目標の部分であり、この計画で何を実現しようとしているのか明確化されていれば、たとえ担当者が変更となっても、その意思が次の担当者に引き継がれるとするものです。
よく行政計画でやってしまいがちなこととして、内容を盛り込み過ぎてしまって、なんの課題を解決しようとしているのかが不明な場合や、計画の方針・理念の部分がふわふわし過ぎてしまって何を目指そうとしているのかが全く分からないといった状況です。
つまり、何をしたいのかが分からない状態で、施策や事業案がぶら下がった状態のために、何から手をつけて良いか分からない(道筋が見えない状態)ために、担当者や体制が変更となった場合に、次に引き継がれないことから、計画書が放置されるということ。
このように結果的に計画書が放置されないようにするために出来ることは何か。
まとめ
行政計画に限らず、「計画書」は重要であるとする考えは誰もが否定しないところかと思います。
しかしながら、その計画書自体にはあまり意味はなく、計画書が持つ目的や目標、ビジョンとなるものが非常に重要であり、そのメッセージを明確に届けられるかどうかで、その計画書の存在意義が大きくなっていくのだと思います。
重要なポイントとしては、言語として明確に伝えることができ、相手の行動・意識の変化を与えられるかにあると思うのです。
例えば、「駅前の賑わいをつくります。」よりも「駅前での一人あたりの消費額を○○円/人から〇〇円増加させます。」の方が、施策を考えやすいですし、何より明確に読み手に何をしたいのか(何をすればいいのか)伝わります。
賑わいづくりなら、イベントでもやればいいか〜くらいに感じる人もいるでしょうけど、消費額を増加させるためには、駅前の飲食店や店舗での消費意欲をかき立てる仕組みづくりが重要となり、ターゲットを明確にした施策(例えば、建設投資など)を実行しやすくなります。
それから、計画書の内容(目標や目的となるビジョン)を何度も何度も繰り返し、伝えたい人に伝えていくことが重要です。
ザイオンス効果という言葉を一度は耳にしたことがありますよね?
よく、恋愛テクニックでは、何度も会っていくうちに相手に好印象を持ってしまうとするものです。
そうなのです。何度も繰り返し伝えていくことで、〇〇社・〇〇市が言っている〇〇という用語が自然と脳内に刷り込まれていきます。
もちろん悪い印象をもたれないよう工夫が必要になりますが、計画書の中身が明確にメッセージとして伝わるものであれば、この社の計画・この行政計画が目指しているのはこういうことかと理解しやすくなっていきますww
補足:PDCAは無意味
近年、KPI(目標値)がテキトーに設定されやすい傾向にありますが、KPIがあることによるメリットは、計画の方針→目標→目標値→施策をつなぎやすいかなと思います。
ちなみに、PDCAサイクルっていまだに使ってますかね?
行政計画だと、PDCAを使っているところが多いように思いますが、基本的に”最低”ですwww
行政さんの手前、使わないといけないみたいな風潮にありますが、重要なことはPDCAサイクルを回すことではなく、目標を達成するための一連の実施工程表です。
この実施工程表に計画、実行、評価、改善の流れが組み込まれていればいいわけです。
PDCAサイクル図を掲載することに何の意味もないです。
PDCAという一定の事業のみ使える手法のものよりもPDR(準備・行動・見直し)を高速で回していくことの方が重要かなと思ったりしています(役所の場合、会計制度的に単年度予算なのに難しい側面はありますね。)。
>>PDRについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。